鹿島茂さんの本はこれまで5-6冊読んでいる。
イギリス文学なら丸谷才一さん、フランス文学なら鹿島さん。そのお二人を情報源として頼りにし、意識するようになったのはいつからだろう。
挿絵入りの本というものが世の中には存在する。その真の魅力を教えてくれたのが鹿島さんであった・・・と思う。
いつか数えたら「濹東綺譚(ぼくときたん)」の岩波文庫は5冊も手許にある。なぜかというと、BOOK OFFの100円コーナーにあったのを救いだしていたら、結果的に5冊集まってしまった(^ε^)
木村荘八の挿絵が素晴らしいからである。あの挿絵なしで「濹東綺譚(ぼくときたん)」の世界を想い浮かべることはできないといってもいいくらい。
あとは、澁澤龍彦さんにも、魅力的な挿絵入りの著書があったと記憶している。
わたしは最近、月に30冊ほど、金額にして2-3万円(多くても4万円)の本を買っているが、大方は近隣のBOOK OFFや古書店。
上限は1冊3千円あたりで、5千円を超えることはめったにない。
ところが、鹿島さんが本に支払う金額は、けた違いである。それも一桁どころではない。
本書は古書蒐集家としての苦労話を、かなりあけすけに書いたもので、雑誌「ユリイカ」に連載した記事が母体となり、単行本は1996年に青土社から刊行された。古書探索の舞台裏を赤裸々に書き留めている。こういう本は、これまで読んだことがない。
鹿島さんが蒐集の対象にしているのは、主としてフランスの挿絵入りの本。ご自分でおっしゃっているが、19世紀の挿絵本(イシュストレ・ロマンチック)の蒐集家なのである。
稀覯本や初版本には手は出していないということだが、驚くべき情熱をそそぎ、多大な借金までして本を買い漁っておられる。
わたしのように「クズ本」をではなく、モロッコ皮の上製本。この後ろに見えているのが、鹿島さんの蔵書。フランス語で書かれた、フランス製の書籍である。1冊数十万から数百万円もする本がずらずら(゚Д゚;)
古書を買うという名目では銀行は融資してくれない。借りられる金ならどんなことをしても借りてしまおうということで、ノンバンク、サラ金にまで手を出し、多重債務者として破産宣告寸前の淵に立たされたことすらあったようである。
古書のオークションにも参加するそうだから、プロの古本屋顔負け。むろん日本のではなく、フランスのオークション!
本書「子供より古書が大事と思いたい」を読みながら、わたしは完全に圧倒された。
こういった本は、元ネタというか、資料が必要なのである。図書館にいけばいいではないかとついかんがえてしまうが、それは貧乏人の発想。何千万、いや何億円もつぎ込んだからこその迫力である。
大学教師の給与や著作料ではとてもまかないきれないという。家庭の犠牲を顧みずにフランスへ出かけては古書を買う。古書を買うために渡仏しているのだ。その間のこまごましたエピソードが、本書の読みどころになっている。
本を書いて元をとってやろうなどとかんがえたら、バカバカしくてやっていられない。でもやめられない。
そういった“裏事情”をぶちまけている。
バブル景気の真っただ中、銀座・月光荘に勤めていた友人が、数千万の資金をふところにロシアへ渡り、絵画を買い漁った経験を語ってくれたことがある。それと同じようなことを、鹿島さんがやっていたわけだ。
内容紹介はこちらにお任せしよう。
《仏文学者の著者が、ある時『パリの悪魔』という本に魅せられ、以来19世紀フランスの古書蒐集にいかにのめりこんだか―。古書や挿絵芸術の解説からランクづけ、店の攻略法、オークション、購入のための借金の仕方まで、貴重な古書にまつわる様々な情報と、すべての蒐集家のための教訓が洒脱につづられる。》(BOOKデータベースより)
鹿島さんはあとがきで、自分は世にいう愛書趣味(ビブリオフィリー)の世界の住人ではないといっている。愛書家ではないが、コレクターであることは認める、と。
この「子供より古書が大事と思いたい」にも挿絵や写真がかなり使われている。
興味深いのはギュスターヴ・ドレの絵にはまったく食指を動かさないところだろう。ご自分の価値基準があって、趣味性と好みに徹しているから、世上の人気には左右されない。その点では徹底している。
本書によって、鹿島さんは講談社エッセイ賞を受賞しておられる。じつにたくさんの著書があり、フランス文学の第一人者といえば、現在ではこの人だろう。
鹿島さんの本は、探せば10冊あまり、あるいはそれ以上出てくるはず。フランス文学だけでなく、吉本隆明や渋沢栄一についても書いておられる。
とてもそれらすべてにはおつきあいできない。本とつきあうといっても、濃淡さまざま種々雑多、そのレベルに応じた景色が見えてくる(´ω`*)
そしてつぎにスタンバイさせてあるのはこちら。
ベンヤミンの「パサージュ」1~3巻と前後して読もうとかんがえている。
