■植木雅俊「法華経とは何か その思想と背景」中公新書(2020年刊)
本書の構成はつぎのようになっている。
1.「法華経」の基礎知識 インドで生まれ、中国から各地に伝えられた経典
2.「法華経」前夜の仏教 原始仏教から小乗、そして大乗の興起へ
3.「法華経」各章の思想
4.「法華経」の人間主義 “偉大な人間”とは誰のことか
スタートはわくわくもの、法華経研究の最前線をのぞき見る思いがした。植木雅俊さんは、1951年生まれ。中村元さんの直接的な教え子となるようだ。中村さんの著作からの引用が多く、学問的な基礎がそこにあったのが推測できる。
どの本で法華経を読むのか・・・は、それだけで、大きな問題をふくんでいるという。
現行の岩波文庫版には、500か所もの間違いがあるそうである。
植木さんは「ケルン・南条本」に基づいて法華経の現代語訳を完成している。翻訳の過程で厳密にテキストクリティークがおこなわれた。植野さんの博識ぶりは語源探索として、あらゆる部分に浸透し、生かされている。
サンスクリット原典からの現代語訳が岩波書店から、またさらに簡便な縮刷版が、角川文庫からサンスクリット版縮約(ソフィア文庫)として出ている。
さらにNHK100分de名著に、「法華経」がある。そのほか、法華経に関する多くの著作をこれまで刊行。
現代における、法華経研究の第一人者ということになるのだろう。
わたしは本書によって、「法華経」と一口にいっても、つぎの各章は後年に追加・付加されたものだ・・・ということをはじめて知った。
第12:提婆達多品(だいばだったほん)
第26:陀羅尼品(だらにほん)
第23:薬王菩薩本事品(やくおうぼさつほんじほん)
第24:妙音菩薩品(みょうおんぼさつほん)
第25:観世音菩薩普門品(かんぜおんぼさつふもんぼん)(観音経)
第27:妙荘厳王本事品(みょうしょうごんのうほんじほん)
第28:普賢菩薩勧発品(ふげんぼさつかんぼつほん)
観音経として一般に普及している部分も、あとからの付加だそうである。
本書は第1章、第2章は客観的で、すばらしい説得力がある。
法華経本文は長いし、くり返しが多いので、いくら現代語訳であったとしても、通読するのはなかなかの難行。
しかし、本書の第3章『「法華経」各章の思想』から、雰囲気ががらりと変わる。
「う~ん、お説ごもっともだといってもいいけど、これって痘痕も靨の論法じゃないんですか」
つまり贔屓の引き倒しといって、みたくなる説明が、各所に顔を出す(゚ω、゚)
日蓮を筆頭に「法華経」の信者は、ファナティックになる人がしばしば存在するからなあ。
ビギナー向けのガイドブックではない。腰を据えた真っ向勝負の「法華経論」である。
しかし、植木さんは、大雑把にいって人文科学的な観点に立つ現代の研究者なので、あとの時代に付加された経典に対しては、厳しい率直な批判を向けている。
独立してそれだけ読誦されることの多い「観音経」など、現世利益の書としてこてんぱんにやっつけているのだ(゚Д゚;)タハハ
鎌田茂雄さんの「法華経を読む」が手許にあるが、こういう漢訳だけを参照した旧来型の「法華経」研究を一新したといっていいのではないか? とはいえ植木雅俊さん、研究者というより、法華経の信者なのかもしれない。
第4章の「法華経の人間主義」を読みながら、そういった感想を抱いた。1951年のお生まれで、中村元博士の教え子。時代の刻印としてのメンタリティーが、随所に顔をのぞかせている。
また「法華経」に関しては、手許にもう一冊こういう本があるが、こちらはビギナー向けのガイドブックに徹している(まだ読み終えていないが)。
評価:☆☆☆☆
■瓜生中「よくわかる真言宗」
これはおもしろかった。「真言宗」の小百科といってもいい。しかもポケットサイズ。基本知識を習得するには、お役立ち度最高の一冊といえるかもしれない。
以前から知りたかった“不動明王”について、納得のできる説明をはじめて聞いたような気がする。
ただ、資料として使うには図版や写真がもっとあったほうがありがたかった。
まあ、そういう本は、ほかにいくらもあるのだが・・・。
