あいかわらず寒さにめげて、本ばかり読んでいる。借りるということをしなくなったから、手に入れなければお話しにならない。というわけで、ヒマがあると、新刊書店や古書店、BOOK OFFで過ごす時間が長~くなっている(^^;)
はてさて、最近読んだ本の中から、備忘録的に3点選んで感想をしるしておこう。
■「資本主義という謎 『成長なき時代をどう生きるか』」水野和夫・大沢真幸(NHK出版新書)2013年刊
本書は経済学者と社会学者お二人の対談。
これほど緻密感の高い、ハイレベルかつスリリングな対談がじっさいにおこなわれたかどうか、多少疑問がある。おそらく、対談が終ったあと、相当加筆・修正がくわわっているだろう。
わたしは2Bの鉛筆をあちこちに常備していて、ここぞと感じたところには、カギ括弧を付したり、傍線を引いたりする。ページの角を折る人がいるけど、わたしはやらない。蛍光ペンや赤のボールペンを用いる人がまれにいる。だけど、そうしてしまうと、かりに古書店に陳列されていても、つぎに買う人はまずいない。
本書は近ごろになく、各ページごとに傍線だらけとなった知的興奮の一冊。
経済学者と気鋭の社会学者という組合わせが功を奏している。
・なぜ西洋で誕生したのか?
・法人の起源はどこにあるのか?
・キリスト教との関係は?
・「利子率革命」とは何か?
・国家との関係はどう変わるのか?
・「中国の時代」はくるのか?
・成長なき資本主義は可能なのか?
本書のテーマは、これらのINDEXに、ほぼ収斂される。経済学者、社会学者のあいだで、問題意識にずれがある。また当然ながら、お二人のいわば“思考の文脈”には差異がある。
読みどころといえば、そのあたりだろう。
この種の対談としては、極めて内容が濃い。わたしとしては現在望みうる、サイコーにおもしろかった本。
さて、日本人は、そしてわたしは「成長なき時代」をどう生きるのか、生きていったらいいのか!? われわれは、激動する時代のまさに転換期にあるのだ。自分の思考回路を編集し直し、日常生活を振り返る。そういった地平線へと、読者をつれていく。
日本の頭脳といえる二人が真剣をかざして対峙する秀逸な一冊。迷うことなく、五つ星を進呈させていただく(^^)/
評価:☆☆☆☆☆
■「世界システム論講義 ヨーロッパと近代世界」川北稔(ちくま学芸文庫)2016年刊(ただし、初版は2001年に刊行)
世界システムという考え方があるのは、柄谷行人さんの本に関心が芽生えたころから気が付いていた。いわゆる左翼史観でもないし、従来型の総花的な歴史認識でもない。
歴史学に、途方もない鳥瞰図をもち込み、社会学的な視点から世界を読み解いていく。
この潮流はフランスのフェルナン・ブローデルやマクニール、K・ポランニー、ウォーラーステインが伐り開いた、比較的新しい歴史学の新手法である。
ジャレド・ダイアモンドが書いた「銃・病原菌・鉄 1万3千年にわたる人類史の謎」が日本でベストセラーになったのは、2000~2001年ころ、わたしは上巻を読みかけたまま、中断しているが・・・。
時代の変遷・変転にあわせ、数百年、数千年にわたる人類の歴史を読みかえていく作業は、生半可な知力では歯が立たない、困難な領域に属する。
それが人類史の見方を、大幅に転換し、われわれにこれまでとは違った、輪郭鮮明な世界史の枠組みのを提示する。
この本「世界システム論講義 ヨーロッパと近代世界」は、ウォーラーステインの紹介者、大阪大学の川北稔さんが、主としてウォーラーステインに依拠しながら、世界システムについて語ったもの。
2001年に放送大学教育振興会というところから刊行されている。多少加筆・修正がくわえられているらしいが、ほとんどリメイク版といっていいようである。
内容は典型的な啓蒙の書、入門書であるが、なぜ17年もたってちくま学芸文庫に収録されたかというと、先駆的なわが国における「世界システム論」の本として見出されたからだろう。
巻末には30冊あまりの参考文献が列挙されている。ブローデルやウォーラーステインに近づくには少々敷居が高い・・・と思っている人のために書かれた概説書なのである。
したがって、「その先」が気になる読者にとっては本書はもの足らない。
入館ゲートからほんの数歩足を踏み入れただけで、つぎの展示室へ移っていく。「もっと詳しくお知りになりたい方はつぎの本をどうぞ」というわけである(?_?) そのため、索引をふくめ、262ページの薄い本に仕上がっている。
成立の事情からしてやむをえないことだが、初心者向けの世界システム論ガイドブック、略地図である。
