今回取り上げるのは遠刈田温泉のメインストリート沿い、公衆浴場「寿の湯」の斜前に建つ「たまや旅館」です。玄関横に提げられている藤色の幕に記された「立ち寄り湯してます 源泉かけ流し」という文言に惹かれ、気づけば玄関の中へ足を踏み入れていました。
玄関では小さな可愛らしいワンちゃんが、熱烈歓迎の意を示しているのか私の足元にグルグルとまとわりついてきました。前回の「あづまや旅館」同様にこちらでも「湯めぐり手形」で入浴させていただきます。
浴室入口の手前にはこじんまりとしたラウンジがあり、空調の利いた室内にはソファーやテレビ、自販機が設けられている他、「ご自由におのみ下さい」と書かれたコーヒーメーカーが用意されていました。おそらく宿泊客用のものかと推測されたので、私は利用しませんでしたが、和風の温泉旅館に泊まるとコーヒーなど(ビール以外の)横文字の飲み物をいただけない場合が往々にしてあるため、コーヒー中毒の私のとってこのようなサービスは非常にありがたく、他の施設でも是非導入して欲しいなと切に懇願しております。中小規模の旅館ならではの、お宿の温かみが伝わってくるサービスですね。
お風呂は男女別の内湯が一室ずつで露天はありません。男女は入れ替え制になっているようです。脱衣室は旅館というより民宿に近いコンパクトな空間ですが、室内はよく清掃されており、ひとつひとつがセパレートされた枠に篭が納められている棚は大きくて使いやすいものでした。
浴室は浴僧上の二方向の壁面上部にあけられた窓から外光が降り注がれており、照明を点けずとも明るい状態でした。洗い場は入口を挟んで左右に分かれており、シャワー付き混合水栓が左側に1基、右側に3基それぞれ設置されています。床は元々グレー系の色をした石板だったと思われますが、浴槽からオーバーフローするお湯の影響で赤く染まっていました。
浴槽は台形を平たく潰したような形状ですが、右側は洗い場スペースを確保するために端っこをカットしたような感じになっています。浴室の床同様、浴槽周りも元の色がよくわからないほど赤茶色に着色されており、常にお湯に触れている浴槽内に至っては焼けただれたように赤黒く染まってました。
木枠の湯口から源泉がドバドバと落とされており、浴槽縁の左右両端にある切り欠けから排湯されています。熱いお湯を冷ますために加水されているものの、放流式の湯使いとなっており、分析表に記載のある消毒云々は清掃時に薬剤を用いているという意味かと解釈されます。
浴室の左側壁面には打たせ湯もあり、一筋の熱い源泉が絶え間なく落とされていました。
使用源泉は遠刈田7号泉で、見た目としては若干黄色系が混じっている白色系メインの濃い貝汁濁り、新鮮な金気や土類系の味と匂いを有しているほか芒硝の知覚も帯びており、更にはその裏で石膏感も存在感をアピールしているようでした。また湯口においては何かが焦げたような香ばしい匂いも嗅ぎ取れました。湯中で肌をさするとキシキシとした浴感が得られるとともに、豊富な源泉投入量とやや熱い湯加減のおかげで心身ともにシャキっとする遠刈田らしい爽快感も同時に味わえ、湯上がりも長時間にわたって保温効果が持続しました。
これから寒い季節を迎えるにあたり、体の芯から温まる遠刈田のお湯は有り難い存在ですね。アットホームな雰囲気がうれしい、鮮度感溢れるお湯を堪能できる施設でした。
遠刈田7号泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉 68.7℃ pH7.0 蒸発残留物2081mg/kg 溶存物質2256.2mg/kg
Na+:389.8mg(52.87mval%), Ca++:276.0mg(42.92mval%),
Cl-:234.1mg(21.58mval%), SO4--:876.6mg(59.66mval%), HCO3-:342.1mg(18.34mval%),
H2SiO3:74.7mg, CO2:186.3mg,
源泉が高温のため常時加水
浴槽の衛生管理のため塩素系薬剤を使用
加温循環なし
白石蔵王駅・白石駅または大河原駅よりミヤコーバスの遠刈田温泉方面行バスで遠刈田湯の町バス停下車・徒歩1分
宮城県刈田郡蔵王町遠刈田温泉本町21
0224-34-2316
ホームページ
立寄り入浴10:00~15:00
500円
(遠刈田の湯めぐり手形は2012年9月に販売終了となりました)
シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★