二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

春の登場人物(ポエムNO.2-91)

2017年02月26日 | 俳句・短歌・詩集
槌音が聞こえる。
色とりどりの帽子をかぶった小人たちは一生懸命やっている。
さあ フクジュソウのつぎはスイセン
ウメ マンサクやジンチョウゲ
咲かせなくてはね つぎからつぎへと。
だから彼らは大忙し。

SEXYなかぐわしい香りにむせびながら
わたしはある夜
入り組んだ夢の岬から小舟に乗る。
巻かれたネジがゆっくりとほぐれていくように
住人たちの胸が開いて
そこから春がしのびこむ。

向こう岸へ渡っていく人に微笑み返ししながら
わたしは夢の中で粘土の櫓を漕ぐ 櫓を漕ぐ。
きみの眉のあたりをかすめて
キセキレイが飛んでいったね。
さあ遠慮なく ぼくの胸にもたれかかっておいで
春の豊饒の女神よ! 

八雲たつ利根のほとり
きみの乳がかすかな瀬音を響かせながら流れる地。
さあ ここへおいで女神よ
ぼくの腕の中へ。
畑では菜の花 ダイコンの花が風に揺れ
だれかが遠くで歌ったり くしゃみしたりしている。

春という名の愛がある。
あるいは愛という名の春があるといってもいいだろう。
槌音が聞こえる。
春をつくっているのは 小人ばかりじゃない。
ここではきみやぼくも 大事な使者であり登場人物
冬から春へとすすむ 作業現場のね。


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