温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

台温泉 精華の湯

2009年06月23日 | 岩手県


JR花巻駅からバスで25分程揺られ、花巻温泉を越えて山の奥へ入ってゆくと、狭い谷間に旅館が犇めき合う台温泉に辿りつきます。約1200年前に坂上田村麻呂が発見したという伝説が残っていますが、実際には1387年(元中年間)に開湯されたようです。その後当地は南部氏の領土となり、南部藩はここに湯守を置いたり殿様が湯治するための宿泊所を建てるなど、藩の管理の下で湯治場として発展し現在に至っています。

この台温泉に唯一存在する日帰り入浴施設が今回紹介する「精華の湯」です。建物はもともと新日鉄釜石の保養所だったそうですがこれを改装増築し、正面向かって右側を日帰り入浴施設として、また左側をお蕎麦屋さんとして営業しています。最近オープンした入浴施設にしては珍しく、お風呂は内湯のみの至ってシンプルな構造ながら、浴室は大きなガラス張りなので開放感が得られます。浴槽は二つに仕切られ、熱めと温めに分かれています。お湯は無色透明で綺麗に澄んでおり、口に含んでみると弱い塩味とたまご味が感じられました。またたまごの匂いが漂い、特に湯口付近ではそれがはっきりと確認できます。お湯の中では白い湯の華が沢山浮遊していました。

上述のように嘗てこの温泉地は栄えていたそうですが、今では廃業した旅館も目立ち、どこか寂しげな空気が漂っています。しかし谷間に建ち並ぶ昔ながらの木造の建物を眺めてそぞろ歩きしながら、湯上りの火照った体を冷まして情緒に浸れば、のんびりと落ち着いた時間を過ごせることと思います。




谷間の狭い道沿いに軒を並べる温泉街


散策中に見つけた源泉 硫黄の匂いが強く漂う


「精華の湯」と棟続きになっているお蕎麦屋さん「かみや」の蕎麦
「六合引きのそばの芯粉100%でつなぎなしの手打ちそば」だそうです
落ち着いた雰囲気の部屋で頂け、そばの香りが佳くとても美味でした


含硫黄・ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉
95.8℃ pH8.2 56L/min 

JR東北本線・花巻駅より岩手県交通バス・台温泉行バスで終点下車
岩手県花巻市台2-56-1 地図
0198-27-2426
ホームページ
路線バス時刻表

6:00~22:00
500円

私の好み:★★
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鹿教湯温泉 町・高梨共同浴場

2009年06月22日 | 長野県


信州・上田の西には別所や田沢などいくつもの温泉が集まる丸子温泉郷がありますが、このうち最も規模の大きな温泉地が鹿教湯温泉です。鹿が教えた湯と書いて「かけゆ」と読みます。文字通りこの温泉には、鹿の姿を借りた文殊菩薩が、信仰の篤い猟師に温泉が湧く場所を教えたという伝説が残っており、その開湯は約1200年前にも遡るのだそうです。

鹿教湯温泉には2つの共同浴場があり、そのうち五台橋のたもとにある「文殊の湯」は観光客も気軽に入れる有名な外湯ですが、今回紹介するのはもうひとつの外湯で温泉街の入り口に位置している「町・高梨共同浴場」です。町というのは町営という意味ではなく集落の名前です。一応温泉街の通りには面しているのですが、奥まったところに建っているので注意しないと見逃してしまうかもしれません。

私の訪問時は土曜の午後4時頃でしたが、先客も後客もおらずひたすらお湯を独占することができました。無人施設ですので自分で料金箱にお金を入れます。建物は何の飾り気も無い至ってシンプルなもので、脱衣所も浴室も5~6人でいっぱいになってしまう程のスペースです。タイル貼りの浴槽にはライオンの湯口から無色透明のお湯が掛け流されています。湯船のお湯には細かくて白い浮遊物が舞い、また小さな気泡も確認できます。ほぼ無味無臭ですが、石膏の味と匂いが感じられました。その石膏ならではの感触を裏付けるように湯口のライオンは白い析出で薄く覆われています。湯上りはさっぱりしながらもなかなか湯冷めしません。分析表では単純泉と表記されていましたが、石膏らしさが感じられる点から考えても、普通の単純泉ではなく硫酸塩泉に近い泉質を有しているものと思われます。地味な立地で質素な湯屋ながら、とても良質なお湯を堪能できる、温泉ファンにおすすめの浴場です。

余談ですがここへ向かう途中、通りかかった小学生が皆「こんにちは」とはっきり挨拶してくれたことが強く心に残りました。見知らぬ人にも挨拶を心掛ける教育が施されているのでしょう。お湯も温かければ人も温かい。鹿教湯がますます好きになりました。




