温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

鳴子温泉 福の湯

2012年11月14日 | 宮城県
※2016年12月で休業してしまったようです。
(情報源:鳴子温泉郷観光協会公式サイト内のこちらのページ)


 
鳴子温泉の中心部から川の方へ下り、車湯から鬼首方面へ向かう国道108号の橋を渡って対岸の川沿いをちょっと遡ったところにある日帰り温泉入浴施設「福の湯」を利用してまいりました。外観からして明らかに元々は宿泊(保養)施設だったことが想像され、時代の趨勢に合わせて入浴営業のみへと業態転換したものと思われます。
玄関近くにある施設名の看板には「湯量豊富流れぱなし」と、促音便が苦手な外国人が話す日本語のような訛った表記がなされているのですが、なぜこの表記なのかは不明であります。



手水ならぬ手湯の枡もあり、施設名に因んでか、七福神のうちの3神(布袋・大黒天・福禄寿)の小さな置物が飾られていました。



こちらではローリーによる温泉の宅配業務も行っているんですね。湯量豊富なんだなぁ。



玄関に入り下足場にある券売機で料金を支払います。貸タオルの有無などによって料金が異なりますから、わからなければスタッフへ確認しましょう。下足箱のキーは退館時まで自分で管理します。下足箱と並んで貴重品用ロッカーが設置されているのですが、後述する脱衣室内にはロッカーが無いため、貴重品類はこちらへ預けましょう。ロビーには元々宿泊業を営んでいたような雰囲気が漂っており、食品類や土産物などが販売されていました。


 
浴室は男女入れ替え制となっているらしく、私の訪問時は奥側の浴室に紺の暖簾がかかっていました。二つの浴室の違いはサウナが有るか無いかであり、今回男湯だった奥の方の浴室にはサウナが設けられています。
脱衣室もやはり一昔前の旅館を彷彿とさせる造りですが、とてもよく手入れされており、また部分的に改装されており、おかげで気持ちよく利用することができました。また冷房はありませんが天井ではシーリングファンが回っているので、湯上がりにクールダウンして汗を引かせることもできました。



浴室も脱衣所同様に昭和50年代に建てられた宿泊施設の「大浴場」らしい雰囲気ですが、劣化しやすい部位はしっかり改修されているので、思ったほど古さは感じられません。洗い場にはシャワー付き混合水栓が4基並んでいるのですが、私の訪問時に驚いたのが利用客のマナーの良さでして、先客のみなさんは例外なく、使用後の腰掛けと桶のポジションを上画像のようなスタイルに戻していました。こうしたマナーの徹底ぶりは私たちとしても大いに見習いたいものですね。



浴室内にはサウナの他、大小2つの浴槽が据えられており、大きな主浴槽は「湯治の湯」と名付けられており、且つ「うたせ湯」でおあって、3本の竹筒からちょっぴり熱めの源泉が落とされていました。こちらでは2種類の源泉を浴槽によって使い分けており、「湯治の湯」「うたせ湯」では湧出量の豊富な「末永1号泉」が用いられています。訪問時は既に日没後であったためにお湯の見た目ははっきりとわかりませんでしたが、おそらく無色透明か或いは薄い褐色系透明かと思われます。口にしてみると重曹泉に石膏が溶け込んだような感じの知覚が得られ、東京多摩地区に点在する各温泉から塩気やアンモニア感を抜いて石膏をプラスしたような感じと言ったら良いのでしょうか、樹脂系の味や匂いに重曹の清涼苦味と土類系の味が加わっているようでした。館内表示によれば「温度管理のため掛け流しと循環装置を併用」とのことですが、消毒や濾過は実施されておらず、浴槽の縁の切り欠けからはお湯がしっかり排湯されていましたから、単に温度調整するための循環にすぎず、掛け流しに近い湯使いであると言っても差し支えないでしょう。


