ベトナムに吹き荒れる親米指導部粛正の嵐…親中にかじを切るか
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ところがグエン・フー・チョン書記長が3期連続に成功した2021年にファム・ミン・チン共産党組織委員長が首相に、ハノイのブオン・ディン・フエ党書記が国会議長となった。二人はいずれも党内で政治の実績を積んできた親中派だ。この状況で4柱で唯一の親米となったフック主席が今年1月に突然辞任したのだ。主席が5年の任期を全うせず辞任するのは1976年のベトナム統一以来初めてだ。フック主席は一身上の理由で辞任すると発表したが、実際は首相在任中の収賄スキャンダルが原因との見方が支配的だ。
コロナ渦の間にベトナムでは海外に住む自国民を特別に帰国させたが、その際に旅行会社が巨額の収益を得るのを後押ししたとして収賄スキャンダルが表面化した。これによりフック主席の辞任前から副首相2人が腐敗で辞任し、閣僚級3人が拘束された。 一連の失脚は単なる腐敗が理由ではなく、派閥争いで敗れた「粛正」との見方もある。今回辞任した人物たちは主に親米派とされているからだ。
香港アジア・タイムズは「辞任した政府関係者は全員が欧米主義だったが、これは偶然ではない」「このように腐敗との戦いを武器に権力を固めた点でチョン書記長は中国の習近平・国家主席と似ている」「ベトナムでも民間部門の影響力を抑え、インターネットの統制など中国式の支配方式が現れ始めている」と指摘した。 チョン書記長の厳しい反腐敗政策が経済をさらに悪化させるとの見方もある。
オーストラリアのロウィ国際政策研究所は「ベトナムの反腐敗運動は、党指導部に職業的な成果よりも個人の清廉さと政治的忠誠度を優先させるかもしれない」「この流れが今後も続けば、ベトナムの長期的な経済見通しにマイナスの影響を及ぼす恐れがある」との見方を示した。ベトナムは昨年韓国が最大の貿易黒字を記録した国だ。韓国はベトナムに対して342億5000万ドル(約4兆6700億円)の黒字だった。韓国によるベトナムへの直接投資も48億8000万ドル(約6650億円)に達している。