温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

伊香保温泉 処々や

2013年02月23日 | 群馬県
※現在お風呂には入れなくなってしまったようです。


石段を登り切った一番上に建つお食事処「処々や」。店頭カウンターでは「伊香保焼き」と称するたこ焼きを販売しており、その絶好な立地条件のために、石段を登りきって一休みがてらたこ焼きを摘もうとする観光客の姿がこの日もたくさんいらっしゃいました。さて、このお店に関して「伊香保 処々や」という検索ワードでググってみますと、本来は食事処のはずなのに、なぜか検索結果上位に列挙されるのは食べログでもぐるなびでもなく、名だたる温泉ファンサイトの数々。店頭のどこにも入浴可能なんて文言はありませんが、ネット上の情報によればここでお風呂に入れるらしいので、そんな隠れキャラのような存在感に誘惑され、ちょうどお昼でお腹が空いていたので、ランチがてら暖簾を潜ってみることにしました。


 
お食事の方は2階へ。元々は旅館だったそうでして、急な階段や低い天井はいかにも古い日本建築そのものですが、石段が眼下にまっすぐ伸びる客室の窓はとても見晴らしが良くて爽快です。また客席はテーブルで一席一席にもゆとりがあり、眺望を楽しみながらゆったりと食事することができました。
水沢うどんの土地柄ですからうどんを頼めばよかったのかもしれませんが、この時は蕎麦が食べたかったので天ざるを注文しました。そのオーダーの際に「食後にお風呂へ入りたいのですが」と伝えますと、係の方は心得たと言わんばかりに頷いて、伝票の一番下に温泉マークを書き入れてくれます。


 
食後に精算を済ませると、係の方がお風呂へと案内してくださいます。2階へ上がる階段の踊り場にその入口があり、私が入ろうとすると入口の札を裏返して「入浴中」にしてくれました。貸切利用なんですね。脱衣室は狭くてただ棚が備え付けられているだけ。前回取り上げた「吉田屋旅館」と同じく、浴室は男女別に分かれているものの、女湯へは男湯の脱衣室を通り抜けていかねばならない構造です。


 
浴室にはどなたもいなかったので、入浴前に女湯を見学させていただきました。


 
続いて男湯のお風呂へ。ひょうたんの縦に切ったような浴槽を反転させた「く」の字型の仕切りで男女に隔てたような構造をしており、昔の旅館らしく男湯は空間も浴槽サイズも女湯より一回り大きく確保されていました。男湯女湯ともにシャワー等といった現代的な設備はなく、水道の蛇口が一つとそれにぶら下がっているネット入りの石鹸が一個あるのみ。渋い佇まいのお風呂は、まるで湯治宿のようです。
天井に湯気抜きはあるのですが外気との温度差が影響してるのか、室内には濛々と湯気が充満しており、それとともに黄土色にらしい金気や石膏の匂いもしっかり篭っていました。



やはり「吉田屋旅館」と同じく両浴室の間にはパイプシャフト的な空間があり、その内部では滝のように源泉が落とされていて、飛沫をあげながら轟々と落とされるその音は浴室内で大ボリュームで響いており、また飛び散る温泉によってタイルの壁面も赤茶色に染まっていました。お湯を手にとって口にしてみますと、鉄錆味+石膏味+土気味+微塩味が感じられます。なお、この湯口の空間を覗くと女湯が丸見えだったりするんですね。ま、貸切利用だから問題ないですね。


 
入浴する前の湯船に張られているお湯はモスグリーンを帯びた暗い山吹色の薄混濁でしたが、足を入れてお湯を動かすと底に溜まっていた沈殿が撹拌されて忽ち赤錆色に強く濁り、その透明度は15cmあるかないかで、底は全く見えなくなっちゃいました。
上画像で2枚の写真を並べ比較しましたが、左(上)画像の暗いモスグリーンのお湯が入浴前、右(下)の赤い濁り湯が入浴後です。沈殿の撹拌によって混濁具合が全く異なることが、明確におわかりいただけるかと思います。

