マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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ふるさとこよなく吉日燦燦田楽座公演

2012年02月19日 22時18分45秒 | 民俗を観る
日時  平成24年2月19日(日  開演時間 13時半~16時
場所  橿原文化会館  奈良県橿原市北八木町3丁目65-5
主催  田楽座奈良公演実行委員会 -奈樂DEN-
入場  指定席4500円 大人自由席4000円

上演  第一部、第二部構成
http://www.narakko.jp/event/ids/003585.html

(H24. 1.11 記)

公演会場の橿原文化会館は大勢の人が行列を作っていた。



開演を待つ人たちは老若男女に児童が埋め尽くす。

会場はほぼ満席である。

それほど多くはないがこんな光景を見たのは初めてだ。

田楽座の人気ぶりが行列に現れている。

田楽座奈良公演実行委員長―奈樂DEN―が挨拶を述べる。

「みなさん、こんにちは」の一言に会場から黄色い大きな声が「こんにちは」と応える。

奈良県で行われている桃股の獅子舞や洞川の行者神楽。

御杖村、天川村に伝わる地域のマツリに奉納されている伝統芸能である。

村人に求められて廃れゆく故郷の行事を支援している。

村の景観や気づかいを学んできたと紹介されて始まった第一部。

大きな拍手で迎えられて幕があがった。

何やら幾何学的な文様を描かれた白いモノ。

それは面だ。

烏帽子を被り、顔はその白いモノで覆い隠している。

一人は鈴を手にしている。

登場した3人は左右に舞を演じる。

年初めの神事を現しているように見えた。

正月は田植え成りと紹介されて笛の音色にのせられて登場した陣羽織姿の演者たち。

大太鼓、太鼓、小太鼓、スリ鉦などの楽器が並ぶ。

女性は着物だ。

ハチマキを締めているすべての演者が笛や太鼓を打ち鳴らしながら踊る。

杵とも思わせる太めのバチを持つ男たち。

太鼓は臼に見立ててモチを搗く踊り太鼓だ。

「ヤレ、ヤレ」と掛け声がときおりはいる。

視線は舞台。

それは演者のカタチであろう。

豊年踊り、田植え踊りと称して「はぁー やっとー」。

「はぁー こりゃこりゃ」。

「やーとこさっさ」などと掛け声がかかる。

演者の見せものに数々の素朴な奈良県内の村行事を拝見した私は違和感を覚えた秋田県にかほ市(旧金浦町)に伝わる「金浦(きんぽう)神楽」や「宮城県気仙沼市の廿一(にじゅういち)田植え踊り」を劇中披露された。

