
自意識の中で“自己を享受する”ことを知ってから
人間は幸福にもなったし 不幸にもなった。
ルソーがその両端を教えてくれる。
・・・と思いながらこの「孤独な散歩者の夢想」を
最後のページまで読みおえたことがない。
買いなおし 買いなおししているから
この本はいろいろな版で三四冊はもっている。
はじめて手に入れたのは十代の終わりごろ。
そんな世代に ルソーがへてきた経験の輝きと重みがわかるわけがない。
だけど 一冊の本の中から薫風が吹いてきた。
それだけはわかっていたから
また一冊買いなおしよく持ち歩いている。
キャッシュカードを
・・・あるいは小銭を持ち歩くように。
ぼくのかたわらにはつねに一台のカメラがある。
少しぬるくなった缶ビールがある。
コンビニで買ってきたたばこのパッケージがある。
ブラームスがあり 履き古した革靴がある。
カメラでは写真を撮影し 缶ビールを飲み
たばこを吸い ブラームスを聴く。
古靴を履いて 河川敷の緑地を年中歩く。
(近ごろぼくの意識は孤独な散歩者の夢想
に似通ってきたな)
この一冊を買うときに そう思った。
ある日 ぼくの心の地平線に
塩の結晶のように白く 夏雲が浮かんでいる。
もくもくと活動するその雲に封じ込めた記憶
の裏側から やっぱりかすかな薫風吹いてくる。
“孤独”とはそれを考える人の意識の中にしか存在しない。
トンボだって孤独
猫だって孤独
ダークブルーの着古した背広だって孤独。
ナルシシズムが孤独の意識を招きよせる。
「今度こそ 最後まで読み通そう」と自分にいい聞かせ
さっきデスクの上の書類を向こうに押しやったばかりだ。
人間は幸福にもなったし 不幸にもなった。
ルソーがその両端を教えてくれる。
・・・と思いながらこの「孤独な散歩者の夢想」を
最後のページまで読みおえたことがない。
買いなおし 買いなおししているから
この本はいろいろな版で三四冊はもっている。
はじめて手に入れたのは十代の終わりごろ。
そんな世代に ルソーがへてきた経験の輝きと重みがわかるわけがない。
だけど 一冊の本の中から薫風が吹いてきた。
それだけはわかっていたから
また一冊買いなおしよく持ち歩いている。
キャッシュカードを
・・・あるいは小銭を持ち歩くように。
ぼくのかたわらにはつねに一台のカメラがある。
少しぬるくなった缶ビールがある。
コンビニで買ってきたたばこのパッケージがある。
ブラームスがあり 履き古した革靴がある。
カメラでは写真を撮影し 缶ビールを飲み
たばこを吸い ブラームスを聴く。
古靴を履いて 河川敷の緑地を年中歩く。
(近ごろぼくの意識は孤独な散歩者の夢想
に似通ってきたな)
この一冊を買うときに そう思った。
ある日 ぼくの心の地平線に
塩の結晶のように白く 夏雲が浮かんでいる。
もくもくと活動するその雲に封じ込めた記憶
の裏側から やっぱりかすかな薫風吹いてくる。
“孤独”とはそれを考える人の意識の中にしか存在しない。
トンボだって孤独
猫だって孤独
ダークブルーの着古した背広だって孤独。
ナルシシズムが孤独の意識を招きよせる。
「今度こそ 最後まで読み通そう」と自分にいい聞かせ
さっきデスクの上の書類を向こうに押しやったばかりだ。