浴室へ入る際にお店の方が「今時期の伊香保のお湯はぬるいですので、ゆっくり長湯してください」とおっしゃっていましたが、その通りに40℃を下回っているような湯加減でした。でもこれは即ち非加温ということであり、加温加水循環濾過が一切行われていない正真正銘の完全放流式の湯使いであり、実際に長湯をしたら湯上りには外套が暑く感じられるほど体の芯までしっかり温まりました。これぞ伊香保の湯のパワーなんですね。
湯船に体を沈めるとオーバーフローによって洗い場が洪水状態になってしまいます。また湯上りに体をタオルで拭うと、タオルはオレンジ色に染まってしまいました。前回取り上げた「吉田屋旅館」では、このお風呂より石段の下方に位置しているにもかかわらず、ここほどお湯は濁らず、またタオルもそれほど染まりませんでした。この違いはどういうことなんでしょうか…。お湯の濁り方は石段の上下位置によって左右されるのかと言えば、そう単純な原理では片付けられないんですね。

そんな屁理屈はともかく、完全かけ流しの黄金の湯が貸切で堪能できる素晴らしいお風呂を利用することができ、温泉ファンの皆さんが絶賛されていた理由に心の底から納得しました。


総合湯
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉 42.0℃ pH6.3 蒸発残留物1.05g/kg 成分総計1.39g/kg
Na+:115mg, Ca++:138mg, Fe++:7.34mg,
Cl-:127mg, SO4--:313mg, HCO3-:278mg,
H2SiO3:181mg, CO2:174mg,

JR渋川駅より関越交通バスで伊香保温泉バスターミナル下車、徒歩4分(約350m)
群馬県渋川市伊香保町伊香保10  地図
0279-72-2156

10:00~17:00 水曜・木曜定休
食事をすれば入浴可能
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (4)
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伊香保温泉 吉田屋旅館

2013年02月22日 | 群馬県
群馬県民なら誰しも知っているであろう上毛カルタ。必ず対戦のはじめに読む「つる舞う形の群馬県」に関しては、なんと「つるまう」の4文字を入力しただけでGoogleが予測変換してくれるほど今ではそれなりに知名度も上がってきましたが、この他の句も「ねぎとこんにゃく下仁田名産」「浅間のいたずら鬼の押し出し」などなど、中山秀征と井森美幸の普及活動のおかげで、東京生まれ神奈川育ちの私だって多少は暗誦できるようになりました。そんな読み札のうち、いろはの「い」は言わずもがな「伊香保温泉 日本の名湯」であります。そんなこんなで、今回からは伊香保温泉にスポットを当ててみます。我が川崎市からも楽に日帰りできる手軽な温泉地ですから、私もしばしば訪れていますが、どういうわけか今まで拙ブログではひとつも記事にしてきませんでしたので、ブログの中身を厚くするために3回連続で取り上げる所存です。

皆様御存知のように、伊香保温泉の主役である黄金の湯は泉源から石段の下を流れ、小間口によって分配されて各旅館へと供給されているわけですが(詳しくは伊香保温泉小間口権者組合のサイトをご参照あれ)、最下流の末端まで延長は2.1kmにも及んでいるため、炭酸ガスと鉄分を多く含む黄金の湯はその流下過程で炭酸が抜ける一方で鉄は酸化し、石段の上と下とでは同じお湯でも様相に相当の違いが見られるので、湯めぐりしながらその相違を実感するのも一興です。高崎や前橋などの平野部に上州名物「からっ風」が吹いていた冬の某日、私は当地にて石段の下から上へ向かって温泉のハシゴを楽しんでみました。ただ、伊香保のお湯は泉源の時点で45℃に満たず、流下に連れて徐々に温度が低下してしまって、石段の下方の施設では加温しないと入浴に適さないため(そして伊香保のような泉質は加温しちゃうと変質してしまうため)、今回は加温せずに入浴ができる石段中程から上の施設を選ばせていただきました。まずはじめは石段から狭い路地へ入ったところ、「金太夫」の手前に位置している「吉田屋旅館」です。


