二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

藤原新也の現在

2012年02月15日 | Blog & Photo


藤原新也が「四国遍土」を「アサヒカメラ」誌上に連載したのは、1979年。
そのときの鮮やかな登場ぶりと、わたしがうけた衝撃を、いまでもよく覚えている。
「写真でこんなことができるのか!」
わたしの奥のほうに眠っている、ご先祖からつたわった遺伝子のようなものが、眼を覚ます音。骨と骨がぶつかりあって立てる音や、人の・・・男や女の肉がこすれあい、よじれあってにおってくる、なつかしい香り。四国を題材にえらんで、あのときたしかに、藤原さんは、日本という風土のど真ん中を撃ち抜いていた。
彼がすでに「印度放浪」の写真家として、正当に評価されているのは知らなかったのである。
その後藤原さんは、「全東洋街道」の旅に出て、まもなく「月刊PLAYBOY」にその連載がはじまる。

私見によれば、現代の日本の写真界には、三人の巨星がいる。
森山大道、荒木経惟、そして藤原新也である。
この三人の影響力は圧倒的で、現代の写真家はすべて、この三人の影の下で仕事をしている・・・といっていいだろう。なにがそんなにすごいかを、一口でいうのはむずかしいが、彼らの写真展や写真集やその他の著作が、すべて「作家的な」活動の所産だからである。
つまり、そこにあるのは、彼ら写真家の世界観の表明、人生観の表明なのである。当然ながら、その一枚一枚が、彼らのいわばライフスタイルから生み出されたものなのである。

さっきググって記憶と照合してみたら、わたしは、藤原さんの著作を16冊もっている。
熱心に読んだ本もあるし、そうでないものもある。はっきりいえば、さほど忠実なファンではない。しかし「出会いの衝撃」は、いまも尾を曳いている。
「四国遍土」をも収めてリメイクされた「メメント・モリ」などは、あまり何度も見返したので、正直いって、いくらかウンザリしているくらいである(^^;)

売れているのかどうかはわからないけれど、まもなく70歳となる藤原さんは、いまも活発に仕事をし、本を出している。わたしの友人には、藤原さんの大ファンと称する男性がいて、写真展やサイン会にまめに出かけていた。

ググってみたら、こんなサイトを発見!!
☆デジカメWacth「Photographer's File #8」
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/20111111_490259.html
「ははあー、なんだ、なんだAV女優を抱きしめているぞ(*_*)」
「おや、RICH GXRのライカマウントを使っているのか??」
ある時期はシリアスな思想家としての片鱗もみられた藤原さんだが、ここへきて、悠々として自在に撮影し、語り、書きつづける稀有な存在としての輝きは、むしろましているようである。

昨年秋には「書行無常」展が大々的なイベントとして開催されていたのである。
もう終わってしまったけれど。
http://www.fujiwarashinya.com/shogyomujo/

トップにあげたのは、昨日買ってきた「日本浄土」と、お気に入りの一冊「少年の港」。
最近は以前ほど藤原さんの写真を見かけなくなったとおもっていたが、それは単なるわたしの怠慢であるらしい。
「日本浄土」は、藤原さんらしいドライさ、ウエットさが、明暗もくっきりと映し出され、
「あー、ここにあるのはまさに藤原節だなあ」とおもいながら、この一冊に触発されて、「印度放浪」から「書行無常」への足どりが、いま、ふたたび気になりはじめた。
「俗界富士」と「南島街道」は力作なので、多少無理をして(予算的に)手に入れておくべきだったと、いまになって後悔もしている。


最後に、最近作から2枚をピックアップしておこう。


「雨降る夜に」



「仏壇屋のある交差点」

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