新城の田植踊と似通った踊りである。

衣装も同じで頭のハチマキ締めに陣羽織姿の田楽踊りは東北地方の伝統行事だ。

田植えだと弓矢を持った二人が登場した。

お田植えをする早乙女をしとめるのだと言って大きな矢を頭につけた一人は舞台から飛び降りて会場に飛びだした。

鉦を叩いて「あたりー」だと言った。

矢が向った先は「元乙女やった。それは、それは失礼した。」と舞台に戻る矢に扮した男。

会場はどっと笑い声がでる。

やり直しだろうか、もう一度、矢が放たれた。

会場を走り抜けてあっちやこっちへと。

探す早乙女はここにいたと若い女性の前で「あたりー」と鉦を叩く。

その人を舞台に連れ出して演者とともに田植えの作法。

苗に見立てたモノを左手に持って右手は人差し指と中指で田んぼに突き挿す所作。

それは田植えの姿だ。

田植え歌を唄いながら「豊作祈りの田遊びじゃ」と言って苗を植える。

舞台に立った女性にすかさず用意されていた大きな米俵を頭から被せた。

笑福の豊作を授かった記念にということであろうか、その人にはお米(想定10kg)が渡されたが軽そうに思える。

太夫と才蔵が演じる滑稽な芝居とも思える田植えの様相は田楽座創作の「お田植え万歳」である。

ある村の年中行事を踊り、舞、万歳などで演技紹介する田楽座。

時期は夏に転じた。

お盆である。

白の扇をもつ男女の登場。

お盆であるだけに浴衣姿だ。

笛と太鼓の音色が奏でるなか静かに舞うのは「長野県阿南町の新野の盆踊り」。

そして、キリコ燈籠を先頭に数人の演者が加わった。

テンポが速い太鼓打ち。

キリコ燈籠は中央に置かれた。

盆の歌を唄いながら「タカツク、タカツク、カン、カン、カン」。

リズムは増して「チャンカ、チャンカ」と聞こえるようだ。

鉦を叩いて踊る男。

「はぁー さっさ、やっさ、やっさ」。

「はぁー やれ、やれ、やれ、やれ」。

8ビートであろうか、とてもじゃないが盆の念仏とは思えないリズムの音色に悲しさを覚える「福島県いわき市のぢゃんがら念仏」。

大和の念仏ではありえない動きである。

念仏講が六斎鉦を叩きながら「なんまいだー」の念仏を唱えて先祖を弔う。

家人の前で静かに新仏を供養する六斎念仏に村行事を思い起こすのは私だけなのだろうか。

ちなみに大和の念仏は打つ鉦の音から「かんからかん」或いは「ちゃんからかん」、「ちゃんがらがん」と呼ぶ地域が多い。

いわき市では「ぢゃんがら」だ。

濁音になるのはその早さではないだろうか。

大和では「カーン、カーン」であるが、いわき市のぢゃんがらは実に早く打つ。

八拍子、それとも四拍子の鉦叩きは風土や生活文化の違いからだろうか、相当なリズム格差があるように思えた。

耳にする音色が異なる東北の鉦叩き。

「チャンカ、チャンカ」とか「チャカッ、チャカッ」のように聞こえた。

そして秋になれば収穫祭。

白い髪の毛をなびかせて走る天狗。

赤ら顔に長いお鼻姿だ。

獅子を演じるのは4人。

直列に入っている。

大和や伊勢では見かけない獅子である。

ときおり、「ひゃー」とか「へやー」とかの掛け声がかかる。

獅子が発する唸りの声だろうか。

走る牛のような姿の獅子舞は舞台を駆け巡る。

それは「富山県の五箇山上梨の獅子舞」だそうだ。

下出地区の獅子舞は牛姿の獅子に十人ほどが扮している。

祖山地区、相倉地区、東中江地区などもそうである。

それゆえ「むかで獅子」とも呼ばれているようだ。

マツリ=シシマイの姿に虚しく感じた演技であったが地域文化が大きく異なることに考えさせられた獅子舞である。

場は転じてある村の様相を描きだす映像スライド。

大きな釜の前に座る男性は村人だ。

剣と鈴を持っている。

おそらく湯立神楽神事であろう。

どこかしかで見かけたような古き写真である。

映像は下がって舞台にはその湯釜を模した釜がある。

神官と思われる人から幣を授かる男。

幣と鈴を持って湯釜の周りを踊り回る。

「さらまい」とか「そのまい」とか判然としない詞が発せられる。

そして最初に登場した男たちが現れた。

幾何学模様が描かれた白い面を被る白衣姿。

その面は護符のような文様なのである。

サカキか笹か判らないが手にしたそれを持って踊り舞ったのは「長野県天龍村の大河内池大神社大祭の願舞」であった。

舞台用に演出された伝統行事。

あまりにアレンジされた姿に違和感をもった。

「ハレ」の祭礼。普段の「ケ」が見当たらない。

土地の生活感が感じられず、ふるさと本来の声が聞こえてこない第一部であった。

それにしても気がかりなのは四角い紙の神面の幾何学文様である。

「千と千尋の神隠し」の映像に登場する湯屋の仮面の男、カオナシではないかと調べてみたがそうではなかった。

