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弟のこと。その6。

2022年12月25日 | まるっきり非映画
より少し時期を後にして闘病生活を送り、11月にもうひとり、亡くなった友人がいます。
 
弟のひとつ年下、弟とも面識がある“かしわくん”。
昨冬、体調を崩して病院に行ったときにはすでにステージ4の肺がんだったそうです。
「かしわくんもステージ4のがんやて」と生前の弟に話したら、
「えーっ、かしわくん、大丈夫かいな」。大丈夫かいなって、アンタと同じやがな(笑)。
 
弟の抗がん剤治療が始まるとき、ハゲたときのためのニットキャップを弟自身が選んでいたら、
会社の同僚たちが「ほな、俺らも同じニットキャップ買ってかぶるわ。
この部署全員で同じニットキャップかぶってたら違和感ないやろ」と言ってくれて。
弟は「バリバリ違和感ありますやん」と笑ったそうです。それを聞いて私も泣き笑い。
 
で、会社の人たちからニットキャップをプレゼントしてもらった弟でしたが、
ニットキャップをかぶる機会がありませんでした。
 
弟に遅れること数カ月で抗がん剤治療を開始したかしわくんは、抗がん剤の効果があるらしい。
ならばと「弟が会社の人からもらったニットキャップ、かぶってくれる?」と進呈しました。
「そういう経緯があるなら、より大切にかぶらせてもらいます」と言ってくれたかしわくん。
 
10月なかば、かしわくんの54回目の誕生日に会う機会がありました。
かしわくんから「ご相談があります。ちょっと面白いこと思いついたんで(^^)」と言われ、
いったい何の話だろうと思ったら、このニットキャップについてでした。
 
かしわくんがハゲた時期は夏で、ニットキャップをかぶるには少し生地が分厚かったのと、
デザインがオシャレすぎて「僕には似合わなくて(^^;」とかしわくん。
「それで、向こうで弟さんとお会いできると思うんで、持って行ってお返ししてもいいですか」。
もうやめて~、そんなこと言われたら泣くから。私、号泣。(^_^;
 
かしわくんが言うには、「親より先に子が亡くなるのは親不孝だから、弟さんと僕は同じ。
天国でか地獄でかはわからないけれど、いずれにしても会えると思うんです」。
 
確かに親不孝かもしれないけれど、私は弟を見ていてそんな思いが変わりました。
両親には自分のことをほとんどしゃべらなかった弟が、いつもどんなふうに過ごしていたかは知る由もない。
でも先に亡くなったおかげで、どんな人に囲まれて、支えられて、あるいは支えて生きていたのかがわかった。
かしわくんも弟と同じく独身だから、かしわくんのお母様にしてみれば、
息子がひとり寂しく過ごすんじゃないかと心配だったかもしれない。
でも、かしわくんがこんなにも多くの人と接してきて、受け入れられて、
温かく送り出されるところを見られてよかったとお思いなんじゃないかな。
だから絶対、親不孝じゃないよ、とかしわくんに言いました。
 
私も母とよくそんなふうに話しています。
本当なら最後に亡くなるはずのたけちゃん(=弟です)が先に逝って、みんなで送り出せてよかったやんって。
そうかしわくんに話しました。
「じゃあ私のことは誰が見送ってくれるのよって話やけどね(笑)」と付け足したら、
「ほらね、そう姉に思わせるところも含めてやっぱり親不孝でしょ」とかしわくんから笑われましたけど。(^^;
 
かしわくんの棺には弟からのニットキャップもちゃんと入れてもらえたそうです。
向こうでもう会ってるかな、かしわくんとたけちゃん。

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