メルドーの新譜がバッハ集だと知って驚いたり、うなずいたりしていた。
バッハをジャズで演る例は数多いけれど、バッハの良く知られた旋律をインプロに展開するジャズ演奏というのがほとんどでバッハは素材というものがほとんどと思う。
メルドーのこれはそことは違うものになっている。平均律クラヴィア集から5曲のバッハの曲を挟んで5曲がインスパイアされた演奏になっている。ですからオリジナルになればバッハと違う音律も出てくるわけでそれをひっくるめて「アフター・バッハ」ということになる。
同じ試みは実はあって、Edouard Ferletが「think bach」というアルバムでバッハの曲を素材にしたすべてオリジナルな曲集をだしています。
その時にも書いたのですが、バッハを素材にしてジャズするというのではなく、ピアニストとして弾き続けている、またはピアニスト人生にずっといるバッハをいかに自分にとりこんでいるかのを表現するアルバムだと感じる。
その意味この二つはとても似ている。
面白いのは名メルドーが2曲目に演奏している平均律クラヴィア集1のBWV 848、とそれを展開する次のRondoであるがフェレットのアルバムでも同曲を「reprica」というタイトルで演奏している。フェレットのアルバムの場合は1曲のなかで
バッハが展開されている。
アプローチはとても似ていて、フェレットがいかにもフランス人の、メルドーがアメリカ人の、みたいなバッハの捉え方の違いを感じで面白い。
ということでこのアルバムをじっくり聞いたあとに「think bach」を聴くとピアニスト、ジャズ、バッハが朗々と繋がっている様でおもしろい。
それにしても最後の曲良いですね。いかにもバッハを昇華して祈りをささげている様で、私はバックに静かにパイプオルガンの音を追加して(頭で)聴いています。
After Bach / BRAD MEHLDAU
BRAD MEHLDAU piano
1. Before Bach: Benediction
2. Prelude No. 3 in C# Major from The Well-Tempered Clavier Book I, BWV 848
3. After Bach: Rondo
4. Prelude No. 1 in C Major from The Well-Tempered Clavier Book II, BWV 870
5. After Bach: Pastorale
6. Prelude No. 10 in E Minor from The Well-Tempered Clavier Book I, BWV 855
7. After Bach: Flux
8. Prelude and Fugue No. 12 in F Minor from The Well-Tempered Clavier Book I, BWV 857
9.After Bach: Dream
10.Fugue No. 16 in G Minor from The Well-Tempered Clavier Book II, BWV 885
11.After Bach: Ostinato
12.Prayer for Healing