著者の専門は、イギリス近代史。このあたりの文脈がわかりにくいため、数日前、川北さんの「イギリス近代史講義」(講談社現代新書)を買ってきて、昨夜から読みはじめた。世界システム論の観点から、なぜわれわれは欧米流のライフスタイルをよしとすることになったかを解明しているようである。
ブローデルやウォーラーステインを読みたいところだが、大部で高価なため、わたし的には腰が引けてしまっている。
考えてみると、「資本主義という謎 『成長なき時代をどう生きるか』」も、世界システム論である。いましばらくは、このつながりで手軽に読めそうな、足腰がしっかりした本を物色し、理解を深めていこう(^^♪
評価:☆☆☆☆
■「『ドイツ帝国』が世界を破滅させる 日本人への警告」エマニュエル・トッド(文春新書 2015年刊)
ご覧のように、たいへん刺激的なタイトル。Amazonには127件ものレビューがあるので、かなり売れ、読まれたのだろう。しかし、五つ星評価は3.5という数字。
わたしの評価も、ほぼそんなところ。
内容紹介には、つぎのように書かれている。
《冷戦終結と欧州統合が生み出した「ドイツ帝国」。EUとユーロは欧州諸国民を閉じ込め、ドイツが一人勝ちするシステムと化している。ウクライナ問題で緊張を高めているのもロシアではなくドイツだ。かつての悪夢が再び甦るのか?》
インターネットサイト等に掲載された8本のインタビューによって構成され、
1.ドイツがヨーロッパ世界を牛耳る
2.ロシアを見くびってはいけない
3.ウクライナと戦争の誘惑
4.ユーロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス
5.オランダよ、さらば! 銀行に支配されるフランス国家
6.ドイツとは何か?
7.富裕層に仕える国家
8.ユーロが陥落する日
・・・の8章からなっている。
外交官なら、あるいは商社マンならば耳をそばだてずにはおれない話題、てんこ盛りといっていい。
しかしながら、よくいうようだが、こういった時局的な発言は、賞味期限がとても短い。
それほど、国際政局の動きが速いということだ。
高い評価する人は「今の世界のパワーバランスがよくわかる」といった感想が中心。
EUに関心があり、新聞やCNNなどを読んでだり視たりしている人ならおもしろく読めるのだろう。
フランス人エマニュエル・トッドは、現代における“予言者”としてのおもかげがある。
この先、世の中はどうなっていくのか?
9.11や3.11を経験した人類は、予言者を欲し、トッドがそれに応えているという構図が透かし見える。
しかし、どこか扇動者、漫才師にも似ている。
トッド本人には、何の責任もないし、いざとなったら「アメリカへ逃げる」と公言してはばからない。根っからのドイツ嫌いである。ツッコミを入れておいて、ブラックリストに入るようなら、逃亡する。
つまり、それほどの危機感をもっているわけで、それが本書をおもしろくしている。
しかし、日本で田舎暮らしをしているわたしから眺めるEUは、かなり遠くの火事現場。
「ああ、そうか。そりゃたいへんだ」
そう思いながら、とりあえず野次馬の一人にくわわる・・・といったところ(^^;)
しかも、マスコミをあおるのがお好きとみえ、刺激的な言動が非常に多く、真偽がはっきりしない部分が眼につく。
いったいこういう書をどう評価すべきか、わたしは煙にまかれた田舎おやじ気分をたっぷりあじわった。
評価:☆☆☆
このほか、書店で立ち読みしただけ、あるいは数ページ読んで、あるいは斜め読みして、そのまま放置してある本が、二十数冊ある。
最後まで読める本、読みおえた本より、「いつかは読もう、読まねばなるまい」とかんがえている本の方がはるかに多いのはやむをえない・・・といっておこう(ノ_-。)
はてさて、最近読んだ本の中から、備忘録的に3点選んで感想をしるしておこう。
■「資本主義という謎 『成長なき時代をどう生きるか』」水野和夫・大沢真幸(NHK出版新書)2013年刊
本書は経済学者と社会学者お二人の対談。
これほど緻密感の高い、ハイレベルかつスリリングな対談がじっさいにおこなわれたかどうか、多少疑問がある。おそらく、対談が終ったあと、相当加筆・修正がくわわっているだろう。
わたしは2Bの鉛筆をあちこちに常備していて、ここぞと感じたところには、カギ括弧を付したり、傍線を引いたりする。ページの角を折る人がいるけど、わたしはやらない。蛍光ペンや赤のボールペンを用いる人がまれにいる。だけど、そうしてしまうと、かりに古書店に陳列されていても、つぎに買う人はまずいない。
本書は近ごろになく、各ページごとに傍線だらけとなった知的興奮の一冊。
経済学者と気鋭の社会学者という組合わせが功を奏している。
・なぜ西洋で誕生したのか?
