釧路湿原といえば皆さんは何を連想するでしょうか。手付かずの広大な自然、丹頂鶴、トレッキング、カヤック…。人それぞれかと思いますが、温泉バカな私の場合はモール泉が筆頭候補だったりします。北海道のモール泉といえば十勝川温泉や幕別温泉、そして帯広市街の温泉銭湯が有名ですが、モールとはドイツ語で湿原を意味していることからも察せられる通り、広大な湿地である釧路湿原周辺だってモール泉が湧出する要件を満たしているわけでして、拙ブログでも以前に標茶の市街にあるモール泉の温泉銭湯「富士温泉」を取り上げております。今回は湿原エリアからはちょっと離れていますが、温泉ファンの間で評価が高いモール系の温泉が湧出している「オーロラファームビレッジ」にスポットライトを当てさせていただきます。
標茶の市街から国道274号を西進し、途中から林道に入って2キロほど走ると、右手に手作り感の溢れるゲートが構えていました。ここから更に未舗装の道を進んでいきます。
途中で「夕日の丘」と名付けられている見晴らしの良い丘に出ました。標茶郊外の丘陵を一望でき、とっても爽快です。
「夕日の丘」から坂を下りきると、丘と丘に挟まれた谷状の地形にロッジなどが立ち並ぶエリアへと入ってゆきます。
その中央に建ついかにも農場らしい大きなドームの建物がこちらの受付でして、私の訪問を不審者の侵入と勘違いしたのか、玄関前ではワンコがけたたましく吠えていましたが、そんなワンコを避けるようにしながら車を止めてドームの中に入ると、オーナー夫妻の奥さんがにこやかに対応してくださいました。
ドームの周囲に建つコテージやログハウス群で宿泊することもできるんですね。コテージ前に置かれたカートは広い敷地内を移動するためのものでしょうか?
●混浴露天
料金支払い時に奥さんからお風呂に関しての説明を受けました。曰く、お風呂は受付があるドームから更に奥へ250m先にあり、駐車スペースもあるので車で直接行ってください、一番手前にあるのは混浴の露天があり、奥には男女別の内湯と露天もあります、混浴の露天がおすすめです…とのことでした。その説明に従い、車でお風呂の前まで進み、上画像に写っている源泉小屋と思しき建物の前で車を止めました。
車道の左側のちょっと下がったところに建てられているのが混浴露天の建物ですね。さっそく行ってみましょう。
入口や脱衣室こそ男女別に分かれていますが、脱衣室はとても簡素でこじんまりしており、そこを抜けるとすぐに入浴ゾーンが広がっていました。大きな湯船を含めて建物は総木造であり、目の前に原生林が広がるワイルドな雰囲気が魅力的です。湯船の半分は屋根で覆われていますが、残り半分は梁こそ出ているものの屋根は無く、空を仰ぎ見ながら入浴することができました。
洗髪や体を洗うことは後述する男女別内湯で行うことを前提にしているらしく、こちらのお風呂はあくまで湯船に浸かることに主眼が置かれた構造となっているようですが、それでも一応洗い場らしき箇所があり、鏡と蛇口がひとつずつ備え付けられていました。
湯口からドバドバと注がれている源泉は紛うこと無きモール系の温泉であり、紅茶のような美しい琥珀色をしたお湯からははっきりとモール臭と弱タマゴ臭が放たれ、口にすると重曹由来の清涼感があるほろ苦みと弱タマゴ味が感じられました。そしてモール泉といえば誰もが美人になれちゃうほど強いツルスベ感が特徴的ですが、ご多分にもれずこちらのお湯もツルスベ浴感は非常に強く、むしろヌルヌルに近いのではないかと思えるほどでもあり、中年太りのオッサンである私はあまりの滑らかな肌触りに感激し、誰も見ていないのをいいことに、自分の肌を何度も頻りにさすりながら、その感触にうっとりしてしまいました。傍から見れば気色悪い光景かもしれませんが、それほど浴感が素晴らしいのです。
浴感のみならず泡付きの多さも特筆すべき点でして、湯船の表面には白い泡がたくさん浮かんでおり、入浴するとツルスベの肌へ瞬く間に夥しいほどの気泡がびっしりと付着します。拭っても拭っても付着してくる気泡には興奮を禁じえません。分析表を見ますと陰イオンで(ミリバル%値で)最も多いのが炭酸イオンであり、これが上述のような浴感や現象をもたらしているのでしょうね。