 
軽量鉄骨の古びた建物で湯治宿風情たっぷりのお宿。玄関などには「日帰り入浴」に関する案内は掲示されておらず、ぱっと見は館内が薄暗かったので営業していないのかと不安になりましたが、玄関にて声を掛けましたらご主人が現れて快く入浴をOKして下さり、「冬の伊香保の湯はぬるいので、ゆっくりと入ってくださいね」と案内してくれました。


 
浴室入口脇にある洗面台は昔ながらのタイル貼りで、角のRがとってもレトロです。


 
浴室入口は男女共通で、男湯の脱衣所の奥に女湯があるため、女湯にはまず男湯の脱衣室を通り過ぎないと行けません。この手の構造は伊香保温泉の古い中小規模旅館でしばしば見られますね。
脱衣室は棚がくくりつけられているだけの至ってシンプルな造りです。


 
浴室もかなり質素で、モルタル造で2人サイズの浴槽があるばかり。床にはスノコが敷かれています。洗い場には水道の蛇口が一つあるだけで、シャワーなんて現代的な設備は無し。余計なものは排除されたこのお風呂では、邪念を払ってお湯にひたすら対峙することが最大にして唯一の目的なのであります。



女湯との仕切りは曇りガラスですが、その上から全く透過性のないプラ板で目隠しされています。


 
モスグリーンを帯びた山吹色に暗く濁る浴槽のお湯。長年使い込まれた浴槽の縁は入浴客が度重なり触れることによって研磨されて滑らかになっていますが、コーナー部分は温泉析出がこびりついて凸凹をなしており、そこに温泉成分のオレンジ色の澱が付着していました。お湯自体は30~40cm程の透明度があり、底には湯の華が沈殿していますが、お湯を撹拌してもそれほど濁り方が濃くなるようなことはありません。石段の真ん中あたりから分配されたお湯を受けて利用しているものと思われますが、加温しなくても浴用利用できるような段階であるためか、鮮度感は良好、炭酸もさほど抜けておらず、鉄分の酸化も軽度で済んでいるためか濁り方もそれほど濃くはありません。


 
男女両浴槽の間に立つパイプシャフトのような縦に細長い空間には木の扉が取り付けられており、そこを開けてみると…


 
滝のように勢い良く温泉が落とされていました。その下部は瘤が垂れ下がっている瘤取り爺さんのような、うろこ状の析出が層をなして付着しています。この造形を目にして私はかなり興奮し、指先で表面を何度も擦ってしまいました。お湯からはいかにも伊香保らしい金気・石膏・土気の味や匂いが放たれ、微塩味+弱炭酸味、湯口では何かが燻されたようなお焦げ系の香ばしい匂いもふんわり漂ってきました。
加温加水循環消毒は一切ない完全放流式の湯使い。非加温でぬるく40℃あるかないかの温度ですが、肩まで浸かってじっくり長湯すると、コートが不要なほど体の芯からしっかり温まりました。黄金の湯は何度入っても飽きませんね。ご主人のお話ですと、このぬるさに苦言を呈するお客さんもいるようですが、加温しないで入れる伊香保のお風呂は貴重なんですから、そんな文句は野暮ってもんです。きっと「風呂もお茶もチンチンに沸かした熱い方がいいに決まってる」なんて御託を並べて、ケトルのようなご自身の禿頭から湯気を濛々と上げて高血圧でフラフラしているに違いありません。
なお、こちらのお風呂では湯上りにタオルで体を拭ってもタイルが赤く染まるようなことはありませんでした。

