ニュージーランド移住記録:日記「さいらん日和」

2004年に香港からニュージーランドに移住した西蘭(さいらん)一家。子育て終了、仕事もリタイア。好きに生きる記録です。

クライストチャーチ行:デコンストラクション

2012-12-25 | 経済・政治・社会
延び延びになっていますが、クライストチャーチ・アカロア行の続きです。
(さらに前の「ノースランド行」が(つづく)のままなのは置いといて



まさに、

地震都市
クライストチャーチ

1回目のカンタベリー地震から早2年3ヵ月。
2回目の壊滅的被害を出したクライストチャーチ地震から22ヵ月。


チャーチはまだまだ派手に壊れ、

(アンティークショップ。周りはすでに更地でここだけが残っていました)


壊している真っ最中でした。

「毎日こんな光景を目にしているのはキツいな~」
と思いながら、この光景を見ながらランチをしました。
そんなこと言ってる場合ではないです


同じマンションの正面。

周りに高い建物がないので、とても目立ちました。


見事なカウリの天井を残して周りは崩壊してしまった

教会


天井を補修して再建するそうです。

ぜひ残してほしい!


くっついていた隣の建物が取り壊され、

その跡がアートのように残るビル。


取り壊しか存続か

隣同士でも壊れ方、地盤、再建費用等によって、対応が全然異なるよう。


リッジス・ホテル

建物は問題ないそうですが、レッドゾーンの中なので営業停止中。
これだけ宿泊施設が足りないときに、残念


「これも問題なし?」
と思われた警察署

しかし、構造的に壊れてしまい現在は4階までしか使っていないそう。
近く転居して取り壊しが始まるそうです。


地震のときに何度も何度も映像が流れたフォーサイスバー・ビル。

犠牲者も出て窓から救助を求める人の姿がずっと映し出されていました。


えっ
このビル問題なかったの?

いえいえ
地震のときに階段という階段が崩れ落ちてしまい、悲劇の舞台に。
もちろん、もう使えず、取り壊しを待っているそうです。
こういう見た目には問題がなさそうに見える高層建築が非常に多いです。


税務署ビル

新築です。
地震があったときには引越しが始まっていたところだったそうですが、
引越しが終わることなく、取り壊し決定


地盤の悪さも不運でしたが、これだけ新しいビルでも耐震基準が甘かった
というか、ほとんどなかったのでは????
建材の段階から耐震・免震に取り組む日本とは雲泥の差なのを実感。


すでに1,000軒以上のビルが取り壊され、復興が始まっていますが、
耐震は中の鉄骨を増やしたり太くしたりという話ばかり。
NZで自前できる建材は知れており、高級品になればなるほど輸入品。
あちこちの国の別々の安全基準で作られたものでビルを建てており、
うーーーーん


でも復興後のクライストチャーチは政府と自治体の青写真段階から、
低層中心の街づくり
という絶対のコンセプトが確立しているので、それが一番の耐震対策か?


カンタベリーラグビーの殿堂だった

AMIスタジアム
今ではグラウンドが草で覆われています。


ここも見た目には何が問題なのかわかりませんが、

構造的な問題で取り壊して別の場所に再建することが決定。
手前の観客席が取り外され、こうして中が見えるようになっています。


カトリック教会

新しいビルもですが、歴史的建造物の痛々しい姿は胸に迫ります。


復元するのがどれほど大変かを思うと、失ったものは大きいです。

またかつてのこんな姿になる日が来るのでしょうか?


横にあるコンテナは再建のための建材が運び込まれたのではなく、

壁が崩れ落ちないようにしているのです。


壁の保全と万が一崩れ落ちたときの被害軽減のための措置のようです。

でもコンテナの真下をクルマが走りぬけ、人が歩いているわけですが・・・・


ここなど正面の壁を除いて、

すべてが取り壊された後でした。
再建されるまで大きな地震がないことを祈るばかり。


歴史的建造物ではアートセンターがすでに大掛かりな改修中でした。

旧カンタベリー大学校舎


美しいネオゴシック建築にNZらしい石材で、重厚さの中に素朴さもある、

イギリス人の入植当時の息吹を感じるような建物だと思います。
尖塔が外され地面に置いてありました。


ここを初めて訪れたのは1993年。今からちょうど20年前でした。



見たことがないようなモダンなデザインのクオリティーの高い、
ウールの絨毯が天井からたくさん吊り下げられた一角があり、
「旅行者じゃなければ、絶対ほしい
と思ったものですが、当時は香港への転勤辞令が出たばかりの
シンガポール暮らし
どちらも暑くて、足が沈むようなフカフカの絨毯は必要ありませんでした


再建は気が遠くなるような作業に見えますが、

いつか必ず、
かつての雄姿を取り戻すことができますように。


チャーチを代表する歴史的建造物といえば、

大聖堂


しかし、ご存知のように地震被害の象徴にもなってしまい、

すでに教会の尖塔はありません。


現在は取り壊しか再建かでイギリス本国の聖公会も含めて、

裁判沙汰になっているそう。


チャーチの象徴だけに、

「アートセンターが残せるなら~」
と少しでもネコゴシックの建物が残ってほしいという思いもありますが、
所有は教会なので、予算も思惑も公共施設とは違うようです。


大聖堂広場の交番

チャーチを訪れたことがあったら、絶対に忘れられないこの形。
いつかここがまた市民と観光客の憩いの場になる日を夢見て・・・・


これも取り壊し決定の

中央図書館
貴重な蔵書はほとんど回収できたそうで、新しい図書館が再建されます。


取り壊した建物の90%は再利用されるそうで
(埋め立てなども含めてでしょうが)
チャーチの人は
デモリッシュ
(「取り壊し」「撤去」でどちらかというと「ぶっ壊す」のニュアンス?)
ではなく、誇りを持って
デコンストラクション
(直訳なら「脱構築」ですが、「解体」ぐらいの意味?)
と言うんだそうです。


今はデコンストラクションでも、すぐにリコンストラクションになると

いいですね、その前向きさ!


これも地震の象徴、

時計台


針は地震の時間で止まったまま。

でも街はとっくに動き出しています


石造りの台座部分は壊れてしまったものの、

イギリスで製造して運んできた時計部分はステンドグラスも健在でした。


この時計がいつかまた未来の時間を刻み始めるのか、

市民の共通の記憶として、止まった時の意味が語り継がれていくのか。

どちらであっても、その姿に励まされる美しさでした。

(つづく)