単純泉
45.8℃ pH7.8 成分総計622.5mg/kg

長野県上田市西内885 地図
鹿教湯温泉ホームページ

7:00頃~21:00頃 原則無休
200円

私の好み:★★★
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三瓶温泉 亀の湯

2009年06月20日 | 島根県


高原の風が爽快な島根県・三瓶山の南麓に位置する三瓶温泉郷は、温泉郷とはいえひっそりとした小規模なもので、共同浴場の「志学薬師湯(鶴の湯)」を中心に数軒の旅館や民宿があるばかりですが、そのこじんまりとした温泉街から外れてS字の坂を下り志学集落に入ると、もうひとつの共同浴場「亀の湯」があります。「志学薬師湯」は温泉街の中央に立地しているので、地元の方のみならず観光客も訪問しやすいのですが、一方で「亀の湯」は温泉街から完全に外れていているため、地元の人以外に知られることはないでしょう。

当初私は「志学薬師湯」に入ろうと思っていたのですが、現地に着いたのはお昼過ぎでここは夕方から営業とのことでしたので、第二候補であった「亀の湯」を訪れました。「亀の湯」も正式には夕方からなのですが、営業前は施錠されている「志学薬師湯」と違ってこちらは正式営業前にも入ることが出来るのです。どういうことかというと、三瓶温泉は源泉温度が37℃であり使用位置では33℃まで下がってしまうため、加熱しないと浴用には適さないのですが、ここ最近の原油価格高騰によってボイラーの燃料代も上がってしまったため、経費削減の苦肉の策として加熱時間を(「志学薬師湯」の場合は営業時間そのものを)夕方からにしたようなのです。その旨が書かれた紙が入口に貼られていていました。よって「亀の湯」は夕方以前に入ると加熱されていないぬるいお湯に入ることになるのですが、入湯そのものが禁止されているわけではないので、ぬるくてよければ加熱時間前でも入って構わないようです。

私が訪問した時間は加熱時間前だったので、どれだけぬるいものか恐る恐る掛け湯をしてみたら、思いのほかそんなにぬるく感じず、湯船に足を入れてみても確かにぬるいが決して冷たくはなく温かい方だったので、そのまま全身浸かってみました。小判型の湯船には塩ビの太いパイプから次々と源泉そのままのお湯がドバドバ注がれ、のみならず湯船の中央に立ち上がった湯口からもお湯が供給され、ダブルの湯口から投入されたお湯は絶え間なく贅沢にザバザバと掛け流されていました。
黄金色に濁ったお湯は弱い塩味と金気味を帯びており、色から想像できるように微かに金気臭と土臭が感じられます。営業時間前なのでお客さんは誰もおらず、新鮮なお湯をひたすら独り占め。目の前で凄まじい量のお湯が注がれている様を眺めているだけで何とも贅沢な気分です。そればかりか、ぬるいにもかかわらず炭酸ガスの影響か湯上り後も体がポカポカするのです。これぞ自然の恵み、ありがたいものです。
マニア志向の施設ですが、お湯の良さは保証します。第二候補でしたがこちらに入って大正解。是非訪れてみてください。




頂点が盛り上がって大量に供給されるお湯


ナトリウム-塩化物泉
37.5℃ 成分総計2.44g/kg 

島根県大田市三瓶町志学ロ357-1 地図
0854-83-2537
(正面左手・裏手に駐車場有)

4月~10月:17:00~21:30
11月~3月:17:00~21:00
(いずれも加熱時間)
200円

私の好み:★★★
コメント (3)
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東根温泉 いしの湯

2009年06月19日 | 山形県


さくらんぼの生産で有名な山形県東根市には東根温泉という温泉郷があり、数々の旅館と共に共同浴場も5ヶ所ほど点在しています。いずれも周囲の住宅に紛れるように佇んでいるので、注意して看板を見落とさないようにしないとその存在に気づかないかもしれません。

今回紹介する「いしの湯」は温泉街の外れにあり、外見は看板が無ければ単なる民家で、一見すると営業しているかどうかもわからないのですが、玄関の引き戸を開けて声を掛けると、中から奥さんらしき方が出てきてくれました。玄関を入って右へ進んだ奥左手が浴室となっています。内湯のみで、脱衣所も浴室もこじんまりとしており、4人も入ればいっぱいになってしまいそうな程でしたが、訪問時には私以外に客がおらず、気兼ねなくのんびりと湯浴みすることができました。

