二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

21世紀研究会編「イスラームの世界地図」(文春新書2002年刊)レビュー

2019年12月31日 | 哲学・思想・宗教
想像以上におもしろかった!!
イスラームの宗教、歴史を超初心者にわかりやすく解説。
イスラームに関する本はこれまで数冊読んだ経験がある。その中において、一頭群を抜く。痒いところに手が届くといった、具体的な記述、図版、写真がうまく配されている。
「こういう本が読みたかった」といいたくなる一冊であった。

刊行されてから18年あまりたっているため、ISなどは登場しないし、情報的には賞味期限が切れてしまっている部分がないとはいえない。
しかし、それを補ってあまりある出来映え(^^)/
国際ニュースで連日のように中東問題、イランへの制裁、アフガンの紛争、各国で頻発するテロが報道される。先日はアフガンで殺害された医師のニュースが、日本を駆けめぐったばかり(~o~)

そのとき「あなたはイスラームについて、どのように、どの程度理解していますか!?」
むろん、理解が足りないから、知りたいと思っていたのだ。歴史の本ではないが、並の通史などを読むより、お勉強になる。
ミニ・イスラーム事典といえるほど。
巻末には文字通り「イスラームの基礎知識」という付録がある。

ムスリムって何だと問いかけられ、ずばりと正解できる日本人が、いったい何パーセントいるのだろう。
ムスリム=服従する者
神とはアッラーのことだが、これはユダヤ教でいうヤハウェと同じだという。
われわれ日本人の頭の中の“常識”は、すっかりアメリカナイズされている。キリスト教徒から眺めた世界観にもとづいて世界を“グローバル”にとらえているわけだ。マスコミがそれを鉦や太鼓で煽っている。

そこから抜け出したいと思っている人にとって、本書は必読の書。
念のため、目次をコピーしておこう。
1.イスラームの論理と心理
2.アッラーの教え
3.すべてはパレスティナ問題からはじまった
4.湾岸戦争への道
4.イスラーム紛争の世界地図
5.民族と宗教の衝突
6.ハーレム タブー 犠牲祭
7.ベールの下の素顔

参考文献一覧をふくめ、全261ページが、どの章も偏向がなく、バランスがとれ、しかも無用な議論を排している。
「これがイスラームの人々なのだ」という指標が、要領よくまとまっている。
21世紀研究会、畏るべし。
マスコミの影響でいつも右向け右をしている、平和ボケした多くの日本人にすすめたい秀逸な一冊と確信する。



評価:☆☆☆☆☆

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