なお湯使いは当然ながら完全掛け流しであり、この露天風呂では縁からオーバーフローすることなく浴槽に取り付けられたUV管から排湯されていました。
浴室の傍らには足ふきタオルが用意されていました。こんな細やかな配慮こそ嬉しいものですよね。
●男女別浴室
続いて男女別のお風呂も利用してみました。手前の亜麻色の小屋は女湯、奥の茶色の小屋は男湯です。
女湯の入口には「混浴禁止」と書かれた札が。
先ほどの混浴露天と同じようなお風呂だと勘違いしちゃうお客さんがいるのかもしれませんね。
男湯の更に奥には「犬専用温泉」が設けられていました。ワンちゃんが入浴できるよう、2つ並べられたステンレス浴槽にはぬるめのお湯が注がれていました。人間様ばかりがいい思いをしてはワンコが可哀想ですもんね、ワンコだって家族の一員、家族みんなで温泉の恵みを享受致しましょう。
こちらは男湯の脱衣室。棚とカゴがあるだけの簡素な造りですが、室内には洋式のトイレが設けられています。壁のクリップボードには食事のメニューが掲示されており、ラーメンやカレーがこちらのご自慢のようです。
内湯は岩風呂風の造りで、やはりこちらでもモールのお湯がふんだんに掛け流されていました。湯面には白い泡が浮かんでいます。浴槽の大きさは2~3人サイズ、湯加減は混浴露天よりややぬるめでした。
撮影し忘れちゃったのですが、壁よりホースが直接出ているシャワーはヘッドが湯船に突っ込まれていたのですが、そのヘッドを湯船から取り出してみると、源泉が出っ放しになっていました。
男女別のお風呂にも露天が据えられており、女湯はひとつだけですが、男湯では2つの浴槽を利用することができます。手前側(左側)はポリバスを材木で囲っているもので、奥側(右側)はステンレスの浴槽が裸のまんまで据え付けられています。
まずは手前側の浴槽から。源泉井から引かれている導湯管が浴槽縁にて温泉を吐出させており、湯面は白い泡で覆われています。湯温は体感で41℃程であり、いつまでも入っていたくなる湯加減です。大きなお風呂も良いですが、壺湯のような感じで入れるこうしたサイズのお風呂も侮り難く、混浴露天と違ってこちらは頭上に梁も柱も無い完全な露天状態ですから、とっても開放的な状態でのんびりゆっくりとモールのお湯を長湯することができました。
泡付きもご覧のとおり激しく、入浴するや否や全身に付着してきます。お湯のツルスベ浴感および泡付きは、源泉に近い混浴露天のほうが強いのですが、それはあくまで相対的な話であり、この露天風呂でも充分に爽快な浴感と泡付きを堪能できます。
手前側浴槽の排湯は、湯面で口を開けている塩ビの配管へと吸い込まれ、隣の浴槽へと流れてゆきます。つまり湯口のある手前側浴槽は上流、隣のステンレス槽は下流に当たるわけです。
従いまして、下流側に当たるこのステンレス浴槽のお湯はかなりぬるく、かつ泡付きもやや減っております。気温が下がる時期にこの浴槽へ入ると湯冷めしちゃいそうですが、夏の暑い日でしたら、ぬるいお湯とモール泉ならではの浴感と相俟って、めちゃくちゃ爽快なのではないかと察せられます。
なお、この浴槽から更に下流には上の方で紹介した「犬専用温泉」が位置しており、2つの露天と犬用のお風呂は同じお湯が上流下流の関係を形成しながら流れているわけです。
湯上りはサッパリ爽快。身も心も軽やかになりました。
アワアワ且つスベスベのモール泉であるここのお湯は、本当に素晴らしいものでした。
アルカリ性単純温泉 43.6℃ pH9.4 94L/min(自噴) 溶存物質0.260g/kg 成分総計0.260g/kg
Na+:60.2mg(97.40mval%),
Cl-:8.3mg(8.75mval%), SO4--:8.5mg(6.84mval%), CO3--:60.7mg(76.81mval%),
H2SiO3:114.8mg,
北海道川上郡標茶町栄219-1 地図
015-488-4588
ホームページ
10:00~21:00 第1・3火曜定休
400円
備品類なし
私の好み:★★★