使い古した雑巾みたいな夢。
それで今日という見なれぬ貨幣を磨いて
あの色つやが戻ってくるとでも思っているのか。
錆びたことばの釘がささったまま抜けない生活をつづけながら
私生活の中のドナルド・ダックを眺めている。
モーツアルトとウィスキーと百冊の本。
それだけあれば一週間はご機嫌でいられる。
とりあえずは。
串カツにはさまったネギはおいしいねぇ
なんて独り言つぶやいたりしながら。
蟻の生活とよく似た青春が過ぎ
エアコンを使わない猛暑の夏が過ぎ
人にはわかってもらえない歯痛のような仕事が過ぎ
いまきみはよろよろした冬の蠅と仲良しになっている。
余計なことはしゃべらない。
夢を端切れのようにつなぎあわせて織り上げた衣服にくるまれて
ドナルド きみはきっといい気持ちなんだろうね。
昨日は飲み残したブラックコーヒーさ。
よく顔をしかめながら
最後のひと口を飲み干していたね。
余計なことはしゃべりたくはないけど
どこもかしこも坂道だらけ。
坂があったから登ろうとしたんだ。
二度 三度と転げ落ちもしたけれど。
そのときの疵がときおり痛むから
顔をしかめながら毎朝歯を磨いているドナルド。
よく似ているねえ
そっくりだよ
とぼくは自分に向かっていってみる。
それからさ 口をすすぐのは。