酔って歩く。
酔って歩く。
あの人の夢の中から
この人の夢の中へと。
腰が曲がったじいさんのように堂々と
乳房がふくらみかけた少女のようにおずおずと。
酔って歩くおれに
世間の風はいたって冷たい。
電柱の陰でたばこを吸っていると
アヒルのように口が大きな猫や
セミのようににぎやかな蟻の楽隊がやってくる。
酔って歩く。
酔って歩く。
あの人の夢の中から出て
この人の夢の中へ入っていく。
黄昏酒場にはエレジーが
老いた酔いどれには演歌がよく似合うね。
「やあ なにをしている?」
「きみはドナルドだね ドナルドダック」
「いやー 横町のどら猫さ」
「どらえもんじゃなくて?」
「どら猫 ただのどら猫」
猫の後ろから別な猫の顔がのぞく。
酔って歩く。
酔って歩く。
あの人の夢を隣家の庭に葬り
この人の夢をカクテルグラスでつくるため。
にゃーご
にゃーご こんばんは。
「あんた 自分の夢をだれに盗まれたの?」
猫が笑う
「猫が笑うなんて」 とおれがいう。
「猫だって笑うさ 犬のように」
おれの家はこんなに遠かったろうか。
くねくね曲がった坂を下り
意外なほどまっすぐな坂を登っていく。
息をぜいぜい切らして。
酔って歩く。
酔って歩く。
あの人の夢を調理し
この人の夢をカバに食わせるため。
にゃーご にゃーご。
いやに猫が多いのは
ここらあたりに 昔
猫町があったせいだろう。
柘榴色の猫や 蘭茶の猫
薄浅黄の猫 若紫の猫もいる。
まるでばあさんの衣裳箪笥をひっくり返したように。
にゃーごにゃごにゃご
こんばんは こんばんは。
酔って歩く。
酔って歩く。
「青春」というどこにでもあるありふれたスナックをあとにし
はや四十年。
はしご酒ばかりしてきたが
いまだどこにも辿り着かないってのはどうしてだ?
どうしてだろう。
アヒルみたいな猫ばかりいるこの路地を抜けたところが
そう・・・おれの家だったと思い出す。
いましばらくの辛抱さ。
さて蟻の楽隊はどの坂道へ消えたろう?
酔って歩く。
酔って歩く。
酔って歩く。
あの人の夢の中から
この人の夢の中へと。
腰が曲がったじいさんのように堂々と
乳房がふくらみかけた少女のようにおずおずと。
酔って歩くおれに
世間の風はいたって冷たい。
電柱の陰でたばこを吸っていると
アヒルのように口が大きな猫や
セミのようににぎやかな蟻の楽隊がやってくる。
酔って歩く。
酔って歩く。
あの人の夢の中から出て
この人の夢の中へ入っていく。
黄昏酒場にはエレジーが
老いた酔いどれには演歌がよく似合うね。
「やあ なにをしている?」
「きみはドナルドだね ドナルドダック」
「いやー 横町のどら猫さ」
「どらえもんじゃなくて?」
「どら猫 ただのどら猫」
猫の後ろから別な猫の顔がのぞく。
酔って歩く。
酔って歩く。
あの人の夢を隣家の庭に葬り
この人の夢をカクテルグラスでつくるため。
にゃーご
にゃーご こんばんは。
「あんた 自分の夢をだれに盗まれたの?」
猫が笑う
「猫が笑うなんて」 とおれがいう。
「猫だって笑うさ 犬のように」
おれの家はこんなに遠かったろうか。
くねくね曲がった坂を下り
意外なほどまっすぐな坂を登っていく。
息をぜいぜい切らして。
酔って歩く。
酔って歩く。
あの人の夢を調理し
この人の夢をカバに食わせるため。
にゃーご にゃーご。
いやに猫が多いのは
ここらあたりに 昔
猫町があったせいだろう。
柘榴色の猫や 蘭茶の猫
薄浅黄の猫 若紫の猫もいる。
まるでばあさんの衣裳箪笥をひっくり返したように。
にゃーごにゃごにゃご
こんばんは こんばんは。
酔って歩く。
酔って歩く。
「青春」というどこにでもあるありふれたスナックをあとにし
はや四十年。
はしご酒ばかりしてきたが
いまだどこにも辿り着かないってのはどうしてだ?
どうしてだろう。
アヒルみたいな猫ばかりいるこの路地を抜けたところが
そう・・・おれの家だったと思い出す。
いましばらくの辛抱さ。
さて蟻の楽隊はどの坂道へ消えたろう?
酔って歩く。
酔って歩く。