温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

台東県 霧鹿温泉 天龍温泉飯店 

2015年09月18日 | 台湾
 
台東県霧鹿峡谷の中心部にあたる霧鹿地区には、1軒の大きな温泉ホテルの他、交番や小規模の食堂などが道路沿いに固まっており、山深い景色が延々と続く南横公路の中では数少ない、人の生活が感じられる集落です。


 
その大きな温泉ホテル「天龍温泉飯店」は、南横公路の台東県側の山中では、ほぼ唯一の存在と言って良い、ちゃんとした規模のホテルであり、この界隈の観光拠点でもあります。通りからアプローチを下ったところに、公園のようなスペースを併設した広い駐車場が用意されていました。


 
ホテルの目の前の峡谷に架かる「天龍吊橋」は、南横公路の見どころのひとつ。全長およそ110メートルで、高度差40メートル。一度に通行できるのは2人までという心細い吊り橋です。


 
吊り橋は観光目的で架けられたのではなく、昭和4年に台湾総督府がれっきとした交通路として架橋したのがはじまり。ここをとば口として山奥へ伸びる道は天龍古道と称し、ブヌン族が暮らす深山幽谷の集落へと続いていたんだとか。橋の説明プレートには昭和8年に撮られた吊り橋とその傍に設置された「ブルブル渓見張所」が写っており、警官と思しき制服姿の男性が3人橋の上から川面を眺めていました。今でこそ観光名所になっているこの吊り橋は、かつては理蕃政策の拠点だったわけですね。原住民は当地をブルブルと称していたらしく、これに霧鹿霧鹿という漢字をあてたのが、現在の地名の由来になっているようです。


 
以前は観光客でも通行でき、ここから伸びる古道をトレッキングできたそうですが、訪問時は危険防止を目的として立入が禁止され、フェンスが行く手を阻んでいました。


 
さてホテルのフロントで「泡湯」(温泉入浴)をお願いしますと、フロントのお姉さんは「入浴は午後4時からなのでまだダメです」と首を横に振りました。4時からスタートとは随分遅い時間設定ですね。平日だからこの設定なのかな。時計を確認したら3:45頃だったのですが、時間感覚がおおらかな台湾にしては珍しく分単位で時間を守っており、「4時にならないとお湯が熱くならない」と頑な態度でしたので、仕方なく一旦外に出て時間を潰し、時計の針が16時を過ぎたことを確認してから、改めてフロントを訪問して、ようやく入浴することができました。

台湾東部の温泉にしてはちょっと高めの入浴料250元を支払うと、引き換えに不織布ガーゼみたいな薄っぺらい使い捨てタオルみたいなもの手渡してくれました。でも吸水性が良くないのであまり役に立たず、結局は持参したタオルを使いましたけどね。フロントの奥へ進んで建物の反対側から屋外へ出た先に温泉プールが広がっていました。きちんと確認したわけではありませんが、どうやら内湯等は無いらしく、温泉は水着着用の屋外温泉プールのみのようです。目の前に天龍吊り橋の主塔が聳え立っており、まわりはガーデンのように整備されていて清々しく開放的です。


 
(右or下画像はクリックで拡大)
建物に内包されているシャワールームの他、屋外に増設された着替えルームも使用可能です。この増設小屋の側面には温泉に関する説明が大きく掲示されていましたので、その内容を掻い摘んで箇条書きにしてみましょう。
・泉質はフッ素を含む炭酸泉。
・pH8.2~8.8で飲用可能。
・100%源泉で、50℃近い源泉を空気調和により(著者註:熱交換のことか)入浴に適した38~42℃へ下げている。
・湯の華を含む温泉である。
・温泉として規定される基準の4倍以上のミネラルが含まれている。
湯の華に関しては画像まで添えて詳しく説明しており、同内容の解説が英語でも併記されています。この温泉がどんな性質でいかに良質であるか、そのことを伝えたい情熱が情報量からひしひしと伝わってきました。実際にどんなお湯なのか、入ってみることにしましょう。


 
浴槽は3つに分かれており、最も小さな半円の槽は水風呂。一方、奥の大きなU字型を描くタイル貼りの槽(上画像)は、ぬるいお湯が張られているSPA槽です。台湾の温泉施設ではおなじみの「沖撃湯」(打たせ湯)の他、泡風呂、寝湯など諸々の設備が用意されており、水遊びするにはもってこいです。


 

SPA槽の手前側にある岩風呂は40℃強のお湯が張られた温泉槽で、日本の温泉旅館の露天風呂を彷彿とさせます。SPA槽の3分の1程度の大きさですが、それでも十数人は同時に入れちゃいそうな余裕があります。流路が褐色に染まった石積みの湯口から温泉が注がれており、湯船を満たしたお湯は、お隣のSPA槽へと流下していました。


