温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

櫛田川温泉 魚見の湯

2012年11月15日 | 三重県
 
三重県松阪市の東部郊外に、お湯の質が良好なマニア受けする露天風呂があると知り、泣く子も黙る松阪牛や近世の面影を残す風情ある街並みなんて目もくれず、その現場へと直行しました。

松阪市街方面から県道60号線を東進し、魚見橋を渡って右岸の堤防上を500メートル走行すると、右側へ下りる路地が分かれてるので、そこを入ってゆくと今回の目的地である「櫛田川温泉 魚見の湯」に到着です。私を含めた温泉ブロガー達がここに興味を惹かれてしまう理由の一つに、この温泉が「中川グリーンテニスクラブ」というテニスコートに付帯した隠れキャラ的な存在であることが挙げられるでしょう。元々はテニスクラブ会員向けのお風呂だったんだそうですが、その後一般にも開放されるようになったんだそうです。



駐車場の目の前には何面もの屋外テニスコートが広がっています。



敷地内には会員専用の温泉スタンドが設けられていました。セルフで汲むシステムで、100Lで200円なんだそうです。



温泉名が記された倉庫のような外観の屋内コートをグルっと裏手へ回って、「露天風呂」と書かれた方向へまっすぐ進み…


 
屋内コートの控え室のようなところへ入ると、こちらを運営なさっているオーナーさんの奥様が待っていてくださいました。ネット上でこの温泉を紹介しているサイトでは大抵アナウンスされていますが、こちらの温泉は利用者がいないときは空っぽのことが多いらしいので、入浴希望の際には事前に電話連絡をしておいた方が良いのです。わざわざ川崎市くんだりからやってきて空振りするのは馬鹿馬鹿しいので、今回の訪問に当っては1時間前に電話をしておいたら、奥様がそれに合わせてお風呂を掃除しお湯を張っておいてくださいました。
室内では台帳に名前を住所(県や市レベルまででOK)を記入し、テーブルの上に置かれた丸い缶に100円玉を2枚置きます。
隅っこに据え付けられてる流し台の蛇口からは温泉が出るようです。


 
更衣スペースから既に半露天状態なんですね。
カギ付きのスチールロッカーがズラリと並んでいる他、カゴ・扇風機・体重計など入浴施設には欠かせないものならひと通り用意されており、開放的な状態にもかかわらず非常に綺麗ですので、快適に利用することができました。


 
農家の軒先にこしらえられたような趣きの露天風呂です。お風呂は露天のみですから、脱衣所を含めて入浴ゾーンに密閉された室内空間というものは無いわけですね。寒い冬はどうなっちゃうかわかりませんが、脱衣所はもちろんのこと、お風呂も半分は屋根に覆われているので、多少の雨なら問題ないでしょう。

洗い場には混合水栓が3基設置されており、うち2つはシャワー付きで、お湯のコックを開けると加温された源泉が出てきます。ちゃんとボディーソープやシャンプーが備え付けられているのが嬉しいところ。
一般的に、本業に付帯して設けられた利用者が限定されているお風呂って、施工が稚拙で手作り感に溢れているケースが多々ありますが、こちらのお風呂にはそうしたところが見当たらず、まるで浴場メインで営業しているかのような風格すら感じられる本格的な造りでして、お湯の質に触れる前から私はすっかり感動してしまいました。


 
お風呂は大きなステンレスの湯船がひとつ据えられており、その中に同じくステンレス製の小さな湯船が収められています(コンクリブロックで固定されていました)。利用人数によってこの2種類を使い分けているようでして、私は一人で伺いましたから、小さい方の湯船にのみお湯が張られていました。浴槽には水垢が見られずピカピカに輝いており、普段から念入りにメンテナンスされていることが伺えます。
浴槽の傍らにはラケットを持った信楽焼の狸が佇んでおり、全裸で入浴に臨もうとする小太りの関東産タヌキを一瞥しているようでした。


 
源泉温度が28℃とかなり低いので加温された上で浴用に用いられているのですが、加水循環消毒は行われておらず、利用の度にお湯が使い捨てられてゆくのですから、湯船のお湯は実に良好なコンディションです。お湯はホースがつながれた水栓から吐出され、コックもありますから入浴中でも投入量の調整が可能です。なおホースの傍には塩ビのパイプも置かれており、大きな浴槽へお湯を貯める際にはこれが使われるのでしょう。また小さなお湯のオーバーフローも大きな槽へと落とされるようになっていました。

ホースから出てくるお湯は42~3℃でしょうか、加温の塩梅は最適です。思わず声を上げて感嘆してしまったのが、ホースから吐出される勢いによってお湯が泡で白濁しちゃっていることでして、静かな状態ですとかなり薄い黄色(やや褐色)の透明なのですが、ホースからお湯を出すと忽ち浴槽内は泡で霞んでしまうのです。こりゃすごい!


 
実際に湯船へ体を沈めてみたら肌への気泡の付着も夥しく、アワアワな温泉が好きな方だったら感涙の涙が止まらないかもしれません。つい興奮のあまり、自分撮りしちゃいました。
お湯を口にすると重曹味に畑の土(泥)のような味、そして土の匂いとゴムっぽい匂いに有機肥料のような匂いが、それぞれ優しく絡み合っているように感じられました。匂いも味もかなりマイルドであり、もし鼻炎を発症していたらほとんどわからない程度のものです。また、泉質は重曹泉型のアル単であり、気泡による相乗効果によってツルツルスベスベのとても爽快な浴感ですが、メタケイ酸がかなり少ないためか、ツルスベとはいえ強い印象が残るほどではありませんでした。こうしたお湯の知覚面(色・味・匂い)は三重県平野部の温泉では標準的と言えるかもしれませんが、とはいえ、県内で実質掛け流しの温泉は非常に貴重であり、気泡の多さも感動的、とても綺麗な露天で気持よく利用でき、テニス場の付帯施設という独特の属性も面白いので、温泉ファンでしたらどなたでもテンションが上がっちゃいますね。素晴らしいお風呂でした。


アルカリ性単純温泉 28.0℃ pH9.0 成分総計0.43g/kg
Na+:128.5mg,
Cl-:42.3mg, HCO3-:208.7g, CO3-:24.0mg,
H2SiO3:16.6mg, CO2:0.2mg,
加水循環消毒なし、源泉が低温のため加温

三重県松阪市魚見町47-1
0598-59-0121

13:00~18:00(要事前連絡
200円
ロッカー・シャンプー類あり(ドライヤーなし)

私の好み:★★★
コメント
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