見市川の野湯を楽しんだ後は、泥を洗い流してちゃんと温まりたかったので、野湯と同じエリアからお湯を引いている「見市温泉旅館」へ立ち寄り入浴することにしました。源泉地帯の野湯と旅館のお風呂の両方に入れば、引湯される間に温泉がいかに変化しているかを比較することもできますね。
国道沿いには「9時から入浴可能」という旨を掲示するLED看板が立っており、入浴のみの利用も積極的に受け入れているようです。その看板から国道を逸れてアプローチを下ると、いかにも北海道の僻地の一軒宿らしい、飾り気のないトタン葺きの鄙びた建物が川に沿って構えていました。
玄関を上がってすぐ右手にある帳場にて料金を支払います。帳場窓口の向こうに広がる茶の間では、ワンコがスヤスヤとお昼寝中。
帳場前には見市川を眺望する小じんまりとしたラウンジが設けられており、川を眺めながらのんびりとおしゃべりしたくなるような空間になっていました。
帳場から左に折れて廊下を進んで浴室へと向かいます。その途中には、自販機が置かれている休憩スペースがあったり、マッサージチェアが置かれていたり…。
脱衣室はごく一般的ですが、清掃直後に伺ったためか、きちんと整理整頓されていました。でもドライヤーが有料で100円という点はちょっと引っかかります。
浴室の戸を開けた途端、湯気とともに室内で充満していた土類臭がプンプン匂ってきました。川を望む広い窓に面して大きな浴槽が据えられています。温泉成分の影響で、床も壁も、浴室全体が赤茶色に染まっているようでした。
窓とは反対側の壁面にはシャワー付き混合水栓が7基一列に並んでいます。腰掛けや桶はきちんと積み重ねられており、好印象を受けました。
湯使いは加温加水循環消毒なしの完全掛け流し。
前回記事の野湯ではぬる湯に悩まされましたが、逆にここのお風呂の湯口から落とされるお湯はかなり熱く、そのままでは火傷しそうだったので、本当は何も手を付けないままで入浴したかったのですが、悔しさを噛み殺しながら水道の蛇口を開けてジャンジャン加水させてもらいました。お湯は赤みを帯びた黄土色に濁っており、お湯の表面ではカルシウムなのかホウ酸なのか、白い粉状の浮遊物が膜を形成していました。川の野湯では湧出したばかりでしたからお湯は無色透明でしたが、さすがにここまで引湯されると、温度こそ高いままで維持されているものの、混濁の発生は避けられません。
湯口では小規模な石灰華が現れており、また浴槽縁には鱗状の析出も出現していますが、ガラス窓下に排湯用の穴が開いてて、浴槽のお湯は常時そこから捨てられてゆくため、縁をオーバーフローするお湯は少なく(人が湯船に入ったときだけオーバーフロー)、これに伴い浴槽縁の石灰華もかなり薄くて、ややもすれば見逃しちゃいそうです。
お湯を口に含んでみると甘塩味+重炭酸土類泉的な味+弱金気味+微苦味+弱炭酸味が混在しているように感じられました。この温泉は泉質名としては食塩泉ですが、分析表を見るとカルシウムイオンも炭酸水素イオンも相当量含有しているので、実質的には含土類・食塩泉とほぼ同類と見做して差し支えなく、お湯の濁りや味・匂いから考えても然りだと思います。
露天風呂には3~4人サイズの浴槽が据えられており、清流見市川を見下ろす絶好のロケーションで、とっても爽快で開放的。こりゃ素晴らしいや!
こちらの湯口にも小さいながら石灰華が形成されていました。かなり熱くて1分も浸かっていられなかった内湯とは異なり、露天風呂は外気に冷やされるためか加水せずとも丁度良い湯加減にまで下がっており、じっくりとお風呂に浸かりながら渓流の景色を独り占めすることができました。ただ泉質の性質ゆえなのか、浴槽内は少々ヌメヌメしており、潔癖症の人だと躊躇っちゃうかも。
清冽な渓流見市川。露天からは川底の石ひとつひとつまでくっきり見えちゃいます。
心身ともに清らかになれるお風呂でした。
1号井戸と2号井戸の混同井
ナトリウム-塩化物温泉 59.8℃ pH6.4 110L/min(自然湧出) 溶存物質4.667g/kg 成分総計5.106g/kg
Na+:1083mg(67.68mval%), K+:230.5mg(8.46mval%), Ca++:278.2mg(19.94mval%),
Cl-:2006mg(80.60mval%), HCO3-:755.5mg(17.64mval%),
H2SiO3:162.7mg, HBO2:57.1mg, CO2:439.3mg,
北海道二海郡八雲町熊石大谷町13 地図
01398-2-2002
ホームページ
日帰り入浴9:00~22:00
500円
貴重品は帳場預かり(ロッカーなし)、シャンプー類あり、ドライヤー有料(100円/5分)
私の好み:★★★