一人の老いた戦士が眠りにつく。
ニリンソウが群生している渓流のほとりで。
べつな一人は セイタカアワダチソウが繁る石ころだらけの斜面で。
こっちはまだ壮年だというのに。
その死を悼んで獣たちはあつまっているが
かれらの肉親の姿はそこにない。
遠くの空から銃声が聞こえる。
クヌギ林の奥の ずっと奥の
この世からはすいぶんとへだたった積乱雲のへりのあたり。
かつて存在したしめやかな夜の底で首のない黒い馬が闇の中を駈けていく。
戦死だろうと 病死だろうと 事故死だろうと
母なる地球はかれらの死を 他の死と区別しないだろう。
. . . 本文を読む
まずふとった議員のようなトノサマガエルがあらわれる。
夜行性のコウモリや 時に刺しつらぬかれたカラスがあらわれ
広大な円卓をはさんで踊っている。
ぼくには他人の悪夢が幽かながら見えている。
サバトの饗宴とでもいうような。
日本が「終わりのはじまり」に向かって
押しとどめることのできない坂道を下りはじめたいま
それは昼となく夜となく すべっていく。
すべっていく。
きみやぼくが少し騒いだくらいではどうにもならないんだってさ。
たとえ 一万人が力をあわせても。
せめてゆるやかな着地をめざし 巨大なエンジンのうなりに耳をすます。
やがてべつな動物が人間の繁栄にとって代わるだろう。
. . . 本文を読む
日曜日、ヒマだと仕事場が趣味の空間にばけてしまう三毛ネコ。
いまこの記事を、シューベルトのCDをかけてそれを聴きながら書いている。
1.アルページョ・ソナタ イ短調 D.821
2.ヴァイオリンとピアノのための幻想曲 ハ長調 D.934
3.ヴァイオリンとピアノのためのソナティナ ニ長調 D.384
4.ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調 D.898
5.ピアノ三重奏曲第2番 変ホ長調 D.929
1920年代、1930年代の古い録音なので、音質はお世辞にも良質とはいえない。だが、演奏家はコルトー、ティボー、カザルス、ブッシュなどの往年の天才ばかり。BGMで聴くには「もったいない」音楽なのであります(^^;) 真剣に聴いていると、ご本人すらよくはわからないさまざまなインスピレーションが、ボーフラ・・・いや、雲霞のごとくわいてくる(笑)。
. . . 本文を読む