二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

猫と踊れば(ポエムNO.2-83)

2016年10月09日 | 俳句・短歌・詩集
テという文字が踊っている。
ンという文字がなにやら呻いている。
そして よく見ていると
ベもあるし ルもある。
小さな声で鳴いている。
画布のような白っぽい原っぱのあちこちで。

近づいてみると それは猫たち。
ぼくの目の前から姿を消してしまった猫たちなのだ。
猫が文字のように
文字が猫のように
愉し気に騒ぎ 踊っている。
なにか歌っている。

今日はいいお天気。
コスモスだって揺れている。
踊っている。
秋だもの
すがすがしい 秋だもの。
テンちゃんもベルもこの秋を待っていたよね。

そこに幼い日のぼくもくわわっている。
サンバとルンバ ルンバとサンバ♪
そうそう もっと身をくねらせて。
もっと元気よく
大きな声で歌い 踊ろう。
秋の日は短いんだから。

思い出があつまってくる。
つぎからつぎへと
きみたちと過ごした日々が
まだ手の届く距離 声が聞こえる距離にある。
おまえたちがあんなにも
あんなにも待っていた秋だもの。

テンちゃん テンちゃん!
ベル!
また戻っておいで。
そこはうちより居心地がいいのかい?
どうして戻らない
いつまでも歌っているわけにはいかないだろう?

風が吹いてきたね。
キチョウが飛び ススキも揺れて
おまえたちが姿を消したあたりから
憂いをもったメロディーが聞こえはじめる。
吹きぬけていく風の音。
・・・戻っておいで!

さあ いますぐ
いますぐ迎えにいくから。


<ベル>


※2016年10月1日に愛猫テンちゃんが死去。その前日にはベルが行方不明になってしまった。

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