二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

白い椅子のある風景

2011年05月18日 | Blog & Photo
だれかがここへ座って、庭を眺めていたことがある。
あれからもう、二年がすぎて、庭は荒れ放題。
椅子はあの人の体の重みを知っている。

雨風がいくたびとなく吹いてすぎた。
大地が大揺れにゆれた。
気まぐれなモンシロチョウがきて、
数分間うたた寝をしたことがあった。
容赦ない灼熱の太陽が、ジリジリと照りつけた。

「わたしは自分からは動けない。
どうか、わたしをどこかに運んで」
「そこがあんたにぴったりなのさ。
ほらほら、初老のカメラマンがきて、
あんたの姿をねらっている。
そこが、あんたにお似合いだとさ」

スズメたちがきて、白い椅子をからかっていく。

つぎに、いつ、
だれがきてここに腰をおろすのだろう。
白い椅子にはちゃんとわかっている。
あの人が、もう、決してもどってはこないことを。
自分が据えた、椅子が、あのときのまま、あの庭に置いてある・・・、
そのことを、なつかしく思い出すだろう、ということを。


一枚の写真を眺めているうちに、一編の詩(・・・のようなもの)ができたので、掲載しておこう。
白い椅子のある風景や、街に咲く花々。
ネイチャーではなく、こうして――ソシアル・ランドスケープとしておつきあいするのが、なんともいい風情である。季節をいろどるさまざまな花。「その場所」に、通行人が眼をとめて通っていく。
花を愛し、タネを播き、苗を植えて、手入れをしている人がいるのだ。











いいなあ、こんな街角。
何度となく、じっと見つめていると、耳の奥で、音楽のようなものが聞こえてくる。
風の音。土のにおい。
昔愛した女の肌のうるおい。
愛犬ムクとじゃれあいながら踏んづけてしまった、あの日、あの畦のヒメジオン。
驚いたベニシジミが数頭、ぱあっと舞い上がって、どこへともなく消えていった日の遠い記憶。

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