北海道・足寄町の雌阿寒温泉には3軒の宿もしくは入浴施設がひとつの区画に並んで営業していますが、その中でも「野中温泉別館」と「オンネトー景福」という2つの旅館に挟まれた真ん中の「野中温泉」で入浴してきました。こちらはいままでユースホステルとして営業していましたが、建物の老朽劣化により2011年3月に一旦幕を下ろし、その後一部を建て直して入浴専門施設として営業を再開したんだそうです。正面部分はすっかり新しくなって玄関部分は小洒落たデザインとなっており、少なくともここだけ見たらリゾート地のペンションかオーベルジュではないかと勘違いしちゃいそうです。
玄関の戸を開けると、とっても丁重で朗らかなご夫婦が応対してくださいました。料金を支払って奥へと進みます。帳場より奥は旧来の建物がそのまま使われており、かつては宿泊客が褥を並べていたであろう客室が廊下の両側で戸を閉ざしていました。浴室は廊下の突き当りです。
浴室手前にあるステンレスの共用流し台がユースホステル時代の面影を残していました。
脱衣室には長椅子とカゴがあるだけで至って簡素です。そのカゴも割れているものが多く、部屋を含め備品類は以前からそのまま使われていることがわかります。
浴室もYH時代そのままであり、内湯のみですが、室内に入った途端につい息を呑んでしまうほど、風格あふれる総エゾマツ造の立派なもので、柱や梁の接合部分には釘などが一切使われていないんだとか。金属を使用すると硫化してボロボロになっちゃうから木組みで建築しているんでしょうね。大工さんの技術には恐れ入ります。東北の湯治場を連想させる古風なお風呂にはカランなんてものはなく、掛け湯するには湯船から直接汲むか、湯口の傍で突き出ている樋に流れているぬるいお湯を使うことになります。浴槽も総木造であり、大きさは8人サイズ程度でしょうか。
温泉成分がコンモリ付着した湯口から源泉が滔々と注がれており、その対称の位置にある切り欠けから大量にお湯が溢れ出ています。そのオーバーフローが流れる床は硫黄で真っ黄色に染まっていました。
湯口のお湯は直接触れてしまう程度の温度であり、大して熱くありませんが、投入量が多いために湯船のお湯は湯口での温度とほとんど変化なく、非常に気持ちのよい絶妙な湯加減となっていました。私が入浴した時にはほとんど日が暮れていたためにお湯の色はあまりわかりませんが、薄い白色の貝汁濁りのように見え、更には浴槽内に付着した成分析出によりウグイス色を帯びているようにも映りました。浴室に入った途端にアブラ臭のような硫化水素臭が全身を包み、お湯を両手で掬って鼻に近づけるとがアブラのような臭いが強く鼻孔を刺激します。また口にすると粘膜が痺れるような苦味・渋み・えぐみが口腔内を駆け巡りました。
湯使いはおそらく源泉100%の完全掛け流し。アブラ的な知覚が強い硫黄のお湯であり、ちょうど良い感じの湯加減と滑らかな浴感が素晴らしく、総木造の浴室が湯治的な雰囲気を高めてくれる、極上の温泉浴場です。
こんな素敵な温泉なのに、料金はたったの200円なんですから、とってもお得ですね。両サイドの旅館でも日帰り入浴できますが、料金としてはここが最も安いようです。露天風呂こそありませんが、付近を訪れた際にはぜひ立ち寄りたい温泉浴場であります。
野中温泉1号
含硫黄-マグネシウム・カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型) 43.8℃ pH5.8 湧出量不明(自然湧出) 溶存物質3.442g/kg 成分総計4.038g/kg
Na+:253.1mg(21.88mval%), K+:62.6mg(3.18mval%), NH4+:3.7mg(0.42mval%), Mg++:227.0mg(37.12mval%), Ca++:369.2mg(36.61mval%), Mn++:11.5mg(0.83mval%),
Cl-:498.4mg(28.58mval%), HS-:1.8mg(0.10mval%), SO4--:1441mg(66.99mval%), HCO3-:308.2mg(1.27mval%),
H2SiO3:240.1mg, CO2:562.2mg, H2S:33.1mg,
北海道足寄郡足寄町茂足寄159 地図
7:00~19:00
200円
備品類なし
私の好み:★★★