二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

哲学って、そもそも何だろう?

2018年11月21日 | 哲学・思想・宗教
  (竹田青嗣「自分を知るための哲学入門」ちくま学芸文庫)


こんなにわかりやすい哲学の入門書があったとは!
いまから十数年前に出会っていたら、山でいうなら四合目、五合目あたりまで登っていただろう(^○^)/タハハ

裏表紙のキャッチコピーに、つぎのように書いてある。
《哲学とは自分を深く知るための、他者とほんとうに関わるための、もっともすぐれた技術(アート)なのだ。哲学の読みどころをきわめて親切に平易に、とても大胆に元気にとらえなおした斬新な入門書。もちろんプラトンもデカルトもカントもヘーゲルもニーチェもフッサールもハイデガーも大物はみな登場。この一冊で哲学がはじめてわかる。》

わたしは書店であれこれ物色しながら数ページ立ち読みするクセがある。
本書もそういった散歩で出会った一冊。
これほど平易に表現された、読みやすい哲学書は、そう滅多にないだろう。しかも勘所ははずしていない。大学の教養課程で講義を受け持ったら、人気教授になること請け合いといってみたくなる。

名前だけは知っていたけど、竹田青嗣さんの著書は、これがはじめて。
木田元先生のような人が本物の哲学者だと思っていたから、「自己流の人だろうな」と敬遠していた。専門家ではなく、独学で哲学を学んだ人だし、外国語が苦手らしく、ニーチェにせよ、フッサールにせよ、すべて日本語に基づいて研究している。
しかし、そういう装いはあるにせよ、単なる“紹介者”のレベルにとどまっているような人ではない・・・とわたしは見た。

じつに平易で論旨が明快なので、途中でつっかえたり読み直したりすることなく、すらすら読めた。
論旨の明快さでは、木田先生の上をいくし、1947年生まれなので、世代的にわたしに近い。70年安保世代、全共闘世代である。そういう世代が生み出した、新たな哲学の研究家といっていいだろう。

一時期もてはやされた、フランスの現代思想、ポスト構造主義(フーコーやデリダやドゥルーズ)も視野におさめている。
誇大妄想狂にしか思えなかったニーチェなんかも、この人に手にかかると、不思議な魅力を発光してくる(^^♪



木田先生の「わたしの哲学入門」(講談社学術文庫)。
こちらを先に読みはじめたのだが、いやはや、歯ごたえ十分、いままでの木田先生の本では、一番むずかしいので、途中下車し、「自分を知るための哲学入門」を手に取ったという順になる。
木田さんはハイデガーの、竹田さんはフッサールの系統を継ぐ研究者といっていいだろう。
基本路線としては、啓蒙の書。
とはいえ、ある程度読書の訓練を積んだ読者なら、“思想の核心を射抜いているか否か”は、読み通せばおおよそ見当がつく。

哲学なんて無用の長物。
知らなくても、まったく生活には困らない。しかも、考えれば考えるほど迷路にはまっていく。
日本人の大半はそう思っている(^^;) わたしもその一人だから。
哲学者、思想家というジャンルも、詩人と同じで、一人ひとりぜんぶ違うことをいっている。科学者、科学的思考と一番違うのは、統一見解、正解がない世界のことばの織物であること。
だから、彼らの社会的立場や個性や、時代背景を生々しく反映している。

詩人と違うのは、哲学者が相手にしているのは、手でさわることも、眼で見ることもできない抽象的なことばの世界の住人だということだろう。
経験的にいうなら、哲学の場合は、基礎知識、基礎訓練が必須。思考の足腰をある程度鍛えたうえでないと、近づくことはできない。

本書はプラトン、アリストテレス等のギリシャ哲学から、いきなり近代の哲学者に飛んでいる。中世がキリスト教支配、その宗教的ドグマが、西洋世界をくまなく覆っていたから、それらは哲学の命題ではなく、宗教学の命題だと見極めたからに違いない。
近代はデカルト、スピノザあたりからはじまる。

本書は哲学って、そもそも何だろう・・・と思っている初学の読者にはおすすめの一冊。
こういう場所から登坂路を見つけ、高山へとよじ登って、いままで経験したことのない景観を手に入れる。
そういうひそかな野心がわたしにはあるのだけれど、行く手はかなり険しいものがある。





こんな本も用意しているが・・・。
しかし、日本ほどすぐれた翻訳書にめぐまれている国は、そう多くはないだろう。だから外国語の苦手な竹田さんに、こういう本が書けるのだ(=_=)
この事実を、戒めとして、一歩一歩いけるところまでいってみよう♪
いつまでたっても「入門書どまりじゃねえか」という懼れがなくはないのだが(笑)。

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