二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

アントン伯父さんのくしゃみ(ポエムNO.39)

2011年08月01日 | 俳句・短歌・詩集
アントン伯父さんがぶつぶついいながら ゴミ箱から楽譜のきれはしを拾いあげる。 「まだ女が抱きたいのかね。名声も? そこにスキができる。そこを狙ってくるのですぞ 敵どもは」 ぼくやきみに――ではなく自分自身に向かって ぶつぶつ ぶつぶつ と。 空から鉄砲やゴボウやよごれたハンカチが降ってきそうな朝。 「九番はいつになったら仕上がるんです? このままじゃ 完成するよりお迎えがさきにきますよ」 アントン伯父さんはウィーンの屋根裏部屋にみこしを据えている。 たまに修道院まで出かけていっては 日がな一日 お目あてのシスターがやってくるのを待っている。 「いやはや 昨日もひどいお天気でしてな。 散歩どころじゃなくて。 . . . 本文を読む
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