ところでこのお風呂の源泉投入法に伝統を背負う当地らしい美意識と品の良さを感じたのは私だけでしょうか。温泉界ではこれみよがしに滝の如く大量のお湯を落とす湯口がもてはやされますが、たとえばスーツは表地をシックにして裏地に拘ることこそ本物のオシャレであるように、こうしてしっかりお湯が注がれていることを匂わせつつもその様子を隠すことこそ、真の上品ではないか…と改めて認識した次第です。



女湯には誰もいなかったので、見学のみさせていただくことに。男湯とはシンメトリになっているんですね。


 
お風呂から上がって玄関のほうへ戻ると、帳場のコルクボードに張られた紙には「金太夫の足湯も利用可能」とのこと。


 
ご主人に挨拶してから退館し、ちょっとだけお隣の旅館「金太夫」裏手に設けられている足湯にも寄ってみました。温泉街散策の途中に利用している観光客も多いようでした。足湯という設備は温泉街には欠かせない存在になりましたね。


総合湯
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉 42.0℃ pH6.3 蒸発残留物1.05g/kg 成分総計1.39g/kg
Na+:115mg, Ca++:138mg, Fe++:7.34mg,
Cl-:127mg, SO4--:313mg, HCO3-:278mg,
H2SiO3:181mg, CO2:174mg,

JR渋川駅より関越交通バスで伊香保温泉バスターミナル下車、徒歩3分(約300m)
群馬県渋川市伊香保町伊香保49  地図
0279-72-2378

日帰り入浴時間不明
300円
ドライヤー・シャンプー類あり

私の好み:★★★
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飯坂温泉 十綱の湯・八幡の湯

2013年02月21日 | 福島県
前回まで飯坂温泉の記事を3回連続投稿してきましたが、恥のかきついでに、良い画像が無くていままで取り上げることを躊躇っていた2軒を、宜しくない状態のまんま「蔵出し」させていただきます。ちょっと古めの画像と情報でごめんなさい。


●十綱湯
 
温泉街からはかなり外れた住宅街の一角にある飯坂の共同浴場のひとつ。駅から迷わず来られれば歩いて2~3分の距離ですが、微妙にカーブした路地が方向感覚を狂わせ、しかも一般的な住宅ばかりで目印になるような建物がないため、意外と見つけにくくてたどり着くまで右往左往してしまいました。住宅街を彷徨する他所者の私は不審者の姿そのものだったでしょうね。

変電所か倉庫などを想像させるような平屋で箱型の飾り気のない建物ですが、そんな素気なさを打ち消さんばかりに提げられた「はいらんしょ」の札、その上に浴場名が記された扁額などなどが装飾された外観は、飯坂の共同浴場の標準的な装いそのものですね。

浴室もこれまた飯坂の共同浴場標準のレイアウトであり、すなわちタイル張りの床の中央に今川焼のような形状の浴槽が据えられ、その中央に立ち上がった小島のような湯口からアツアツのお湯が注がれています。浴槽加水用の水道蛇口以外にカランは無く、常連客はみなさんタイルの床へ直にベタっと坐って、湯船から直接お湯を汲んでシャンプーやら髭剃りやらに励んでおります。浴槽真ん中に突き出た湯口はT字型に分岐していてその両側からお湯が吐き出され、その頭頂にはこれまた飯坂ではおなじみの温度計が設置されており、ホースでじゃんじゃん加水しているにもかかわらず、この時は47℃を指していました。

こちらのお湯は大門分湯槽から引いており、見た目は無色澄明、手に掬って口にしてみるとパラフィンワックスを思わせる温泉由来の香りと芒硝味が感じられます。湯船に体を沈めると硫酸塩らしいピリピリと引っかかりが肌に伝わりますが、それでいて柔らかく優しい浴感やスベスベ感もあり、一般的に47℃だったら熱くてなかなか入れませんが、そんな感触のおかげかこの時は不思議と大して苦も無く全身浴できました。


