めいすいの写真日記

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新国立劇場 「ローエングリン」

2016-06-03 | オペラ・バレエ

 6月1日(水)に、新国立劇場へ、リヒャルト・ワグナー作曲のオペラ「ローエングリン」を見に行きました。昨年の10月10日にワグナー作曲の「ラインの黄金」を見て以来です。

 前にも書きましたが、飯盛泰治郎音楽監督の下、今後、新国立劇場で行われるワーグナーのオペラ作品は欠かさず見に行こうという私のプロジェクトの第3回目です。なお、新国立劇場の次回のワーグナー作品は2016年10月に6回行われる「ワルキューレ」です。

 ローエングリンは聖杯(グラール)騎士伝説に基づく、幻想的で、神秘的な雰囲気にあふれるロマンテックなワーグナーのオペラです。2012年の公演時には大好評を博したため、4年ぶりに再演されたようです。お隣の婦人と休憩時に少し話をしたら、2012年の公演のタイトルロールのクラウス・フロリアン・フォークトの柔らかな美しいテノールの響きがあまりに感動的だったので今回も聴きに来たとのこと。

 ワーグナーのオペラというと長いことで知られていますが、このオペラも3時間35分ほど、2度の休憩時間40分を含めると5時間にもなります。音楽も充実し、ストーリーの展開も興味のあるものですが、少々疲れるもの確かです。

「ローエングリン」のあらすじ

第1幕の前奏曲は、このオペラの中心の楽想の聖杯(グラール)の動機によりまとめられていて、弦はバイオリンの高音のみで演奏され、それに木管が加わり、神秘的な和音から始まっていきます。その曲想は、天国的に美しく、一気にローエングリンの世界に引き込まれます。
第1幕
 10世紀前半。ドイツ王ハインリヒが、東方遠征への兵を募るため、ブラバント公国を訪れている。だが、この地は折しも内紛状態。先代ブラバント公の娘、エルザが、ねんごろな男がいるのか、世継ぎとなるべき弟ゴットフリートを殺した-当地の伯フリードノヒ・フォン・テルラムントがそう訴えているのだ。そこでエルザが召喚されるが、彼女は夢で見た騎士が自分を助けてくれるだろうと呟くばかり。一同がいぶかしく思っているところへ、川の岸辺に、とある小舟が白鳥に曳かれて到着、本当に騎士が現れる。騎士はエルザに言う。お前の身の潔白を証明し、お前を娶り、ブラバントを護ろう。ただし私の名も素性も決して尋ねてはならぬ、と。エルザがこれを承知すると、騎士とフリードリヒとの間で、神意に決着をゆだねた決闘が交わされる。騎士が勝ち、一同がこれを祝う。

 ローエングリンが白鳥の引く小舟に乗って現れる。今回の演出ではローエングリンは天井から降臨。

第2幕
 夜、フリードリヒが妻オルトルートをなじっている。エルザに嫌疑をかけ、もってプラバントの支配者にのし上がるという策を彼に吹き込んだのは、この妻だった。オルトルートはしかし、騎士の勝利は魔法を使った八百長だと言い、夫をさらにたきつけ、いっぼうエルザの前では、我が身のあわれを嘆いてみせ同情を得る。夜が明けると、騎士を新しい指導者に得たブラバントの人々が、出兵を前に高揚している。そのうちに、婚礼へ向かうエルザとその一行が。祝福の声があがるなか、突如オルトルートが花嫁の行く手をさえぎり、さらにフリードリヒが現れ、白鳥の騎士に素性を明かせと迫る。騎士は、問われて答えを拒めぬ相手はただエルザのみと言う。疑いが抑えきれず身を震わすエルザ。騎士はエルザを促し教会堂に向かうが、背後には勝ち誇ったようなオルトルートの姿が見える。