・法人の起源はどこにあるのか?
・キリスト教との関係は?
・「利子率革命」とは何か?
・国家との関係はどう変わるのか?
・「中国の時代」はくるのか?
・成長なき資本主義は可能なのか?
本書のテーマは、これらのINDEXに、ほぼ収斂される。経済学者、社会学者のあいだで、問題意識にずれがある。また当然ながら、お二人のいわば“思考の文脈”には差異がある。
読みどころといえば、そのあたりだろう。
この種の対談としては、極めて内容が濃い。わたしとしては現在望みうる、サイコーにおもしろかった本。
さて、日本人は、そしてわたしは「成長なき時代」をどう生きるのか、生きていったらいいのか!? われわれは、激動する時代のまさに転換期にあるのだ。自分の思考回路を編集し直し、日常生活を振り返る。そういった地平線へと、読者をつれていく。
日本の頭脳といえる二人が真剣をかざして対峙する秀逸な一冊。迷うことなく、五つ星を進呈させていただく(^^)/
評価:☆☆☆☆☆
■「世界システム論講義 ヨーロッパと近代世界」川北稔(ちくま学芸文庫)2016年刊(ただし、初版は2001年に刊行)
世界システムという考え方があるのは、柄谷行人さんの本に関心が芽生えたころから気が付いていた。いわゆる左翼史観でもないし、従来型の総花的な歴史認識でもない。
歴史学に、途方もない鳥瞰図をもち込み、社会学的な視点から世界を読み解いていく。
この潮流はフランスのフェルナン・ブローデルやマクニール、K・ポランニー、ウォーラーステインが伐り開いた、比較的新しい歴史学の新手法である。
ジャレド・ダイアモンドが書いた「銃・病原菌・鉄 1万3千年にわたる人類史の謎」が日本でベストセラーになったのは、2000~2001年ころ、わたしは上巻を読みかけたまま、中断しているが・・・。
時代の変遷・変転にあわせ、数百年、数千年にわたる人類の歴史を読みかえていく作業は、生半可な知力では歯が立たない、困難な領域に属する。
それが人類史の見方を、大幅に転換し、われわれにこれまでとは違った、輪郭鮮明な世界史の枠組みのを提示する。
この本「世界システム論講義 ヨーロッパと近代世界」は、ウォーラーステインの紹介者、大阪大学の川北稔さんが、主としてウォーラーステインに依拠しながら、世界システムについて語ったもの。
2001年に放送大学教育振興会というところから刊行されている。多少加筆・修正がくわえられているらしいが、ほとんどリメイク版といっていいようである。
内容は典型的な啓蒙の書、入門書であるが、なぜ17年もたってちくま学芸文庫に収録されたかというと、先駆的なわが国における「世界システム論」の本として見出されたからだろう。
巻末には30冊あまりの参考文献が列挙されている。ブローデルやウォーラーステインに近づくには少々敷居が高い・・・と思っている人のために書かれた概説書なのである。
したがって、「その先」が気になる読者にとっては本書はもの足らない。
入館ゲートからほんの数歩足を踏み入れただけで、つぎの展示室へ移っていく。「もっと詳しくお知りになりたい方はつぎの本をどうぞ」というわけである(?_?) そのため、索引をふくめ、262ページの薄い本に仕上がっている。
成立の事情からしてやむをえないことだが、初心者向けの世界システム論ガイドブック、略地図である。
著者の専門は、イギリス近代史。このあたりの文脈がわかりにくいため、数日前、川北さんの「イギリス近代史講義」(講談社現代新書)を買ってきて、昨夜から読みはじめた。世界システム論の観点から、なぜわれわれは欧米流のライフスタイルをよしとすることになったかを解明しているようである。
