『嗤う蟲』
監督:城定秀夫
出演:深川麻衣,若葉竜也,松浦祐也,片岡礼子,中山功太,杉田かおる,田口トモロヲ他
ナナゲイで前述の『ストップモーション』を観た後、どんより暗い気持ちになりながら車に乗り、
前日までに考えていた本作とのハシゴを悩みました。
だってこれも絶対明るい気分になれそうな作品ではないから、
ハシゴを『アンダーニンジャ』に換える、もしくはまっすぐ帰るほうがよかないかと思って。
なのにやっぱりこれを観に行ってしまったのです。十三からわざわざ109シネマズ大阪エキスポシティまで。
翌週からの鑑賞予定を考えたら、22時も近くなってからの上映しかない本作は先に潰しておくべきでしょう。
「潰しておくべき」という言い方はふさわしくないか(笑)。
原作なしのオリジナル脚本にはやはり私の評価は一段どころか数段上がる。
このたび田舎に移住して輝道は農業を始めることに。
イラストレーターの杏奈はネット環境さえあれば田舎でも仕事を受注できる。
妻のほうはどうやら少し病んでいるようだが、夫は気のよさそうな人物。
夫婦別姓である理由や杏奈の仕事についてあれこれ聞かれたものの、温かくもてなされてひと安心。
翌日には村人全員がふたりのことを知っていて驚くが、これも田舎だからかと苦笑い。
しかし、少しずつ違和感が増してゆく。
穏やかな田舎暮らしを想像していたのに、いつでも見張られているかのようで隠し事はできない。
杏奈の妊娠もしばらく伏せておくはずが、病院に行ったことがバレて致し方なく打ち明けると、
村あげての宴が開催され、村人たちから「おめでとう」ではなく「ありがとう」と言われる。
やがて輝道は村の男たちがこっそりと大麻を栽培していることを知る。
田久保から参加を促されて一旦は断るのだが……。
いつだったか、「村八分」という言葉の意味を知ったときは衝撃を受けました。
村八分村八分と言うけれど、残りの二分は何なのか。火事と葬式ですよね。
その二分のときは入れてやるけど、八分のときはいっさい無視って、
結婚式と葬式ではなくて火事と葬式なんだと思って、本当に驚いたものです。
過疎化に悩んでいると言いながら、よそものを心から受け入れようとはしていない。
村の慣習に従うつもりがない奴には徹底的に制裁を与える。
警察官だって村の一員だから、相談したところで無駄。
どんな違法行為も、虐待も、時には殺人すら村の中で隠蔽されてしまうのです。
同じ過疎化に悩む村でも『サンセット・サンライズ』は違いました。
実際はどちらが本当の姿に近いですか。
坂東眞砂子の『くちぬい』なんか読んだ日にゃあ、絶対田舎に移住はできません。
そもそも私は劇場通いができないところに住むつもりはないけれど。(^^;