温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

八雲温泉 おぼこ荘

2012年12月30日 | 北海道
 

前回取り上げた「見市温泉旅館」から雲石峠を越えて八雲町側へ下り、途中から細い道を入ってゆくと、その先に山奥という立地にはそぐわない立派な建物が目に入ってきました。今回の目的地である八雲温泉「おぼこ荘」であります。日帰り入浴も歓迎らしく、玄関には大きな看板も立っていました。
「おぼこ」という名前から私は西日本の方言の「おぼこい」を想像してしまったのですが、鉛川の上流に聳える雄鉾岳が名勝の由来なんだそうです。北海道なのに遠く離れたところの方言を用いるはずありませんよね。相変わらず私の脳みそはトンチンカンです…。



玄関からちょっと裏へ回ると、貯湯タンクと思しきものを発見。


 
こちらのお宿は元々八雲町営だったそうですが、平成17年に民営化されて地元の水産物販売会社が運営しています。そもそも公営施設だったためか、妙に立派な建物で、とりわけフロントまわりはとても綺麗ですが、どことなく第三セクター臭が漂っており、この手の施設はえてしてサービス面で当たり外れが大きかったり擦るものですが、そんな私の懸念を払拭するかのように、ロビーへ入ると作務衣を着た女性スタッフの方がフロントから券売機の傍までやってきて、丁寧に案内してくださいました。


 
ロビーから右へ進んで浴室へ。



浴室入口前にはフリーの休憩スペースとなっているお座敷が。


 
ステップを数段下がって脱衣室へ。室内は手入れがとても良く行き届いており、気持ちよく利用できました。



檜山・渡島地区の各温泉施設ではしばしばマイナスイオンドライヤーを目にしますが、御多分にもれずこちらでも備え付けられていました。このドライヤーの業者(あるいは販売会社)と当地域には何か特別な関係があるのでしょうか。


 
浴室には土類臭と湯気が充満。室内はかなり広く、川側はガラス張り。浴槽は遊泳できちゃいそうなほど大きなもの。
床はタイル貼りですが、浴槽からのオーバーフローがかかる箇所は、温泉成分によりすっかり変色しちゃっています。
洗い場は2つのエリアに分かれており、合計7基のシャワー付き混合水栓が設けられていますが、これとは別に金具が際立って腐食している水栓が一つ。ちょうど浴室清掃が終わってすぐのタイミングだったためか、腰掛けや桶が整然と並べられていました。


 

浴室で目を奪われるのが、室内の一角に屹立している巨大な岩です。その迫力に圧倒されそう…。
岩の下の裂け目から源泉がドバドバと投入され、湯口とは逆サイドになる、露天風呂入口ドア付近の排水口から惜しげも無く大量に捨てられてゆきます。湧出量が相当豊富なんですね。大きな湯船はそれ自体が川のようでもあり、槽内では流れが生まれていました。その贅沢な湯使いは圧巻です。お湯は滞留せずにどんどん流れてゆきますからお湯の鮮度感も抜群で、湯加減もちょうど良い塩梅でした。


 
緑色がかった黄土色に暗く濁っていますが、浴槽底はちゃんと見える程度の透明度はあります。湯面にはカルシウムと思しき白い粉状のもの膜状に浮いており、またオレンジ色の泡が塊になっていくつか浮いていました。甘塩味+石膏味、そして塩味と同じタイミングで舌に伝わる炭酸味、遅れて焦げたような味も、炭酸味については酸の収斂と炭酸の後味がはっきりと残ります。分析表を確認したら実際に遊離炭酸ガスが多いようです。サラサラとキシキシが混在する浴感が得られ、入浴中は体全体が石灰で覆われたキシキシ感に包まれるのですが、お湯から上がると一転して肌がツルサラになり、何とも言えない爽快なお湯です。渡島半島の中部には重炭酸土類泉的な温泉が多く存在しており、この温泉もそのひとつに含まれるかと思いますが、あくまで個人的な感想ですが、少なくとも拙ブログで取り上げてきた見市や乙部よりはこちらのお湯の方が自分の肌に合うようでした。


 
次に露天風呂へ。
ちょっと目を傍を流れる川の上流方向へ向けてみますと、川に架かる赤い橋の下には、モンスターの顎を彷彿とさせる石灰の析出物丘が形成されていました。おそらく内湯の排湯が川へ落ちる箇所なのでしょうね。


 
アクリル波板で囲まれた階段を川へ向かって下りてゆくと露天風呂です。


 
渓流に沿って展がっている開放的なロケーションで湯船も大きく、上流側の赤い吊り橋が景色にアクセントを加えています。まるで風景画の中に紛れ込んだかのような世界。今回は山が冬の装いを纏う直前に訪れたので、目の前には枯れ木が広がるばかりでしたが、きっと新緑や紅葉のシーズンには明媚なのでしょうね。
訪問時(午前11時頃)は清掃して間もなかったため、お湯が半分くらいしか溜まっていませんでしたが(仲居さんから予め説明を受けています)、ちょっと寝そべれば肩までちゃんと浸かれました。



この露天などで用いられている岩は道南界隈や羊蹄山から運んできたものなんだそうです。わざわざこんな山奥まで運んだんですね。



露天の湯口は湯面下に2箇所ほどあるらしく、建物側の側面に沿ってブクブクと泡があげながら源泉が供給されていました。また川へ向かって2本の溝が設けられており、そこから排湯されていました。内湯と同じ源泉のはずですが、外気に触れて熱が奪われてしまうためか、露天のお湯はちょっとぬるく、また酸化も進むために内湯よりも濁り方が強く、いくらか橙色を帯びた黄土色に強く混濁し、浴槽底は全く見えませんでした。尤もこれはまだお湯を溜めている段階での話ですから、お湯がしっかり溢れ出るような状態になればコンディションも変わってくるのでしょうね。

正直なところ、立派な建物を目にした時にはお湯に対してあまり期待していなかったのですが、実際に利用してみたら、湯量の豊富さと質感の良さにすっかり惚れてしまいました。水産関係の会社が運営しているので食事には期待できそうですし、スタッフの方の対応にも好感が持てましたので、次回訪問時は是非宿泊で利用したいものです。


おぼこ荘3号井・5号井混合
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉 混合45.5℃ pH6.4 600L/min(混合・動力揚湯) 溶存物質3.209g/kg 成分総計3.831g/kg
Na+:662.0mg(66.02mval%), Mg++:54.4mg(10.27mval%), Ca++:171.1mg(19.56mval%),
Cl-:731.1mg(45.74mval%), SO4--:205.9mg(9.52mval%), HCO3--:1229mg(44.68mval%),
H2SiO3:41.1mg, HBO2:46.3mg, CO2:622.0mg,
加水あり(源泉温度が高いため)・加温循環消毒なし

北海道二海郡八雲町鉛川622
0137-63-3123
ホームページ

日帰り入浴11:00~21:00
450円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント
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