ブローデルやウォーラーステインを読みたいところだが、大部で高価なため、わたし的には腰が引けてしまっている。
考えてみると、「資本主義という謎 『成長なき時代をどう生きるか』」も、世界システム論である。いましばらくは、このつながりで手軽に読めそうな、足腰がしっかりした本を物色し、理解を深めていこう(^^♪
評価:☆☆☆☆
■「『ドイツ帝国』が世界を破滅させる 日本人への警告」エマニュエル・トッド(文春新書 2015年刊)
ご覧のように、たいへん刺激的なタイトル。Amazonには127件ものレビューがあるので、かなり売れ、読まれたのだろう。しかし、五つ星評価は3.5という数字。
わたしの評価も、ほぼそんなところ。
内容紹介には、つぎのように書かれている。
《冷戦終結と欧州統合が生み出した「ドイツ帝国」。EUとユーロは欧州諸国民を閉じ込め、ドイツが一人勝ちするシステムと化している。ウクライナ問題で緊張を高めているのもロシアではなくドイツだ。かつての悪夢が再び甦るのか?》
インターネットサイト等に掲載された8本のインタビューによって構成され、
1.ドイツがヨーロッパ世界を牛耳る
2.ロシアを見くびってはいけない
3.ウクライナと戦争の誘惑
4.ユーロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス
5.オランダよ、さらば! 銀行に支配されるフランス国家
6.ドイツとは何か?
7.富裕層に仕える国家
8.ユーロが陥落する日
・・・の8章からなっている。
外交官なら、あるいは商社マンならば耳をそばだてずにはおれない話題、てんこ盛りといっていい。
しかしながら、よくいうようだが、こういった時局的な発言は、賞味期限がとても短い。
それほど、国際政局の動きが速いということだ。
高い評価する人は「今の世界のパワーバランスがよくわかる」といった感想が中心。
EUに関心があり、新聞やCNNなどを読んでだり視たりしている人ならおもしろく読めるのだろう。
フランス人エマニュエル・トッドは、現代における“予言者”としてのおもかげがある。
この先、世の中はどうなっていくのか?
9.11や3.11を経験した人類は、予言者を欲し、トッドがそれに応えているという構図が透かし見える。
しかし、どこか扇動者、漫才師にも似ている。
トッド本人には、何の責任もないし、いざとなったら「アメリカへ逃げる」と公言してはばからない。根っからのドイツ嫌いである。ツッコミを入れておいて、ブラックリストに入るようなら、逃亡する。
つまり、それほどの危機感をもっているわけで、それが本書をおもしろくしている。
しかし、日本で田舎暮らしをしているわたしから眺めるEUは、かなり遠くの火事現場。
「ああ、そうか。そりゃたいへんだ」
そう思いながら、とりあえず野次馬の一人にくわわる・・・といったところ(^^;)
しかも、マスコミをあおるのがお好きとみえ、刺激的な言動が非常に多く、真偽がはっきりしない部分が眼につく。
いったいこういう書をどう評価すべきか、わたしは煙にまかれた田舎おやじ気分をたっぷりあじわった。
評価:☆☆☆
このほか、書店で立ち読みしただけ、あるいは数ページ読んで、あるいは斜め読みして、そのまま放置してある本が、二十数冊ある。
最後まで読める本、読みおえた本より、「いつかは読もう、読まねばなるまい」とかんがえている本の方がはるかに多いのはやむをえない・・・といっておこう(ノ_-。)