大門分湯槽
単純温泉 68.3℃ pH8.4 蒸発残留物912.1mg/kg 成分総計916.4mg/kg
Na+:243.3mg, Ca++:38.1mg,
Cl-:116.3mg, SO4--:386.6mg,
H2SiO3:83.7mg,
(平成19年8月1日)

福島交通飯坂線花水坂駅より徒歩2~3分(約200m)
福島県福島市飯坂町下川原

6:00~22:00 金曜定休
200円
ロッカーあり、他の備品類なし(基本的な入浴グッズは番台で販売)

私の好み:★★



●八幡の湯
 
湯屋の前に立つ松の木が目印の「八幡の湯」。松の木を取っ払っちゃうと上述の「十綱湯」や改修前の「仙気」「導専」とほぼ同様の、飯坂の外湯標準仕様の外観であります。
近所の「鯖湖湯」が観光的な役割を果たしている外湯とするならば、こちらは温泉街中心部における生活に密着した外湯なのかもしれません。この画像を撮影した週末の夕方5時くらいに暖簾の下から中の様子を伺ったところ、ゆうに10人を超える利用客で大混雑しており、浴場前の路上駐車もひどかったので、あたりを軽く散歩して30分後に再訪問してみたら、さっきまでの混雑が嘘のように場内の客が3人まで減っていました。飯坂に限らず、共同浴場というものは大抵の場合最混雑時間が固定されているので、そこを避ければ落ち着いて利用できるものですね。



タイル張りの浴室のど真ん中に角が丸い浴槽が据えられており、その中央に突き出た温度計付きの湯口から激熱のお湯が投入されているという浴室内部の様子は典型的な飯坂の外湯の姿。浴槽サイズは5~6人といったところでしょうか。「八幡の湯」で特筆すべきは他の外湯には引かれていない源泉を用いていることですね。無色澄明のお湯からは芒硝の匂いや味がふんわりと感じられ(知覚面は他の飯坂の源泉より若干薄めかも)、熱いにもかかわらず何故か優しい当たりの浴感が楽しめました。


八幡の湯
アルカリ性単純温泉 54.6℃ pH8.6 蒸発残留物625.9mg/kg 成分総計677.7mg/kg
Na+:171.1mg, Ca++:24.2mg,
Cl-:80.0mg, SO4--:245.3mg, HCO3-:68.9mg,
H2SiO3:68.3mg,
(平成18年2月2日)

福島交通飯坂線飯坂温泉駅より徒歩8分(約500m)
福島県福島市飯坂町馬場20-1
飯坂温泉公式HP

6:00~22:00 火曜定休
200円
ロッカーあり、他の備品類なし(基本的な入浴グッズは番台で販売)

私の好み:★★
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飯坂温泉 切湯

2013年02月20日 | 福島県

摺上川の川岸の崖にへばりつくように位置している飯坂の共同浴場のひとつ「切湯」は、隠れキャラのようなロケーションゆえか(私の主観的見解ですが)比較的空いていることが多く、また他浴場と比べて一回りも二回りも小さいために「お籠り」感が得られるので、個人的には気に入っている共同浴場です。


 
川岸を下りてゆく階段の途中に番台の小屋があって、そこの券売機で料金を支払い、小屋の小窓を開けて箱に券を入れます。以前は階段と川の間に青いトタン葺きの建物が存在していましたが、今では完全に取り払われて、正面に見える「ホテル花乃湯」の側面にその跡が残っているばかり。以前は建物に挟まれて薄暗かった階段も今ではすっかり明るくなって、フェンス越しに川も望めるようになっちゃいました。



ちなみに上の画像は2008年に撮影した切湯入り口まわりの外観です。この頃は建物が蝟集しており、川の対岸は見えないような状況でした。


 
「ホテル花乃湯」の地下にある不思議な共同浴場「切湯」。外来客に媚びを売っていないコンクリ打ちっぱなしの質素な空間が何とも言えず良い感じ。奥に祀られている仏様の前にはお稲荷さんのような朱色の鳥居が立てられています。神仏習合ここにあり。