映画では「春日さま」という神さまだそうだ。

舞楽の一つに挙げられる「蘇利古(そりこ)」の舞。

長方形の紙に幾何学文様が描かれた面で顔を隠す。

雑面(ぞうめん)や蔵面の字が充てられている。

目や口、鼻などをデフォルメされた顔だ。

人面を抽象化した面だそうだ。

「胡徳楽(ことくらく)」や「安摩(あま)」もそうである。

たしかに似ている雑面の姿。

舞楽によって文様が多少異なるがまぎれもない。

いずれかを模したものであろう。


第二部は「信州伊那谷」の文字が染められた法被姿で登場した。

昭和39年に伊那で旗揚げした由縁であろう。

大太鼓、小太鼓、鉦、笛にハチマキ姿は第一部の登場と同じだ。

出囃子はそれぞれの地域で活動されている太鼓打ちの和太鼓集団と同じように聞こえる。

「はいっ はいっ」と顔を見合わせて演奏する。

「よぉー はいっ」とバチを振り上げる様も同じだ。

「滋賀県甲賀の水口囃子」だそうだが、鉦は手で押さえているのだろう、まったく聞こえない。

青森県津軽地方の津軽じゃみせん(三味線)を奏でる「おはら節」。

笑顔を振りまき傘踊り。

観客の手拍子と一体となって踊る。

傘は扇に持ち替えた。

巧みな演技に魅了されるがスピードはたまらなく早く目が追いつかない。

長い竿を持つ男。

後方は小太鼓を叩く女性演者。

「さいとろ(り)さして みっしょうか」の掛け声に合わせて芝居をする長野県南木曽町の「鳥さし舞」。

トリモチを竿に付けて鳥を捕る。

懐かしい道具であるトリモチ。

子供のころはそれを使って遊んでいたことを思い出す。

滑稽なパントマイム演技に笑いを誘う。

「しょっかまて みっしょうか」などと聞こえた演技は長野県の木曽地方に伝わる舞だそうだが、スズメは捕えられてもヨタカは無理だろうと思う。

岩手県江刺地方に伝わる鹿(しし)踊り。

田楽座のパンフレットではなぜか「獅子踊り」と書かれてあったが・・・。

鹿の角に見立てた白く長いものを頭に付けている。

「ササラ」と呼ぶらしい。

竹を割いた白い飾りは稲穂を表している。

面はといえば獅子頭。

そこには本格的な鹿角が横に張りだしている。

ということは雄鹿の姿だ。

長く伸ばした黒髪姿に踊り衣装を身につけ太鼓を前に持つ。

両手のバチで叩きながら舞い踊る。

会場まで飛び出した踊りは迫力がある。

ダッダッと太鼓を叩いて白い角を床に伏せる。

独特の衣装に本物を見るようで、豊穣をつかさどる神の使いであると伝えられている。

高校生のころによく聞いた「貝殻節」。

懐かしさに思わず口ずさんでしまう。

あの頃は民謡のレコードまで買っていた。

針が擦り切れるまで聞いていた。

秋田のドンパン節や歌詞にしょっつるやハタハタが出てくる秋田音頭、山形の真室川音頭、富山のこきりこ節など。

私の名前が出てくるのでよく唄った福岡の黒田節や北海道のソーラン節は会社の宴会場で唄芸を披露したものだ。

それはともかく演技は続く。

ハデな飾りを付けた傘を持つ女性たち。

クルクルと回しながら踊る。

笑顔を振りまいて踊る姿。

これが最も違和感をもつのだ。

合間に「はいっ はいっ」の掛け声。

宝塚のショーなのか、まるで現実に戻ったような気分にさせる。

祭り囃子に踊り込み。

伊勢志摩磯辺の三尺大太鼓の曲打ちなどが披露されて終演となった。

幕は静かに下りていくが幕下から僅かに光が漏れている。

拍手はやまない。

やがてアンコールの声も出だした。

予定に組み込まれているのであろうアンコール。

花束や色紙を渡されて挨拶された歌舞劇団「田楽座」はプロの芸能集団だ。

公演された民俗行事。

上演されたマツリはいずれも早めの囃子ものばかりと感じた。

マツリを演出するにぎやかしである。

舞台演出の関係もあろうが初めて見る人にとっては感動ものだったに違いないと思う。

が、奈良県内の行事を数多く拝見してきた私にとってはなぜかおかしく感じる。

伝統芸能といえども本来は氏神さんに向かって奉納し捧げる舞。

神さんに喜んでいただけるように真剣に踊る。

その真顔を拝見していると怖れ多くもという感じだ。

その昔、三波春夫さんが舞台でお客さまは神様ですと言った。

会場におられる方々は神様ですというようなものだろう。

そう解釈すればいいのだろうがどうしてもしっくりといかず場に馴染まない。

そんな公演会場ではあったがお誘いいただいた実行委員会のTさん、Kさん。

ありがとうございました。

桃股、洞川の情景も拝見し、今後も益々のご活動に拍手を送りたいと思います。

(H24. 2.19 SB932SH撮影)


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