WOWOW 2021/7/10
ワーグナーは超大作『ニーベルングの指輪』後、善悪について思索する一方、精神性と信仰を探求し始めた。
『バルジファル』は、その成果であり、彼の最後の作品で祝祷でもある。
【演出】フランソワ・ジラール
【演奏】メトロポリタン歌劇場管弦楽団 指揮 D・ガッティ
【出演】
パルジファル・・・ヨナフ・カウフマン
騎士のグルネマンツ・・・ルネ・パーペ
クンドリ・・・カタリーナ・ダライマン
聖杯守護団の王アンフォルタス・・・ペーター・マッテイ
魔術師クリングゾル・・・エフゲニー・ニキティン
【上演】2013年4月 5時間12分
序曲 静謐で悠久さを感じさせる名曲
第1幕 モンサルヴァート城
伝説の中世スペインのモンサルヴァート城。キリストを刺した聖槍とその血を受けた聖杯を守る騎士団を率いるアンフォルタス王は、
魔法使いクリングゾルに操られた魔性の女クンドリに誘惑され、聖槍を奪われた上に怪我を負い苦しんでいた。
騎士グルネマンツが、城の近くの森の中で配下の小姓たちにこれまでの経緯を物語る。
王アンフォルタスを救うことができるのは「聖なる愚者」だけだという。
森の中で、白鳥を射落とした若者が連れてこられる、自らの名も生い立ちも知らない。
ただクンドリが母が亡くなったと伝えると,彼は驚く。
聖槍を奪われ、脇腹に傷を負うアンフォルタスは、苦しみながらも聖杯の儀式を行う。
しかし、聖杯が開帳されるが、若者が何かを起こすことはなかった。
グルネマンツは期待していた若者に失望して追い立てる。
第2幕 クリングゾルの魔の城
クリングゾルの魔の城は、大量の赤い血で満たされ。槍の林立する恐怖の空間。
襲いかかる兵士たちをなぎ倒して、この城にやって来来た若者がいた。クンドリは「バルジファル」と呼びかける。
この城の主は、聖槍を持つクリングゾル
まず、クルングゾルの支配下の女性たちから誘惑を受けるパルジファル
ここでは、クンドリはクリングゾルの支配下にある。親の愛を語るクンドリから愛の口づけを受けるが、
この時、パルジファルは知を得、アンフォルタスの痛みを感じることになり、クンドリの誘惑から逃れる。
誘惑に失敗したクンドリに変わり、クリングゾルが聖槍を持ってパルジファルに立ち向かってくる。
パルジファルは「このしるしでお前の術を破ってやる」と言ってクリングゾルから素手で聖槍をつかみ取る。
中央は倒れたクリングゾル。クリングゾルの魔術は破られた。
槍でパルジファルを突こうとしていた女性たちは、この後槍を収め、城は崩壊する。
聖槍を手に入れたパルジファルはこの城を立ち去り、その後、アンフォルタスの居場所
を尋る旅に出て、長い歳月が経過する。
第3幕 ある聖金曜日のモンサルヴァート城
長い歳月の後、やっとパルジファルは聖槍をもち荒廃したモンサルヴァート城にたどり着く。
先王ティトゥレルは失意のうちに没し、聖杯の騎士団は崩壊の危機に瀕していた。
クンドリが水を汲んできてパルジファルの足を洗い、グルネマンツがパルジファルの頭に水をかける洗礼の儀式を行う。
この後、有名な「聖金曜日の音楽」がが流れる。
城内では、先王の葬儀のため、息子のアムフォルタスは聖杯を開帳する役目となる。
しかし彼は脇腹のその傷の苦しみに耐えきれず、配下の者たちに自分を殺せと命じる。
その時、パルジファルが現れ、聖槍を彼の傷口に当てると見事に快癒する。
愛と哀れみの試みを持ち、聖なる棋士となったパルジファルはアンフォルタスから
聖杯を守る務めを受け継ぐと宣言する。
あなたの傷を塞いだ槍から聖なる血が流れ落ちる。聖杯の中に波打ち湧き出る聖なる泉に憧れ,聖なる血が流れ落ちる。
この後、グンドリは呪いを解かれ、息絶える。
バルジファルによって聖杯は高く掲げられた。
【感想】
どこまでも続く静謐な音楽、魅力はあるが5時間あまりの大曲を集中力を持って聞くには努力が必要だ。
フランソワ・ジラールの演出は近代性を持たせたというが、解釈しにくいところが多少あったことを否定出来ない。
ただ、映像は効果的に使われていた。