2人同時に使ったら狭く感じてしまうほど限られたスペースの脱衣室。コインロッカーが設置されている点は、外来客にとってはありがたいですね。



床はサーモンピンク、浴槽内は水色、縁は紺色のそれぞれタイル張りで、側壁はコンクリ打ちっぱなしの浴室。窓の下は摺上川です。室内にカランは無く、窓サッシ下にミラーと石鹸置きが2つあるばかり。掛け湯の際は湯船から直接桶でお湯を汲むことになります。



ちなみに上の小さな画像は2008年時点のお風呂を撮影したもの。タイルの配色こそ今と同様ですが、所々が剥がれており、現行と違って小さなタイルが敷き詰められていたんですね。



四角い浴槽は3人サイズ。浴槽の容量に対してお湯の投入量が多いのか、湯船に体を沈めると一気にお湯が溢れ出し、洗い場は洪水状態になって、その度に桶がプカプカ浮いてどこかへ行っちゃいました。


 
塩ビの直管からアツアツの源泉が投入されています。使用源泉は若竹分湯槽。ホースでしっかり加水しないと熱くて入れませんが、今回は先客がしっかり湯加減を調整してくれていたおかげで、何もしないですぐに入浴することができました。でもホースの水を止めると温度計の針はすぐに動き始め、止めて数分で42℃から45℃へと上昇してしまいました。それだけ浴槽がコンパクトなのであります。湯船が小さいためにお湯の入れ替わりが早いので、お湯のコンディションはいつ訪れても新鮮であり、時間帯のよっては混雑のためにお湯が鈍ってしまう飯坂の共同浴場の中では、そんな鈍りを気にせずに利用することができる貴重な存在でもあります。そもそも導専や仙気と違って、ここはそんなに混みませんから、静かに入浴したい場合にももってこい。共同浴場ならでは渋い雰囲気に包まれながらシャキっとした新鮮なお湯に浸かれる、いぶし銀の外湯であります。


若竹分湯槽
アルカリ性単純温泉 60.2℃ pH8.7 動力揚湯 溶存物質0.7894g/kg 成分総計0.7894g/kg
Na+:198.6mg(84.05mval%), Ca++:30.1mg(14.59mval%),
Cl-:93.8mg(25.00mval%), SO4--:321.1mg(63.11mval%),
H2SiO3:74.8mg,
(平成23年12月9日)

福島交通飯坂線飯坂線より徒歩4分(300m)
福島県福島市飯坂町湯野切湯ノ上32
飯坂温泉公式HP

6:00~22:00 月曜定休
200円
ロッカーあり、他の備品類なし(基本的な入浴グッズは番台で販売)

私の好み:★★★



●おまけ
 
「切湯」から駅方向へ戻る途中、その近所でこんな足湯を発見。名前から察するに、元々はちゃんこ鍋屋さんだったのかな。


 

民有地のようですが無料で足湯が利用できるみたいです。
なお使用されているのは若竹分湯槽のお湯でした。

コメント (3)
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飯坂温泉 仙気の湯(2013年1月再訪)

2013年02月19日 | 福島県
 
以前拙ブログで飯坂温泉の共同温泉のひとつである「導専の湯」を取り上げた際に、同施設が2010年に福島市の事業によってリニューアルされたことをレポート致しましたが、他の浴場もその事業対象に含まれており、各浴場とも大なり小なりそれなりに工事が施されております。その中でも今回は改修後になかなか行く機会がなった「仙気の湯」を再訪してみることにしました。改修は2~3年前に既に完了しており、いまさらリニューアルを伝えても記事としては微塵の価値もありませんが、ま、ここはひとつ大目に見てくださいな。拙ブログでは当浴場を改修前の2009年に一度取り上げていますが(当時の記事はこちら)、その時と比べますと建物の躯体こそそのままですが、なまこ壁が目を惹く外観はすっかり綺麗に生まれかわっており、建物も人間も化粧一つでこうも見違えてしまうものかと感心させられます。