評価:☆☆☆☆
本書の構成はつぎのようになっている。
1.「法華経」の基礎知識 インドで生まれ、中国から各地に伝えられた経典
2.「法華経」前夜の仏教 原始仏教から小乗、そして大乗の興起へ
3.「法華経」各章の思想
4.「法華経」の人間主義 “偉大な人間”とは誰のことか
スタートはわくわくもの、法華経研究の最前線をのぞき見る思いがした。植木雅俊さんは、1951年生まれ。中村元さんの直接的な教え子となるようだ。中村さんの著作からの引用が多く、学問的な基礎がそこにあったのが推測できる。
どの本で法華経を読むのか・・・は、それだけで、大きな問題をふくんでいるという。
現行の岩波文庫版には、500か所もの間違いがあるそうである。
植木さんは「ケルン・南条本」に基づいて法華経の現代語訳を完成している。翻訳の過程で厳密にテキストクリティークがおこなわれた。植野さんの博識ぶりは語源探索として、あらゆる部分に浸透し、生かされている。
サンスクリット原典からの現代語訳が岩波書店から、またさらに簡便な縮刷版が、角川文庫からサンスクリット版縮約(ソフィア文庫)として出ている。
さらにNHK100分de名著に、「法華経」がある。そのほか、法華経に関する多くの著作をこれまで刊行。
現代における、法華経研究の第一人者ということになるのだろう。
わたしは本書によって、「法華経」と一口にいっても、つぎの各章は後年に追加・付加されたものだ・・・ということをはじめて知った。
第12:提婆達多品(だいばだったほん)
第26:陀羅尼品(だらにほん)
第23:薬王菩薩本事品(やくおうぼさつほんじほん)
第24:妙音菩薩品(みょうおんぼさつほん)
第25:観世音菩薩普門品(かんぜおんぼさつふもんぼん)(観音経)
第27:妙荘厳王本事品(みょうしょうごんのうほんじほん)
第28:普賢菩薩勧発品(ふげんぼさつかんぼつほん)
観音経として一般に普及している部分も、あとからの付加だそうである。
本書は第1章、第2章は客観的で、すばらしい説得力がある。
法華経本文は長いし、くり返しが多いので、いくら現代語訳であったとしても、通読するのはなかなかの難行。
しかし、本書の第3章『「法華経」各章の思想』から、雰囲気ががらりと変わる。
「う~ん、お説ごもっともだといってもいいけど、これって痘痕も靨の論法じゃないんですか」
つまり贔屓の引き倒しといって、みたくなる説明が、各所に顔を出す(゚ω、゚)
日蓮を筆頭に「法華経」の信者は、ファナティックになる人がしばしば存在するからなあ。
ビギナー向けのガイドブックではない。腰を据えた真っ向勝負の「法華経論」である。
しかし、植木さんは、大雑把にいって人文科学的な観点に立つ現代の研究者なので、あとの時代に付加された経典に対しては、厳しい率直な批判を向けている。
独立してそれだけ読誦されることの多い「観音経」など、現世利益の書としてこてんぱんにやっつけているのだ(゚Д゚;)タハハ
鎌田茂雄さんの「法華経を読む」が手許にあるが、こういう漢訳だけを参照した旧来型の「法華経」研究を一新したといっていいのではないか? とはいえ植木雅俊さん、研究者というより、法華経の信者なのかもしれない。
第4章の「法華経の人間主義」を読みながら、そういった感想を抱いた。1951年のお生まれで、中村元博士の教え子。時代の刻印としてのメンタリティーが、随所に顔をのぞかせている。
また「法華経」に関しては、手許にもう一冊こういう本があるが、こちらはビギナー向けのガイドブックに徹している(まだ読み終えていないが)。
評価:☆☆☆☆
■瓜生中「よくわかる真言宗」
これはおもしろかった。「真言宗」の小百科といってもいい。しかもポケットサイズ。基本知識を習得するには、お役立ち度最高の一冊といえるかもしれない。
以前から知りたかった“不動明王”について、納得のできる説明をはじめて聞いたような気がする。
ただ、資料として使うには図版や写真がもっとあったほうがありがたかった。
まあ、そういう本は、ほかにいくらもあるのだが・・・。
評価:☆☆☆☆