タイル貼りの浴槽には薄い黄色で透明なお湯が張られていて、静かに掛け流されていました。口に含むと舌に何かしらの味が残るのですがそれが何の味であるかわかりません。ほぼ無味といっていいでしょう。匂いもほぼ無臭ですが、浴槽の隣にある源泉溜まり(湯口)の枡からはほんのりと硫黄の匂いが漂っていました。浴感はスベスベとキシキシが混在していますが、スベスベが勝っているような気がしました。お湯の中では白い繊維状の湯の華がちらほらと舞っています。分析表によれば源泉温度は67.5℃で使用位置では62.0℃となっていますが、実際の浴槽では40℃程でゆっくり長湯することができました。

窓から外を見ても住宅が見えるばかりで視覚的には取り立てて楽しめる面はありませんが、目立たないがゆえに喧騒や混雑とは無縁であり、静かな環境の中で自分のペースで良質なお湯に長く浸り、目を閉じて瞑想に耽ると一切のストレスから開放されるようでした。東根温泉の共同浴場の中では最も気に入りました。




源泉溜まり(湯口)


ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉
67.5℃ pH8.0 溶存総計1151mg/kg 

JR奥羽本線・東根駅 徒歩15分(1.3km)
山形県東根市温泉町1-22-5 地図
0237-43-2201
東根温泉協同組合

8:00~20:00 毎月1・16日休業
150円 

私の好み:★★★
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北海道の温泉 その後

2009年06月17日 | 北海道
以前ご紹介した北海道の温泉に関して、その後事情が変わっているところがありますので報告します。

(1)オサル湯

オサル湯そのものは以前のままですが、「蟠渓温泉健康センター」の右隣に広がっていた駐車スペースとなる空き地が現在工事の詰め所になっており、車がとめられない状態です。このため駐車には別の場所を見つけなければなりません。「蟠渓温泉健康センター」にも駐車スペースはありますが狭いため、オサル湯のためだけに車をとめるのは失礼かと思われます。



(2)フンベの湯



フンベの湯の入り口には以前から立入禁止の看板が立てられていましたが、この春からバリケードが設けられて更に入りにくくなっています。というのも、写真でみればわかりますが、湯屋の真下の崖が波でえぐれて崩壊する危険性が高まってきたからです。このため当ブログで紹介した赤いバラックのような湯屋は現在取り壊されており、入り口に近い方に青い湯屋が新たに建て直されました。内部の構造は以前とあまりかわりなく、従前のお湯を楽しむことが出来ます。私が5月下旬に訪れた時には狭い湯屋に6人ものお客さんが詰め寄せ、秘湯ながら大変な賑わいでした。

しかし新築早々登別市から、違法建築であるから撤去せよという指示が湯屋の管理者へ通告され、早くも予断を許さない状態に立たされています。そもそも市の所有地へ勝手に湯屋を建てたものであり、それを黙認してもらってきた経緯があって、にもかかわらず更に建て直したわけですので、上述のように崩壊の危険性がありながら看過するわけにはいかないというのが市の立場なのでしょう(通告の理由には「市が何もしないのはおかしい」とか「建物が立派過ぎる」といったことも挙げられていました)。今までのように曖昧のまま黙認され続けるかもしれませんが、最悪の場合は市が強制的に撤去する可能性もあります。実際いままでも市によって源泉のパイプを切断されることがあったそうです。

このような微妙な状況なので、当ブログでは現在のフンベの湯の姿を撮影した画像は掲載しません(脱衣所内にも撮影を禁じる掲示が貼られていました)。管理者側はインターネット等でフンベの湯が更に有名になって問題がこじれてしまうことに危機感を抱いているようです。気のせいかもしれませんが、常連さんは外部の人間に対してナイーブになっているようにも感じられました。これから訪れようとお考えの方はこうした事情を踏まえた上で、湯屋を管理されている方への感謝の気持ちを忘れないようにしてください。
尚、旧湯屋では夜間の照明としてロウソクが用いられていましたが、新しい湯屋ではロウソクは使用禁止となっていました。



(3)ヌプントムラウシ温泉

まだ当ブログではご紹介していませんが、新得から道道718号線をひたすら北上して更に林道を登ったところにある秘湯「ヌプントムラウシ温泉」は、温泉ファンには有名な温泉ですが、先日訪問しようと林道を進んでいると、道道と林道の分岐点である曙橋から約2kmのところでバリケードが設置され、通行止になっていました。林道の路肩が崩壊して通行できないとのことです。

北海道の野湯をたくさん巡っている事情通の情報によれば、路肩崩壊箇所にはロープが張られているのですが、このロープをどかして逆側(山側)の路肩にタイヤを載せれば何とか進めるそうです。しかし現地へ到達してもバルブが壊れていてお湯に入れる状況ではないそうです。ということで、林道の復旧まで当分は入湯を諦めざるを得ません。






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