 
名前が刻まれた石は新たしい台座に載せ替えられ、以前は素っ気がなかった頭上の扁額は墨痕鮮やかなものに掛け替えられていました。



改修後の大きな変化の一つが、(後述しますが)熱い浴槽のほか加水された浴槽が増設されたことでしょう。窓の格子には現況の湯船の温度が掲示されており、私の訪問時は熱い湯が45℃、温かい湯(つまり加水された浴槽)が43℃と記されていました。43℃でも人によっては熱いかもしれませんが、飯坂基準で考えるとかなり世間に歩み寄っている感じがします。


 
番台や脱衣室は以前とほぼ同様でしたが、大きく生まれ変わったのが浴室です。といっても、訪問時は2~3メートル先すら見えないほど湯気が立ち込めて曇っていたため、ご覧のように何を写しているんだか全くわからない画像しか手元に残りませんでした。ごめんなさい。

いつものように下手クソな文章でどのように変貌を遂げたのかご説明しますと、以前は浴室の中央に今川焼のような形をした浴槽がひとつ据えられ、その真ん中に立ち上がっている湯口から激熱湯が注がれて湯船の温度計が常に47~8℃を指しているような状態でした。それが、リニューアル後は(男湯の場合は)浴槽が室内右側に寄せられ、その浴槽は前後で二分割され、手前側が分湯槽から引かれたまんまの熱いお湯、奥側が加水されたぬるめの湯(といっても上述のように43℃)となりました。そして両浴槽の間には福島市観光PRキャラクター「ももりん」の石像が立ち、その下から両浴槽へ温泉が供給されています。「ももりん」の両耳には手桶が被せられており、こちらの常連さんにしてみれば「ももりん」の耳は単なる用具掛けに過ぎないのかもしれません。両浴槽からお湯は洗い場へザブザブと溢れ出ており、以前と同様に放流式の湯使いが堅持されています。

飯坂のお湯を愛する常連さんはてっきり熱いお湯が好きなのかとばかり思い込んでいましたが、皆さんこぞってぬるい方ばかりに入っており、熱い方へチャレンジする人に対しては常連同士で「おっ、やるねぇ」なんて冷やかしあっていました。かつては外来客が熱いお湯を水で薄めようとすると地元の常連客に怒られた、なんてトラブルを耳にしたことがありましたが、なんだぁ、本当は常連も適温のお湯が好きなんじゃん。今まではみんな意地張って我慢して熱い湯へ入っていたのかぁ。改修によって一般的な温度の浴槽が供用されて良かったですね。もう頑固になる必要はないのであります。

外観がなまこ壁を模したデザインとなったこと、浴室の片側へ寄せられて温度が異なる2つの浴槽が設けられたこと、そして「ももりん」の存在・・・。リニューアル後の「導専の湯」に瓜二つなんですね。両者はロケーションも近所ならば設計すらも似ており、しかも同じ若竹分湯槽の湯を引いているという、まさに兄弟分というべき浴場と言えそうです。


若竹分湯槽
アルカリ性単純温泉 60.2℃ pH8.7 動力揚湯 溶存物質0.7894g/kg 成分総計0.7894g/kg
Na+:198.6mg(84.05mval%), Ca++:30.1mg(14.59mval%),
Cl-:93.8mg(25.00mval%), SO4--:321.1mg(63.11mval%),
H2SiO3:74.8mg,
(平成23年12月9日)

福島交通飯坂線飯坂温泉駅より徒歩5~6分(約400m)
福島県福島市飯坂町湯野愛宕前35
飯坂温泉公式HP

6:00~22:00 木曜定休
200円
ロッカーあり、他の備品類なし(基本的な入浴グッズは番台で販売)

私の好み:★★
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