12月26日(日) の「N響アワー」に今年、開催された第16回のショパン国際ピアノコンクールの優勝者として登場したユリアンナ・アヴデーエワ。
ユリアンナ・アヴデーエワはロシア出身の女性ビアニストで、5年ごとに開催されるショパンコンクールではマルタ・アルゲリッチ以来45年ぶりの優勝者です。この日は凱旋記念公演として来日した時の、シャルル・デュトワ指揮のNHK交響楽団、ショパン作曲のピアノ協奏曲第1番ホ短調の演奏でした。
ショパンのビアノ曲そしてショパンコンクールというと、マルタ・アルゲリッチの第7回ショパンコンクールのライブ録音であるビアの協奏曲第1番が私の愛聴版。今も「ピアノの女王」として君臨するマルタ・アルゲリッチの若き日の鮮烈な演奏です。オーケストラの演奏は感心しませんがアルゲリッチの演奏は「私はこれから、美貌とピアノの才能を世界の聴衆に聴かせるために羽ばたこうとしているのよ」と言ってているような凄みのある演奏です。そのテンポとファンタジーは私たちを今も惹きつけます。
私は、最近のショパンコンクールの優勝者のお披露目演奏を幾度となく聴いてきましたが、このCDの演奏を基準にしてしまうので、期待はずれになってしまうことがほとんどでした。
今回のユリアンナ・アヴデーエワの演奏は、アルゲリッチを超えるとまではいきませんが、ショパンらしいロマンチックな音色を聴かせてくれる良い演奏でした。また、終始落ち着いていて、彼女の持っている音楽性を十分に伝えているように思えました。
ショパンのピアノ協奏曲第1番はショパンが20歳の時の作品。若き日の作品は、シューマンがショパンの曲は「花の影にかくれた大砲」と批評したように、力強い部分があり、男勝りの演奏を必要とします。そのため、コンクールでこの曲を必ず弾かなければならないこともあって、女性優勝者が少なかったともいえるでしょう。こうした点も乗り越えるスケールの大きな演奏でした。アヴデーエワの服装は派手なドレスではなく、黒のスーツ。彼女も男勝りの演奏を心掛けていたに違いありません。
この演奏会にはアルゲリッチも客席にいて、「コンクールの時よりも良い演奏」といったそうです。またアヴデーエワも「デュトワの指揮は自分のやりたいことをすくい上げてくれたので、助けになった」と言ったのこと。間違いなくデュトワ指揮、N響のオーケストラはアルゲリッチのCDより、アンサンブルも良く音も重厚でした。