温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

南蔵王温泉 湯々里ミートランド

2012年11月08日 | 宮城県
※施設は営業中ですが、2014年頃から温泉が出なくなっているようです。


宮城県の南蔵王山麓には「不忘の湯」「蔵王開拓温泉」など、渋くてちょっとした寂寥感を漂わせながらも、山麓の雄大な自然環境を活かした露天風呂を外来客に提供している実力派温泉施設が点在していますが、そうした施設のひとつ「湯々里ミートランド」は一風変わった不思議な温泉であるという情報を得たので、どんなところか興味津々、行ってみることにしました。カーナビで目的地を検索して現地まで近づくと、要所々々に小さいながらも看板が立っており、そのおかげで迷うことはなかったのですが、上画像の地点から左へ入って目的地へ到着するまでは車一台しか走れない離合不能な狭隘路となり、本当にこの道でいいのかと不安を抱きながら先へと進みました。



途中、道の左側の藪で源泉井らしき物体を発見。



狭隘路を数百メートル進んだところで左へ鋭角に曲がると、ようやく目的地に到着です。一見すると民家のようでもありますが、建物に施設名が記されているので、ここで間違いないでしょう。
利用後に理解したのですが、建物の手前側へ増設されているアクリル板の屋根の部分がお風呂となっているのです。



玄関はまるで民家のような雰囲気であり、客商売しているような気配が感じられず、いろんなものがところ狭しと置かれていて雑然としています。あれれ? 客用の入口が別にあるのか? そう疑って建物の周りをウロウロしてみましたが、やはり入口はここにしかない。玄関に上がって声をかけてみますと、2階で洗濯物を取りこんでいたダミ声のおばちゃんが私の来訪に気付き、1階へ下りてきて対応してくれました。一人でやってきた標準語を話す私に何かを感じ取ったのか、おばちゃんは「どこから来たの」とお尋ねになったので、私は素直に「神奈川県です」と答えたところ、「何でこんなところへ来たの?」とさぞかし不思議そうな面持ちで驚いていらっしゃいました。


 
おばちゃんの案内によれば、お風呂へ行くには、玄関を上がってすぐ右手に入ったところにある大広間を突っ切り、窓から再び屋外へ出て、先程見たアクリル屋根の部分へと歩いてゆくんだそうです。でもちょうど大広間を突っ切るコースの目の前にはカラオケのモニターが設置されているんだよな…。温泉ファンのサイトを拝見しても、このカラオケの前を横切ってゆくことが多くの記事で紹介されていまして、私は偶々誰もいないタイミングで利用しましたので素通りすることができましたが、もし誰かさんがマイクを握って大絶叫している真っ最中にその目の前を通り過ぎなきゃいけないとなると、かなり気まずいですよね。不特定多数を相手にしているというより、気心知れた常連客がカラオケを歌ったり風呂に入ったりする施設なのかもしれませんね。


 
カラオケは1曲100円なんだとか。


 
カラオケの前を突っ切って、サッシを開けて屋外へ出て、サンダルを履いてお風呂へ向かいます。屋根で覆われているものの、左右方向には特に仕切りのようなものは無く、半露天のような構造になっていました。


 
とっても手作り感の溢れるお風呂で、脱衣する空間と入浴空間との間には仕切りが無く一体化されています。また画像ではわかりにくいのですが少々雑然としています。ジモ専っぽい風情すら感じられます。特に洗い場は設けられていないようですが、浴槽手前には源泉が出る蛇口と水道の蛇口がひとつずつ設置されているので、これが洗い場代わりになるのかもしれません。私は蛇口を利用するのが面倒だったので、桶で湯舟から直接お湯を汲んで掛け湯しちゃいました。


大広間側に立てられたコンパネには、風雨に当たってヨレヨレになってしまった、当温泉をアピールする各種掲示物が貼り出されていました。「源泉100%」の文字が誇らしげですね。
飲料可? 飲泉のことですね。後で飲んでみましょう。


  
「源泉100%」の貼り紙の他、温泉に含まれるストロンチウムイオン量(2.6mg)もこちらの温泉のご自慢のようでして、その旨を説明した文章や、ストロンチウムの項目が含まれている辞書のコピーも掲示されていました。辞書のコピーの左側に貼ってあるグラビア記事は、三朝温泉のものですね。三朝のように当温泉もホルミシス効果が得られますよ、ということなのでしょうか。でも、重箱の隅をつつくつもりはありませんが、全国的に見れば2.6mgという量は決して多いとは言えないような気がします…。



竹でカバーされた浴槽奥側の配管から熱い源泉が注がれており、手前側の湯面に突き出た塩ビのパイプから排湯されています。また湯舟に体を沈めると、浴槽切り欠けからのオーバーフローも見られます。源泉のままですとかなり熱いので、水道のホースを突っ込んで加水しながらの入浴となりました。
お湯は明るい黄土色に強く濁り、透明度は20cm程度でしょうか。鉄系の金気臭&味の他、芒硝の匂い&味、そして何かが焦げたようなタールっぽい匂いが感じられました(湯口で顕著)。入浴するとギシギシとした浴感が肌に伝わり、浴槽に触れた肌はオレンジ色になっちゃいました。かなり濃いお湯なんですね。完全掛け流しの湯使いであり、民家然とした玄関もカラオケの前を横切ったことも気にならなくなるほど、鮮度感のある良質なお湯が楽しめました。

整理整頓が苦手なファミリーのお宅にお邪魔したような雰囲気が印象的な、B級感がとても強い施設ですから、こちらを訪れた方は風変わりで特徴的なその佇まいに興奮を覚え、感想をネット上で伝えたくなっちゃいますよね。なぜこの温泉がネット上でよく取り上げられているか、実際に行ってみて理解できました。かく言う私もその一人であります。潔癖性な人にはあまりおすすめできませんが、お湯は本物ですし個性的な物件であることには違いありませんから、今後もB級施設が好きな方から愛されつづけることでしょう。


南蔵王温泉 湯々里
ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉 54.2℃ pH7.3 80.6L/min(動力揚湯) 溶存物質4515.7mg/kg 成分総計4625.3mg/kg
Na+:1190mg(79.23mval%), Ca++:212.4mg(16.23mval%),
Cl-:877.8mg(37.69mval%), SO4--:1695mg(53.71mval%), HCO3-:327.3mg(8.16mval%),
H2SiO3:56.0mg, HBO2:96.2mg, CO2:109.6mg,

宮城県白石市福岡八宮字川原子上2
0224-24-8336

9:00~20:00
300円
備品類なし

私の好み:★★
コメント (2)
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