二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

CAMERA LIFE & 写真生活

2011年10月23日 | Blog & Photo


バックハウスやケンプの時代にピアノ音楽に目覚めたので、その後、若い世代のピアノに馴染むには少し時間がかかった。
それでも、むろんレコード、CDという限定つきではあるが、ルービンシュタインやグルダやブレンデル、アシュケナージをあつめて聴いてきた。

グールドがだめ。ミケランジェリがだめ。ポリーニがだめ。そのうえ、リヒテルも、アルゲリッチもだめということになると、いったいだれのピアノがいいの? ということになりかねない(^^;)
指揮者と違って、好みがはっきり分かれてしまうのが、わたしの場合、ピアニスト。
まあ、指揮者であっても、好き嫌いはあるけれど、たとえばポリーニのように「こんなやつ、もう二度とは聴かねえぞ!」という反応は起こらない。
指揮者はなんの音も出さず、棒を振る人だから、音楽とのかかわりが身体的であるより、頭脳的なのに比べ、ピアノ演奏はそれこそ身体的・生理的な条件に直結した行為なので好悪が露骨に出てしまうのかなあ・・・と考えてみるが、どうもそれだけではなさそう。

リヒテルはこれまで、3、4枚は持っているし、集中して聴こうとしたことがあった。
しかし、なにかが、少し違う・・・いや、違うぞと感じつづけてきた。
ところが、このあいだ、一枚のCDをBOOK OFFで手に入れ、三度ばかり耳をすましているうち、ある感触を得た。

「ピアノ協奏曲第二番 ハ短調」ラフマニノフ
「ピアノ協奏曲第一番 変ロ短調」チャイコフスキー

ラフマニノフといえば、まずこれというくらい有名なピアノ曲なのに、そして、思春期に多少の思い出がなくはないのに、まるで映画音楽みたいで安っぽくて、感傷的すぎて、好きにはなれなかった。
リヒテルは、どちらかというと、これまでは腕力にまかせた、荒っぽいフォルテシモにげんなりさせらていた。ところが、ワルシャワ・フィルハーモニー&ヴィスロツキ指揮でやったこのラフマニノフは、すばらしい。打鍵の強弱がはっきりしていて、その中間の階調感がうすい・・・という欠点が、まったくみられないのである。

とくにピアニシモの粘りというか、やわらかなタッチには、惹き込まれるものがある。知情意のバランス、匙加減が、絶妙な高品位の音楽を出現させている。
「へええ、こんなにデリケートに、パーソナルに、自分の‘歌’を響かせることができるピアニストだったの!?」
まことに遅ればせながら、ラフマニノフを、リヒテルを、見直しているところである。
ワルシャワのオケだって、どうして、どうして。ともすれば暴れ馬になりかねないリヒテルをうまく御して、裏方にまわりながら、手堅く卒なく、この主役をささえている。これは、おそらく、この曲の最高の‘名演’だろう。もっと華麗な曲だと思っていたのに、こんなに哀しい曲だということを、はじめて知ったような気がしている。
チャイコフスキーの第一番の方も悪くはないが、第三楽章あたりになると、やっぱりささえきれていないようである。わたしの偏見と独断では、チャイコフスキーのこの曲は、「竜頭蛇尾」の典型のようなところがあって、それを克服するため、ピアニストは工夫し、苦労を強いられるはず。相手はカラヤンであるにもかかわらず(・・・あるいは、であるがゆえに)それが、あるところではうまくゆき、あるところではうまくいっていない。

ラフマニノフのごくポピュラーな一曲に耳をすましながら、「ははあ、これがリヒテルの味だな」
「この厚みがあって、しかも、地の底から湧いてくるようなピアニシモ! また、ぎこちないようでいながら、名状しがたい感情のしたたりをたっぷりとふくんだ個性的なタッチ。音から音へ移っていくときの、凄絶ともいえる、めくるめきに満ちた間のとりかたの優雅さはどうだろう」
こういうふうに、なにかが豁然と開けてくる瞬間が、ほんとうにおもしろく、どきどきする。だから、音楽鑑賞はやめられないのだろう。

ところで、今日はCAMERA LIFE & 写真生活について書くつもりであった。
前者はカメラという道具とのつきあい方、後者は、撮影した写真との。
なぜこのタイトルをえらんだかというと、2011年のこの秋、デジタルカメラの新製品がいくつかのメーカーからつぎつぎ発売され、かつてない活況を呈しているからである。



ここに写っているカメラは、
NIKON D7000(タムロン90mmマクロ付)、LUMIX LX5、RICOH CX4の三台で、目下のわたしの愛機たち。
カタログは、
FUJIFILMのX10、RICOH GRDⅣ、NIKON 1の三冊。

PENを買おうかと思っていたところ、オリンパスの不祥事が表面化し、つぎの一台をどれにするか、ふたたび迷いの淵に突き落とされてしまったというわけである(笑)。
RICOHのCXシリーズは、大きな旧来型の一眼レフを押しのけて、現在のメイン機種だから、CX6が出たら、しのごのいわず手に入れるつもり。
昨日ヤマダ電機でさわってその操作感、質感をたしかめたX10も、レトロ感覚たっぷりでオールインワンのスナップカメラとしては魅力十分。
あああー、悩ましい、いったいどの女を、いや失礼――どの一台を買ったらいいものか?
あっちへふらふら、こっちへふらふら。欲しいレンズもあることだし、予算は限られているしで、夜も寝ずに、ん? いやはや、たっぷりと寝てわが身の浮気ごころと向きあっている日々であ~る_(._.)_デハ、ハ。
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