評価:☆☆☆☆
イギリス文学なら丸谷才一さん、フランス文学なら鹿島さん。そのお二人を情報源として頼りにし、意識するようになったのはいつからだろう。
挿絵入りの本というものが世の中には存在する。その真の魅力を教えてくれたのが鹿島さんであった・・・と思う。
いつか数えたら「濹東綺譚(ぼくときたん)」の岩波文庫は5冊も手許にある。なぜかというと、BOOK OFFの100円コーナーにあったのを救いだしていたら、結果的に5冊集まってしまった(^ε^)
木村荘八の挿絵が素晴らしいからである。あの挿絵なしで「濹東綺譚(ぼくときたん)」の世界を想い浮かべることはできないといってもいいくらい。
あとは、澁澤龍彦さんにも、魅力的な挿絵入りの著書があったと記憶している。
わたしは最近、月に30冊ほど、金額にして2-3万円(多くても4万円)の本を買っているが、大方は近隣のBOOK OFFや古書店。
上限は1冊3千円あたりで、5千円を超えることはめったにない。
ところが、鹿島さんが本に支払う金額は、けた違いである。それも一桁どころではない。
本書は古書蒐集家としての苦労話を、かなりあけすけに書いたもので、雑誌「ユリイカ」に連載した記事が母体となり、単行本は1996年に青土社から刊行された。古書探索の舞台裏を赤裸々に書き留めている。こういう本は、これまで読んだことがない。
鹿島さんが蒐集の対象にしているのは、主としてフランスの挿絵入りの本。ご自分でおっしゃっているが、19世紀の挿絵本(イシュストレ・ロマンチック)の蒐集家なのである。
稀覯本や初版本には手は出していないということだが、驚くべき情熱をそそぎ、多大な借金までして本を買い漁っておられる。
わたしのように「クズ本」をではなく、モロッコ皮の上製本。この後ろに見えているのが、鹿島さんの蔵書。フランス語で書かれた、フランス製の書籍である。1冊数十万から数百万円もする本がずらずら(゚Д゚;)
古書を買うという名目では銀行は融資してくれない。借りられる金ならどんなことをしても借りてしまおうということで、ノンバンク、サラ金にまで手を出し、多重債務者として破産宣告寸前の淵に立たされたことすらあったようである。
古書のオークションにも参加するそうだから、プロの古本屋顔負け。むろん日本のではなく、フランスのオークション!
本書「子供より古書が大事と思いたい」を読みながら、わたしは完全に圧倒された。
こういった本は、元ネタというか、資料が必要なのである。図書館にいけばいいではないかとついかんがえてしまうが、それは貧乏人の発想。何千万、いや何億円もつぎ込んだからこその迫力である。
大学教師の給与や著作料ではとてもまかないきれないという。家庭の犠牲を顧みずにフランスへ出かけては古書を買う。古書を買うために渡仏しているのだ。その間のこまごましたエピソードが、本書の読みどころになっている。
本を書いて元をとってやろうなどとかんがえたら、バカバカしくてやっていられない。でもやめられない。
そういった“裏事情”をぶちまけている。
バブル景気の真っただ中、銀座・月光荘に勤めていた友人が、数千万の資金をふところにロシアへ渡り、絵画を買い漁った経験を語ってくれたことがある。それと同じようなことを、鹿島さんがやっていたわけだ。
内容紹介はこちらにお任せしよう。
《仏文学者の著者が、ある時『パリの悪魔』という本に魅せられ、以来19世紀フランスの古書蒐集にいかにのめりこんだか―。古書や挿絵芸術の解説からランクづけ、店の攻略法、オークション、購入のための借金の仕方まで、貴重な古書にまつわる様々な情報と、すべての蒐集家のための教訓が洒脱につづられる。》(BOOKデータベースより)
鹿島さんはあとがきで、自分は世にいう愛書趣味(ビブリオフィリー)の世界の住人ではないといっている。愛書家ではないが、コレクターであることは認める、と。
この「子供より古書が大事と思いたい」にも挿絵や写真がかなり使われている。
興味深いのはギュスターヴ・ドレの絵にはまったく食指を動かさないところだろう。ご自分の価値基準があって、趣味性と好みに徹しているから、世上の人気には左右されない。その点では徹底している。
本書によって、鹿島さんは講談社エッセイ賞を受賞しておられる。じつにたくさんの著書があり、フランス文学の第一人者といえば、現在ではこの人だろう。
鹿島さんの本は、探せば10冊あまり、あるいはそれ以上出てくるはず。フランス文学だけでなく、吉本隆明や渋沢栄一についても書いておられる。
とてもそれらすべてにはおつきあいできない。本とつきあうといっても、濃淡さまざま種々雑多、そのレベルに応じた景色が見えてくる(´ω`*)
そしてつぎにスタンバイさせてあるのはこちら。
ベンヤミンの「パサージュ」1~3巻と前後して読もうとかんがえている。
評価:☆☆☆☆