『セミラーミデ』はロッシーニ(1792-1868)のオペラ・セリア(神話や伝説に基づくオペラ)の最高傑作であり、2018年3月10日、彼の没後150年にメトロポリタンオペラ(MET)で復活上演された。METでは25年ぶりの新演出という。WOWOW 2020年3月5日放送
古代バビロニアを思い浮かべることが出来るシックな舞台、宝石を散りばめた衣装は華麗で豪華、見応えのあるコンストラクションである。
舞台は王位を狙う男たちの陰謀が渦巻く古代バビロニア。
演奏:マウリツィオ・ベニーニ 指揮 メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団
演出: ジョン・コプリー
出演:
セミラーミデ アンジェラ・ミード S
アッスール イルダール・アブドラザコフ Br
アルサーチェ エリザベス・ドゥショング Ms・・・昔はカストラータ イドレーノ ハヴィエル・カマレナ T
オローエ ライアン・スピード・グリーン Br
第1幕 奇跡の高音と表現力で圧倒するテノールの J・カマレナは、インドの王子イトレーノに扮し、第1幕では王位継承をアピールし、諸処で姫アゼーマに対し愛のアリアを歌う。王位継承では3番手ではあるが、その美しい声と情熱はカーテンコールで一際、大きい声援を浴びた。
王族のアッスールと結託して夫ニーノ王を暗殺した女王セミラーミデの前に、若き軍人アルサーチェが現われる。。
第1幕、超絶技巧と輝かしい声を誇る新進ソプラノのA・ミードがセミラーミデに扮しアリア「美しく輝く光が」を歌い、アルサーチェのバビロニアへの帰還を喜ぶ。
第1幕 セミラーミデとメゾソプラノのE.ドゥシュング(ロッシーニの時代はカストラータ)扮するアルサーチェの二重唱。アルサーチェはセミラーミデへの忠誠を誓うが、セミラーミデは自分への愛と取り違える。アルサーチェはセミーミデにより、姫アゼーマとの愛が許されたと誤解する。
アルサーチェが行方不明になった実の息子(ニーニャ)だということを知らず愛情をささげるセミラーミデは、「アルサーチェが私の夫となり、王になる」と宣言。突如雷鳴がとどろき、殺した王の亡霊が出現。
第二幕 柔軟でノーブルな低音で聴かせるバリトンのI.アブドラザコフがセミラーミデに、何故国王に自分を選ばなかったのかを抗議する二重唱。セミラーミデはアッスールを退ける
関係が決裂したセミラーミデとアッスールとの泥沼の展開に加え、復讐のために母を討たなければならない息子の葛藤の物語が繰り広げられる
ラストシーンは表題部として使われている。
世界最高峰とも言われるベルカントオペラのキャストが集結し、生命力あふれるロッシーニの音楽が堪能出来たことには感銘を受けた。
出演:
セミラーミデ アンジェラ・ミード S
アッスール イルダール・アブドラザコフ Br
アルサーチェ エリザベス・ドゥショング Ms・・・昔はカストラータ イドレーノ ハヴィエル・カマレナ T
オローエ ライアン・スピード・グリーン Br
演奏:マウリツィオ・ベニーニ 指揮 メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団
演出: ジョン・コプリー
(追記)
NHKの「名曲アルバム」では、ロッシーニの歌劇「セミラーミデ」序曲が放映されることがある。ロッシーニの序曲は、この他に歌劇「ウィリアムテル序曲」、歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲、歌劇「盗むかささぎ」序曲などクラシックの演奏会で取り上げられることが多い。いずれも軽快なテンポで歯切れの良い曲である。この曲がロッシーニの序曲の中で優れた作品であることの証でもある。
なお、ロッシーニの人となりを「名曲アルバム」では取り上げている。
彼は、8歳の時に食材の豊富なイタリア中部ボローニャに移り住んだ、少年の夢は肉屋になることだったという。 地元の音楽院でヴァイオリンや作曲を学び、卒業した後イタリア各地を旅行しながら、38曲もの傑作オペラを書き上げる。
ビーフステーキ・ロッシーニ風・・・ 肉汁に赤ワインを入れ、ひれステーキを炒めその上に世界三大珍味のフォアグラ、トリュフを加えたもの。
しかし。ロッシーにとって一番大切なことは美食であった。自ら包丁を握り次々と新しい料理法を生み出す。ロッシーニは、後世の料理界に大きな影響を及ぼしたという。31歳の時この力作オペラを書き上げたが、その6年後、突如オペラの作曲を止めてしまう。ボローニャで料理に専念したいというのがその理由だと言われている。