1
虹の橋を渡ってやってくるのは
車輪が五個ある透明なトラック。
通過するトラックのエンジン音だけが
街角に響く。
「ほら またあのトラックがきたね」
と白いマスクの少年が
怯えて指さす。
2
虹の橋を渡ってやってくるのは
ゆがんだ宝石のような女たち。
アメジストやラピスラズリ
罅われが美しいトルコ石
数万年前の人類の小さな叫びを封じ込めた琥珀。
十カラットの太陽
・・・のような少女の裸身が輝く。
3
虹の橋を渡ってやってくるのは
七色のたまねぎ。
剥いていくと
最後にはなにもなくなってしまう。
老いた人の頭は思い出がいっぱい
ほらほら その重さに
またつまずいて。
4
虹の橋を渡ってやってくるのは
ぼろぼろになったある男の半生。
野良犬の履歴書。だからって
ごみ置き場にすてるわけにはいかない。
はじめに生年月日を書く。
つぎに名前は 名前はない?
5
虹の橋を渡ってやってくるのは
あさってぼくが書こうとしている詩。
書き出しがつぎの数行をつれて
砂塵舞い上がる空にはためく。
手をのばせばことばはつかむことができるか?
できはしない
ことばはものではないのだから。
6
虹の橋を渡ってやってくるのは
ひまわりによく似た幻想の花。
その花のふちに腰かけて
老いた数学者と盲目の哲学者が話し込んでいる。
もうずいぶん長いこと そうしている。
隣ではまだ若い絵描きが雨蛙のように鳴いて
やがて雨がやってくる。
7
虹の橋を渡ってやってくるのは
暮れ方の夕映えの一刷毛。
天空のノクターンがきみやぼくの胸を掻きむしる。
悩みは王のごとく
人びとを支配し
憂い顔の男や女が手をつないで
虹の橋を渡ってやってくる。
虹の橋を渡ってやってくるのは
車輪が五個ある透明なトラック。
通過するトラックのエンジン音だけが
街角に響く。
「ほら またあのトラックがきたね」
と白いマスクの少年が
怯えて指さす。
2
虹の橋を渡ってやってくるのは
ゆがんだ宝石のような女たち。
アメジストやラピスラズリ
罅われが美しいトルコ石
数万年前の人類の小さな叫びを封じ込めた琥珀。
十カラットの太陽
・・・のような少女の裸身が輝く。
3
虹の橋を渡ってやってくるのは
七色のたまねぎ。
剥いていくと
最後にはなにもなくなってしまう。
老いた人の頭は思い出がいっぱい
ほらほら その重さに
またつまずいて。
4
虹の橋を渡ってやってくるのは
ぼろぼろになったある男の半生。
野良犬の履歴書。だからって
ごみ置き場にすてるわけにはいかない。
はじめに生年月日を書く。
つぎに名前は 名前はない?
5
虹の橋を渡ってやってくるのは
あさってぼくが書こうとしている詩。
書き出しがつぎの数行をつれて
砂塵舞い上がる空にはためく。
手をのばせばことばはつかむことができるか?
できはしない
ことばはものではないのだから。
6
虹の橋を渡ってやってくるのは
ひまわりによく似た幻想の花。
その花のふちに腰かけて
老いた数学者と盲目の哲学者が話し込んでいる。
もうずいぶん長いこと そうしている。
隣ではまだ若い絵描きが雨蛙のように鳴いて
やがて雨がやってくる。
7
虹の橋を渡ってやってくるのは
暮れ方の夕映えの一刷毛。
天空のノクターンがきみやぼくの胸を掻きむしる。
悩みは王のごとく
人びとを支配し
憂い顔の男や女が手をつないで
虹の橋を渡ってやってくる。