ウトロの赤沢温泉といえば、温泉ファンでしたら丘の上にポツンと建つ某民家のお風呂を連想される方も多いかと思いますが、今回はスケジュールの都合でそちらには寄れず、その代わり同じ源泉を引いている海岸沿いの「国民宿舎桂田」で宿泊してまいりました。ウトロの中心部からはちょっと離れていますが、リーズナブル且つ源泉かけ流しという条件でウトロのお宿を探していたら、こちらがその条件にピッタリ当てはまったので、今回一泊することにしました。
国民宿舎らしく昭和の香りが漂うロビーは実用的な作りですが、ブランドピアノや装飾の数々が家庭的な雰囲気を漂わせ、手書きのボードなどがスタッフのハートフルさを伝えてくれています。このロビーの右側が食堂、左側の奥が浴室です。
今回通されたお部屋は海を望む2階の6畳和室です。一人旅にはぴったりのサイズですね。室内はよく清掃されており、テレビや冷蔵庫も備え付けられているので、快適に過ごせました。
窓からの眺めはこんな感じ。画像左(上)は夕刻の眺め。残念ながら日没には間に合いませんでしたが、もうちょっと早く到着していれば、部屋から海に沈む夕日を眺めることができたことでしょう。画像右(下)は早朝の様子です。
お食事は食堂でいただきます。ご飯やお味噌汁はセルフでよそいますが、その他は配膳してくれます。夕食の主役はひときわ目立った存在感を放っている毛ガニでして、その他にはタコ・甘エビ・ツブの刺身など海の幸を中心にした北海道の味覚が盛りだくさん。北海道のステレオタイプ通りのメニューといっては身も蓋もないかもしれませんが、料金の割には献立が多くて味もよく、こんなに食べちゃって大丈夫なのと不安になるほどのボリュームでした。なおこの日は私のような一人旅の男が多く、しかも初めて北海道へ来た方も何人かいらっしゃって、みなさん箸で膳をつつきながらそれぞれ旅の感動を口にしていました。やはりお値段の手頃さとネット予約できる気楽さが、一人旅の人間を惹き付けるのでしょう。私もそんな人間の一人であります。
朝食も意外とボリュームがありますから、私のような無芸大食野郎でも大満足です。
さて腹を満たしたところで、お風呂へと参りましょう。脱衣室はこんじまりとしており、棚は9つぐらいしかありませんが、ひとつひとつは大きく造られており、清掃も行き届いているので、何ら不自由なく使えました。
浴室も民宿を思わせるようなコンパクトな造りです。亜麻色の濃淡のタイルが張られた室内にはシャワー付き混合水栓が2基設置されており、海に面した窓の下には3人サイズの浴槽が据えられています。
湯口の下には髭のように析出が付着しており、温泉に含まれる成分によって赤茶色に染まっています。その湯口から落とされたお湯は湯船を満たした後、浴槽縁の切り欠けから洗い場の床へと排湯され、その流路は成分析出によって赤茶色に縁取られていました。湯船のお湯はチェックインした日には若干赤みを有した山吹色に弱く濁っていましたが、翌朝には灰色と緑色が混在したような黄色に混濁しており、コンディションや室内照度によって見え方が変わってくるようです。湯口のお湯を掬って口にしてみると、塩味+出汁味+金気+石膏+炭酸がミックスされた味、そして金気臭+石膏系の匂い+ほのかな磯の香りが感じられました。入浴中の肌への泡付きこそありませんが、意外と炭酸味がはっきりしていたように記憶しています。全身浴すると、キシキシ引っかかる浴感と食塩泉らしいツルスベ感が混在していました。また湯上りはかなり保温効果が持続するので、もし宿泊時で夜間に寒くなったら、迷わずお風呂に入って温まれば、冷え性知らずで心地よく就寝できるのではないかと思います。
こちらは宿自慢の露天風呂です。オホーツク海を一望できちゃうんですね。といっても、内湯に輪をかけたコンパクトなサイズであり、目の前は駐車場と国道ですし、道路に沿って電線が幾条も横切ってますし、湯船に浸かっちゃうと目隠しの簾しか目に入って来ませんが、それでも大海原を眺望できるロケーションであることには相違なく、温泉で火照った体をオホーツクの海原から吹いてくる風でクールダウンさせると爽快この上ありません。時間帯によっては海に沈みゆく夕陽を眺めながら露天風呂に浸かることもできそうですね。
この日の露天は、源泉投入量が絞り気味だったためか、外気によって冷却されてちょっとぬるめでしたが、長湯するには却ってちょうど良く、潮騒を耳にしながら露天と内湯を行き来して入浴を楽しみました。
なお今回の宿泊中には3度お風呂を利用しましたが、誰もいなかった夜中では露天風呂もしっかり42℃以上の温度をキープしていました。内湯・露天ともに浴槽が小さいのでどうしても混雑の影響を受けやすいのでしょう、お客さんが多い時と誰も居ない時ではお湯のコンディションが全然異なっており、当然ながら誰もいない時間帯のほうがお湯がシャキットしており、湯加減も高めでした。もちろんお宿の方ではこまめに湯加減の調整をしているかと思われ、お客さんに合わせて敢えて熱くしないようにしているのかもしれません。
ウトロは知床という人気観光地の拠点であるために宿泊料金の相場はちょっと高めですが、そんな中にあって掛け流しの温泉に入れるこちらのお宿は、コストパフォーマンスに優れた旅人の味方ではないかと思います。
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉 55.3℃ pH6.8 溶存物質5.857g/kg 成分総計6.210g/kg
Na+:1772mg(88.46mval%), Ca++:107.5mg(61mval%),
Cl-:2062mg(66.61mval%), SO4--:352.1mg(8.40mval%), HCO3-:1328mg(24.92mval%),
H2SiO3:106.6mg, CO2:353.3mg,
ウトロ温泉バスターミナルから徒歩20分(1.7km)
北海道斜里郡斜里町ウトロ東361 地図
0152-24-2752
ホームページ
日帰り入浴12:00~18:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★+0.5