第3幕の前奏曲は、クラシックのコンサートなどでよく演奏される勇壮な曲です。 

第3幕

 「婚礼の合唱」・・・結婚行進曲。世間一般の結婚式でもよく使われるよく知られた曲です。

 結婚式を済ませ、初夜を迎えた騎士とエルザ。エルザはとうとう禁じられた問いを発してしまう。そこへフリードリヒが乱入するが、騎士はこれを斬りつける。いっぼう野原では、戦意を燃やす男たちが王のもとに結集。しかしそこに、フリードリヒの遺体、青ざめたエルザ、白鳥の騎士が現れると空気は一変する。騎士は、もはや兵を率いることはできぬ、妻が禁問を破ったのだと告げ、衆人注視のもとついに身元を明かす。聖杯(登場人物紹介参照)仕えることを許され、悪をはねつける力を授かった騎士の名はローエングリン。素性が知れたら、聖杯の地に帰らねばならない。迎えの小舟は、白鳥に曳かれてもうそこに。ローエングリンはエルザに、これをあなたの弟にと角笛と剣と指環を渡す。そう、ゴットフリートは生きていた。白鳥こそはその化身。オルりレートが魔法をかけていたのだ。ローエングリンは魔法を解き、ゴットフリートをブラバント公に任じ、去ってゆく。嘆く一同。くずおれるエルザ。

感想・・・このオペラについて思ったこと

 第1幕は、フリードリヒとオルトルート夫妻の悪企みによって、罪を被せられそうになるエルザの前に騎士ローエングリンが颯爽と現れ、フリードリッヒを破り、フリードリッヒは追放。公国とエルザの地位が保たれ、まずはめでたし、めでたしという勧善懲悪の世界が成り立ったと観客は思います。

  しかし、第2幕は暗い邪悪の世界、悪の世界に引きずり込もうとする誘惑。その中心にあるのは異教徒のオルトルート。せっかく平静がもどり、騎士とエルザの幸せが始まろうとする筈なのに・・・。1幕で解決したはずのことが、オルトルートの存在が際立ち、彼女の執拗な策略で、逆な流れが強くなり始めます。3幕の内、この第2幕が一番時間が長いのが、このオペラを象徴しているような気がします。

  ところで、このオペラの根幹を作っているのが、騎士がエルザの身の潔白を証明し、結婚し、国を守るためには、「私の名前、素性を決して訪ねてはならぬ」という禁問です。エルザは承知するのですが、よく考えてみると結婚生活を続ける上で、名前を知らない、素性も知らないというのでは、いずれ破局が来るのは明白です。ましてや騎士はエルザに対し「自分は輝かしい世界からきた」というのですから、エルザにとっては重荷でしょう。オルトルートの策略に負けたというだけでは済まされない、基本的な問題があります。「貴方はいずれ去ってしまう」と感じ、禁問を破ってしまうのも、やむ得ないと考えられます。
 一方、騎士ローエングリンは、エルザが裏切ったから、私はこの地を去る。といいます。
 ワーグナーの作曲した他のオペラには必ず救済があるのに唯一「ローエングリン」では、終幕で登場人物のすべてが残念に思い、落胆します。
 白鳥が登場し、各所に美しい音楽が散りばめられ、世に広く知られる「結婚行進曲」まで演奏されるのに、ちょっとアンバランスの気がします。

 このオペラは、見るのは、楽しいし、かつ面白い。美しい音楽を聴くのも魅力的で、筋立ても分かりやすいのだけれど、ハッピーエンドにはならず、ロマンチックなままに終わらないというがワーグナーの世界なのかも知れません。

ローエングリンとルートヴィヒ2世(バイエルン王)とノイシュバンシュタイン城

 ドイツの歴史に「狂王」と呼ばれ、その名をとどろかすルートヴィヒ2世(1845-1886・・・バイエルン王)、若き王の美貌はヨーロッパ中に知れわたりましたが、ワーグナーの音楽に心酔し、王位に就くとワーグナーに莫大な額の援助をすることになります。一方ノイシュバンシュタイン城やバイロイト祝祭劇場など豪華な建築物を残しました。政治を省みず、神話の世界の中に生きた彼は、巨額の浪費を繰り返したため、国家財政を危機に陥れてしまいます。

 しかし、ワーグナーの音楽に果たした役割も大きく、ノイシュバンシュタイン城は16歳の時に見た「ローエングリン」に感動したことが建設の発端と言われていまいます。
 この城のある地名はシュヴァンガウで「白鳥の里」の意味。ノイシュバンシュタインとは「新しい白鳥の石」になります。


 私は、ノイシュバンシュタイン城を1998年に訪れましたが、この城の一階の居間には、ローエングリンの壁画が描かれていて強い印象が残りました。 
 一方、バイロイト祝祭劇場を建設しただけではなく、「ニーベルングの指輪」の制作を依頼したのもルートヴィヒ2世で、上演の権利も彼のものとなっていました。