 
紹介すべき順番が前後しますが、内湯の小浴槽は後回しにして、次に露天へ行ってみましょう。周囲を塀で囲まれているため、屋外の割にはあまり開放感が得られませんが、風はちゃんと流れてきますから、内湯で火照った体を冷ますにはもってこいです。お湯は内湯の「湯治の湯」「うたせ湯」と同じ「末永1号泉」であり、やはり同様に「温度管理のため掛け流しと循環装置を併用」とのことですが、この時は装置を運転させていなかったのか、装置が働いているような様子は無く、長湯ができるようにぬるめの温度にセッティングされていました。


 
(かなり不鮮明で申し訳ありません)
さて内湯へ戻ってきました。こちらのお風呂で非常に個性的なのが、内湯の小浴槽に張られている「炭酸泉」であります。結論から申し上げちゃうと、主浴槽も露天もすっとばして、この小浴槽だけを目当てにここを利用しても良いぐらいに素晴らしいのです。何が良いかといえば、名前の通りお湯にはたっぷりと炭酸ガスが含まれており、入浴するや否や、たちまち全身に炭酸ガスの泡が付着するのです。最近は都市部のスーパー銭湯でも人工的な炭酸浴槽が設けられて人気を博していますが、何と言ってもこちらの炭酸泉は天然物ですし、いつまでも長湯できちゃう不感温度帯の湯加減なもんですから、気持ち良いことこの上ないのです。浴槽中央の底からボコボコと供給される源泉は、外気に触れない状態で浴槽に溜められるので、湯中における炭酸ガスのキープ率が良好なんですね。お湯に体を入れた途端に、気泡が弾ける刺激が肌で踊り、お湯から上がろうとすると肌にビッシリと付着した気泡が一斉に弾けるため、シュワシュワとした感触が楽しめます。強く明瞭な炭酸味と金気の味を有し、上述の通り温度は38℃くらいですが、いつまでもじっくり入っていられる温度である上、炭酸の温浴効果が相俟って、長く全身浴しているとまるで体内に熱源を抱え込んでいるかのようなポカポカ温感が生まれました。またお湯の色もお隣の主浴槽とは異なっており、浴槽やオーバーフローの流路は金気の影響で赤黒く染まっていていました。

私の訪問時も先客・後客が何人か利用していましたが、常連と思しき方は体を洗ったら「炭酸泉」のみに入り、他の浴槽には目もくれずに帰っていっちゃいました。かく言う私も、主浴槽や露天にはあまり浸からず、館内滞在のほとんどをこの「炭酸泉」入浴に費やしました。建物こそ新しくはありませんが、内部はきちんと改修されており、メンテナンスも行き届いているので、どなたでも気持ち良く利用できるでしょう。鳴子温泉の多様性と実力を改めて確認できるお風呂でした。


末永1号泉(「うたせ湯」「湯治の湯」(内湯主浴槽)・露天風呂「河原の湯」)
ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉 58.7℃ pH7.2 蒸発残留物1488mg/kg 溶存物質1998.8mg/kg
Na+:282.0mg(48.65mval%), Mg++:29.7mg(9.69mval%), Ca++:201.1mg(39.79mval%),
SO4--:347.4mg(30.92mval%), HCO3-:884.2mg(61.94mval%),
H2SiO3:171.6mg, CO2:164.7mg,
温度管理のため掛け流しと循環装置を併用、加水消毒なし

大畑1号泉(「炭酸泉」)
含二酸化炭素-カルシウム・ナトリウム-炭酸水素塩泉 38.3℃ pH6.0 蒸発残留物777.3mg/kg 溶存物質1261.9mg/kg
Na+:103.7mg(32.08mval%), Mg++:22.5mg(13.16mval%), Ca++:147.7mg(52.42mval%),
HCO3-:756.7mg(89.92mval%),
H2SiO3:155.9mg, CO2:1221.1mg,
加温加水循環消毒なし


陸羽東線・鳴子温泉駅より徒歩13分(1.1km)
宮城県大崎市鳴子温泉字末沢西16-9  地図
0229-81-1570
ホームページ

平日10:00~20:00(入館19:30まで)、土日祝10:00~21:00(入館20:30まで)、第3木曜定休(祝日の場合は翌日)
500円(大小タオル2枚レンタル付の場合は平日800円、土日祝1000円)
貴重品用ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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