庭石の下のすきまから、
一匹の雨蛙が のそりと 姿をあらわす。
しばらく見ていると もう一匹。
三匹めは ぴょんぴょん跳ねて出てきた。
三兄弟は似ているようで 少し違う。
のびをしたり 空を眺めたり。
きみはなんのために そこにいる?
意味なんて知るわけはない。
生まれてきたから ここにいる。
自分が雨蛙と呼ばれていることも むろん知らない。
なんにも知らない。
なーんにも ね。
オタマジャクシだったころの「思い出」。
それは・・・それだけは 遺伝子のような装置として 体のどこかに
きっとたくわえられているはず。
*
ポツン と そこにいる。
池水がぴしゃんと音をたてる。
濁った水面から ふたつの目玉が飛び出していたりする。
きみらも夢をみるんだろうか。
悪夢や春夢 あるいは
巨大なラピスラズリをつけたアラビアの王侯貴族がみた夢や、
コペンハーゲンの凍えるような街路でマッチ売りの少女がみた夢。
・・・のような 夢。
夕べわたしの夢の中では
一匹の雨蛙がモズに補食され 八つ裂きにされた。
それを黙って眺めている仲間たち。
むろん きみたちは自分の運命をなげいたり くやんだりしない。
*
わが庭で 雨蛙の一匹が
奇想天外なしぐさで ガラス戸にぺたりとくっついている。
そのまま5分たっても 10分たっても動かない。
いる場所によって 体表には いろいろな色があらわれる。
その場に溶け込むことにかけては天才なのだ。
存在を消す。
かぎりなく 自分の存在感をうすめていく。
保護色にかくされているのは 生存の智慧である。
空に充ちみちている 真っ青な空虚。
数百キロの彼方からやってくる 無色透明な風。
・・・に似せて。
雨蛙はなにも語らない。
地球はたぶん 雨蛙と人間を区別なんかしていない。
差別・・・といってもいいけれど。
個性なんてもたず 社会はつくらず。
一匹の雨蛙が のそりと 姿をあらわす。
しばらく見ていると もう一匹。
三匹めは ぴょんぴょん跳ねて出てきた。
三兄弟は似ているようで 少し違う。
のびをしたり 空を眺めたり。
きみはなんのために そこにいる?
意味なんて知るわけはない。
生まれてきたから ここにいる。
自分が雨蛙と呼ばれていることも むろん知らない。
なんにも知らない。
なーんにも ね。
オタマジャクシだったころの「思い出」。
それは・・・それだけは 遺伝子のような装置として 体のどこかに
きっとたくわえられているはず。
*
ポツン と そこにいる。
池水がぴしゃんと音をたてる。
濁った水面から ふたつの目玉が飛び出していたりする。
きみらも夢をみるんだろうか。
悪夢や春夢 あるいは
巨大なラピスラズリをつけたアラビアの王侯貴族がみた夢や、
コペンハーゲンの凍えるような街路でマッチ売りの少女がみた夢。
・・・のような 夢。
夕べわたしの夢の中では
一匹の雨蛙がモズに補食され 八つ裂きにされた。
それを黙って眺めている仲間たち。
むろん きみたちは自分の運命をなげいたり くやんだりしない。
*
わが庭で 雨蛙の一匹が
奇想天外なしぐさで ガラス戸にぺたりとくっついている。
そのまま5分たっても 10分たっても動かない。
いる場所によって 体表には いろいろな色があらわれる。
その場に溶け込むことにかけては天才なのだ。
存在を消す。
かぎりなく 自分の存在感をうすめていく。
保護色にかくされているのは 生存の智慧である。
空に充ちみちている 真っ青な空虚。
数百キロの彼方からやってくる 無色透明な風。
・・・に似せて。
雨蛙はなにも語らない。
地球はたぶん 雨蛙と人間を区別なんかしていない。
差別・・・といってもいいけれど。
個性なんてもたず 社会はつくらず。