めいすいの写真日記

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ベートーヴェンのピアノ曲・・・ 「ベートーヴェン生誕250年」

2020-12-22 | クラシック音楽

 今年2020年は、「ベートーヴェン生誕250年(1770~1827)」である。このため、 NHKでは「Beethoven250」という特集を組み,幾つもの番組を放映した。こうした特集では彼の音楽を流すだけでなく、彼の人となり、曲の解説が豊富に語られることが多く、彼の様々な面を知ることができた。
 とりわけ誕生日が12月16日?(17日洗礼日)なので、年末にかけて番組が集中的に放映されて頭の中が混乱するほどの情報が集まった。
 そして、彼の音楽の素晴らしさと多様性を改めて知ることになったと思う。原稿募集を依頼された時期ともちょうど重なったわけである。


 彼は父親からその才能をあてにされ苛烈極まるスパルタ教育を受けた。一時は音楽に対して強い嫌悪感を持つようになったという。8歳の頃ケルンの演奏会に出演、11歳の時にクリスティアン・ゴットロープ・ネーフェニ師事した。16歳の時にモーツァルトを訪問、21歳の時にボンに立ち寄ったハイドンに才能を認められ弟子入りを許される。
 20代過ぎから音楽家としては致命的な耳の病気(難聴)に罹り、高音が聞こえなくなり始め50代には全く聞こえなくなってしまう。耳が聞こえなくなるのにどうして作曲が出来たのか?
 最近になって知ったのは、「絶対音感」があれば作曲ができるということ。そして若い頃(20代前半)からはウィーン随一のピアニストとして知られ、「即興演奏」がまさに絶賛されるほど優れていたということである。それらはモーツァルトと同じように父親の教育などにより、彼のなかに音楽が蓄積され、育っていったからということである。もちろん、ただそれだけでベートーヴェンが作曲した膨大な量と質の高さを伝えることなど、とても出来そうにはないが・・・。
 ここでは、ベートーヴェンが最も身近に使用した楽器であるピアノの名曲を取り上げながら、少しだけでもベートーヴェンを語ることにしたいと思う。
 ピアノはベートーヴェンの時代には著しい進歩の途上にあり、機構が変化し、鍵盤の数が増え続けた。したがって年代により異なるピアノを使用したことになる。ピアノの製作者は、第一人者の彼のところにまず届け、さらなる改良のため、感想を聞いた。彼の手元には最新のピアノが常にあったということになる。
 また、耳の悪い彼のために強い音が出るよう、普通は1音にビアノ線3本の所を4本としたり、正面上部に箱を作り、頭をその中に入れ音が良く聞こえるようにしてもらったりもした。
 ピアノは彼の最も身近な楽器であり、56年の生涯のうち40年もの間ピアノ・ソナタを書き続けたので、彼の人生そのものであったといえよう。交響曲、協奏曲、弦楽四重奏曲、宗教曲、オペラなどなど幅広いジャンルの膨大な作品の礎の役割を果たしていたことは間違いない。

 なお私事ですが、妻との婚約時代、誕生日にバックハウス盤の「ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全集」(LP10枚組)をもらったのが今でも良い記念になっている。当時の全集ものには詳しい解説書が着いており素晴らしい。

 以下に、7つほど私の好みの作品を掲載したい。なお、()内の順位は、「らららクラシック ベートーヴェン音楽ベストテン」によるものである。    

● ピアノソナタ第8番「悲愴」(第3位)

                                                        反田恭平の弾く「悲愴」第2楽章

 ベートーヴェンの初期のソナタの中でも、とりわけポビュラーな作品である。
「悲愴」という題名はベートーヴェン自身が付けたものである。彼自身が付けた愛称を持つ作品は少ないが、その,数少ない作品の中の一つとなっている。第一楽章冒頭は悲壮に満ちた悲劇的な曲想となっているが、後の作品に見られるような深刻なものではなく、あくまでも若きベートーヴェンのものである。
 スコットはこの曲を「ロメオとジュリエット」における青春の悲しみや苦しみと共通のものといっている。
 CDはバックハウス盤、完璧な技巧で極めて豪壮に弾気挙げたスケールの大きな演奏である。


● ピアノソナタ第14番「月光」(第4位)
 ベートーヴェンの32曲のソナタの中でも最も有名で広く知られている曲である。
 1801年に作曲された当時、激しい恋をしていた伯爵令嬢のジュリエッタ・グイチャルディに献げられている。ジュリエッタはベートーヴェンとの結婚を望んだが父親に反対されてしまった。
 月光という名前の由来は、いろいろな説があるがルードヴィヒ・レルシュタープという詩人が第一楽章を聞いて「スイスのルツェルン湖にたゆとう小舟のごとく・・・」と表現したことに端を発しているようだ。私はスイス旅行の際、ルツェルン湖のほとりのホテルに泊まったが、その日は曇りで月は見えなかった。、
 それにしても、第一楽章は幻想的でロマンチックである。おそらくジュリエッタ・グイチャルディへの思いが込められているのであろう。
 第二楽章、リストは「二つの深淵のあいだの一輪の花」と呼んでいる。曲は妖精の踊りのような軽快な旋律から始まる。
 第三楽章は、前の二つの楽章が詩的な静かな楽章であったのと比較して、奔流する情熱、男性的な力強さが圧倒的である。失われた愛を乗り越えて生きていこうとするベートーヴェンの強い気概が感じられる。
 CDは正確無比な技術力と純粋な美しさを持つ表現力のポリーニの演奏が素晴らしい。


● ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」(第10位)

グレン・グールド テンペストのCDジャケット

 1801年~翌年にかけて作曲した3曲のソナタのひとつ。これらは当時のベートーヴェンの成長ぶりをよく示した内容となっていて、、劇的な要素と幻想的な雰囲気と大胆な楽想を持っている。弟子のシントラーがこの曲を理解するためのヒントをと尋ねられた時シェークスピアの「テンペスト」を読みなさいといったという。しかし、この曲との結びつきはあまりないようである。
 第3楽章が印象的で、馬が疾走するような動きが特徴的である。
 CDはグレン・グールドの演奏が魅力的である。特に第3楽章は驚異的な速さである。 一般的には6分を超えた時間で演奏するのが普通であるが、なんと4分32秒、しかも、そんなに速いとは感じない安定した表現となっている。グールドの類いまれなる才能を示した演奏と言えよう。

● ピアノソナタ第21番「ワルトシュタイン」(第18位)
 1802年に音楽家として聴覚を失うという死にも等しい絶望感から1802年に「ハイリゲンシュタットの遺書」を書くが、この苦悩を乗り越え、1804年には交響曲第3番を発表する。それを皮切りに,その後10年間にわたってベートーヴェンにとっての「傑作の森」(ロマン・ローラン」と呼ばれる時期となる。この曲はちょうどその時の作品。
 ベートーヴェンが過去の大作曲家たちの影響から完全に脱皮し,独自の作風を確立した時期の所産のひとつとして挙げられるピアノソナタである。雄大な構想とダイナミックな曲想が見事な力作となり、ベートーヴェンらしさを強く印象づける作品となった。CDはバックハウス盤、完璧な技巧で豪壮に弾き上げたスケールの大きな演奏

● ビアノソナタ第23番「熱情」(第11位)
 これも「傑作の森」の時の作品。
 ベートーヴェン自身が「気に入っている作品」と言ったという。
 ベートーヴェンらしいたくましさ、力強さ、何ものも燃やし尽くすような情熱がある。私の最も好きな曲である。
 CDはなんといってもリヒテル盤が素晴らしい。リヒテルは私の一番好きなピアニストである。この演奏は「ファンタジーが翼をひろげたような幻想的でスケールの大きい」ものである。
 この曲をLPレコードの時代から擦りきれるほどよく聞いた。CDではSACD版(PRD/DSD350 066)が録音・演奏ともに素晴らしい。「今回のベートーヴェンのピアノソナタのCDの中で1枚だけ推薦せよ」言われた場合は、躊躇無くこの盤にする。カップリングは第17番テンペストなど


● ピアノソナタ第29番「ハンマークラヴィア」
 ベートーヴェンのピアノソナタは28番から後期に入る。構成が一段と自由になり、ピアノ音楽の深遠な境地を確立した。その頂点がこの「第29番ハンマークラヴィア」である。1817年の秋から書き始め、19年に「ハンマークラヴィアのための大ソナタ」として出版された。
 この曲はベートーヴェンのピアノソナタの中で最大の規模を持ち、技巧的にも極めて難しい。この曲を書いた頃のベートーヴェンは精神的にも物質的にも最悪の状態にあったが重圧をはねのけ空前のソナタを書き上げた精神力の偉大さには圧倒される。本当に信じられない神の領域である。
 第一楽章の冒頭の和音から惹きつけられる。第三楽章アダージオ・ソステヌートは屋敷の奥深くに連れて行かれて、哲学的な世界を垣間見せられている気がする。もはやピアノ音楽の世界とは異なるような世界である。私は、この第三楽章がベートーヴェンのピアノソナタの中でも最も高邁な曲想であると信じている。
 ピノニストの反田恭平が番組「らららクラシックベートーヴェン音楽ベストテン」で「私の第

1位」は番外になってしまったが「ピアノソナタ第29番「ハンマークラヴィア」といったのは納得できる話であった。
 CDはなんといってもポリーニである。この哲学的な世界を表現出来るのは彼を置いて他にはいない。


● ピアノソナタ第32番(19位)

 ピアノソナタ第32番を弾くマウリツィオ・ポリーニ

 ベートーヴェンの最後のピアノソナタである。後期の作品によく見られるように2楽章に圧縮された形となっている。第一楽章は嵐のような激しさと近況感がみなぎっており、第二楽章では敬虔な祈りの気持ちを表現している。この2つの楽章では、それぞれ「反抗」、「屈服」という晩年の思念が表れ,枯淡の域ともいえる彼の心情が満ちている。
 CDはポリーニ。曲の内面をよく掘り下げて演奏している。

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● エリーゼのために(8位)
   ベートーヴェンの作品の中でも最もよく耳にする曲といえよう。
  ピアノ学習者がまずは弾けるようになりたいと思う曲である。
  ヴァイオリンでは、ロマンス第2番がそれに当たる。
  テレーゼという女性に手渡したという、楽譜の業者に渡したのではなく
 彼女に対する恋文のようなものだったらしい。エリーゼとなったのは彼の文字が乱雑だったためという。 

                                〈 完 〉



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