夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『おばあちゃんの家』

2004年04月05日 | 映画(あ行)
『おばあちゃんの家』(英題:The Way Home)
監督:イ・ジョンヒャン
出演:キム・ウルブン,ユ・スンホ,ミン・ギョンフン,
   イム・ウンギョン,トン・ヒョフィ他

「すべてのおばあちゃんに捧ぐ」。
韓国の女性監督がそんな思いを込めて撮った珠玉の1本。

7歳のサンウはソウルで母親とふたり暮らし。
失業中の母親が仕事を見つけるまでのあいだ、
ド田舎の祖母宅に預けられることに。

生まれて初めて会うおばあちゃん。
おばあちゃんは耳が聞こえない。口もきけない。
サンウとおばあちゃんの夏休みがはじまる。

ストーリーはこれだけのこと。
穏やかな、ひたすら優しさが溢れる映画だと思うでしょ?

ところが、このサンウというのがどうしようもないガキ。
母親に連れてこられたときは
「こんな田舎は嫌だ」と母親に蹴りを入れる。
おばあちゃんには挨拶もせず、
「耳も聞こえないマヌケ」と薄ら笑いを浮かべる。
近所のよくできた少年の「遊びにおいで」という誘いは無視し、
持参したゲームやおもちゃでひとりで遊びつづける。

ゲームの電池が切れると、
お金をくれないおばあちゃんに腹を立て、
昼寝中のおばあちゃんから髪留めを盗み、
電池との交換を試みる。
しかし、こんな田舎ではゲーム用の電池などあるはずもない。
その腹いせに、壁にデカデカと「ケチ」の落書き。
おばあちゃんの靴は隠すわ、
おまるは割るわ、したい放題。

ホンマに「こいつ、しばいたろか」と思うガキなんです。
だけど、「あまりに見てるのがハラ立つから、もうやめよ」
と思うすんでのところで止まっているという、
不思議な作品なのです。

普通の展開なら、おばあちゃんの優しさに
サンウがだんだん心を開いていい子になるはず。
しかし、彼は最後の10分が来るまでヤな奴のまま。
だから余計に、最後の最後に涙が溢れます。
実際にこんなヤな奴が、いきなりいい子になるわけもない。
最後だって、ものすごくいい子になったわけじゃない。
ただ、不器用におばあちゃんへの気持ちを表すサンウに
一本とられた感じです。

おばあちゃんを演じるキム・ウルブンは
これまで演技経験はなく、
映画というものすら観たことがなかったそうです。
でも、この人以外ありえなかっただろうというぐらい、
素晴らしいおばあちゃんでした。

おばあちゃんを大好きだった人、
おばあちゃんと会ったことのないままサヨナラしてしまった人、
み~んなにお薦め。
おばあちゃんの愛に浸ってください。

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