奈良県の東北部に位置する山添村東山地区辺りの各地では、秋祭りに際して神事芸能の田楽が奉納されます。
侍烏帽子(つば黒烏帽子)を被り素襖姿を纏った渡り衆は田楽奉納集団とされ、トーヤ宅で御幣や竹の笛を手作りして、田楽の所作を演じます。
峰寺の六所神社で奉納されるジンパイ(神拝)と呼ばれる奉殿楽(ホーデンガク)は、峰寺、松尾、的野の3カ大字から一年交替で選ばれた渡り衆八人が演技します。
今年の渡り衆は峰寺で、来年は的野、その翌年は松尾と地区別に担います。
宵宮の日、トーヤ宅でヨバレをいただいた渡り衆は一老の指導のもと八老衆のうち三人が田楽所作の練習を始めます。
八老衆は御幣と弓を持つ一老、弓の二老、ガシャガシャ(編木)の三老と四老、笛の五老と七老、太鼓の六老、鼓の八老とそれぞれ役割が決まっています。
ヒワヒワと呼ばれる竹弓を持つ二老、ガシャガシャ(編木)を奏でる四老、鼓を叩く八老が奉納人として芸能されます。
所作は前に出て、正座し拝礼を行い、太鼓のドン、ピィ、ピィ、ピィと笛の連続と鼓で合奏します。
太鼓はドンー、ドン、ドンと三回打って奉納人が三回廻ったときに強く打ち、また、笛はピィ、ピィ、ピィー、ホーホへヘと吹いて廻り返しを知らせます。
1回目は楽器を右脇下に抱え、右手に持った扇を広げ外へ右に三回振り廻ります。
2回目は、正座して楽器を中央に置き、右手に扇を持ってマツリながら左に三回廻ります。
それを終えると拝礼し元の座に戻ります。
扇はゆっくりと大きな動作で所作をするのは舞床を祓い清め、福を招き入れる意味があります。
(H18.10.14 Kiss Digtal N撮影)