 
説明プレートに記されていたように、岩風呂の湯中ではたくさんの湯の華が見られます。ここでの湯の華は2種類に分けられ、湯面では薄い膜が粉々に砕かれたような白い微細なものが浮かんでおり、湯中や底面では海綿を千切ったようなベージュ色の塊が無数に浮遊および沈殿していました。説明によれば、湯面の白いものは「初期浮在水面的温泉花」で、ベージュの塊は「凝結沈在水底的温泉花」とのことですから、まさにその説明通りの湯の華を確認できたわけです。


 
湯口における実測値は50.6℃でpH8.0でしたから、お宿側の説明とほぼ一致しますね(pHはやや中性寄りですけど)。お湯は無色澄明でとてもクリアですが、上述のように湯口の流路や岩風呂の表面は、温泉成分によって褐色に染まっていました。説明では泉質は炭酸泉と書かれていましたが、日本の温泉法的な表現で言い換えると、碧山温泉や栗松温泉など界隈で湧出する温泉と同様に、重炭酸イオンを多く含む塩化土類泉系かと思われます。

私が実際に入浴していて不思議に感じたのが、湯口から出るお湯が徐々に変質していったことです。フロントで受付を済ませてホテルの建物を抜け、屋外に出るドアを開けてプールゾーンへと足を踏み入れた瞬間、辺りには温泉由来と思しきタマゴ臭(硫化水素臭)が漂っており、その湯の香に興奮した私が即座に、湯口からトポトポと注がれているお湯をテイスティングすると、明瞭なタマゴ味とタマゴ臭、そして薄い塩味に石膏味が感じられました。でもフロントのお姉さんが言っていたように、この時点ではまだ吐出温度はさほど高くなく、体感で40℃に満たない程度でした。

それからしばらく経過すると吐出量が増え、これに伴って湯船の温度も上がってきたので、改めて湯口を確認してみると、上画像のような50℃オーバーの状態となっていたのですが、温度上昇と引き換えに何故かタマゴ感が消え、一方で焼き石膏のような芳ばしい香りがはっきりと漂いはじめたのです。なお薄い塩味は時間を問わず常に確認できました。
人間の嗅覚は、同じ匂いを嗅ぎ続けているとその匂いに慣れて鈍感になってしまいますから、それが原因でタマゴ臭がわからなくなったのかもしれませんが、並行して吐出量の増加や温度の上昇も見られましたから、温泉管理者が温泉配管のコックを大きく開いて吐出量を増やしたことで何らかの変質がもたらされたのかもしれませんし、あるいは複数の異なる源泉を使い分けているのかもしれません。言葉が通じたらフロントの人に質問できたのですけど、残念ながら私は台湾語も中国語もわかりませんので、結局そのあたりの謎が解けないまま今日に至っております。

お湯の変質についてはさておき、岩風呂のお湯は弱いツルスベと石膏由来の引っ掛かりが混在しており、入浴中はしっとりと包み込むような優しいフィーリングが肌に伝わってきます。湯の華が多いにもかかわらずお湯は大変クリアで鮮度感もまずまず。岩風呂のお湯は隣の大きなSPA槽へと流れて、その湯尻から排湯されており、少なくとも岩風呂に関しては掛け流しかそれに準じた湯使いではないかと思われます。
はじめはぬるかったお風呂も時間の経過とともに良い湯加減になり、私好みの湯温になったものですから、お湯を全身で感じるべく肩までしっかり湯浴みしたところ、湯上がりには汗が止まらなくなるほど体の芯までパワフルに温まりました。
標高が高いので日中でも比較的涼しく、自然環境に恵まれていますから空気がとても爽やかです。決して新しい施設ではないのですが、きちんと手入れされているため、設備面や衛生状態等に問題はありませんでした。屋根などの無い開放的な空間のもと、ガーデンの可憐な花々や峡谷の緑を目にし、上空を飛び交う小鳥の囀りをBGMにしながらの入浴はとても爽快で、心ゆくまで寛げました。


台東県海端郷霧鹿村1-1号
089-935075
ホームページ

日帰り入浴時間不明(私の訪問時は16時から受付開始でした)
250元
シャンプー類あり

私の好み:★★+0.5
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台東県海端郷 碧山温泉

2015年09月17日 | 台湾
栗松温泉での入浴を果たした私は、南横公路・東段(台東県側)の霧鹿峡谷に沿って湧く温泉にも立ち寄ってみることにしました。

 
山から下りてまずはじめに伺ったのは、霧鹿集落のちょっと先、台20号の赤い橋を渡ってすぐの崖上に建っている一軒宿「碧山温泉」です。訪問時は門扉が閉じていたのですが、1階のガレージにいた男性が私の来訪に気づき、鍵を開けて迎え入れてくださいました。男性に導かれながら階段を上がってゆきます。


 
階段を上がると見晴らしの良いテラスとなっており、景色に対して開かれているピロティー状の半露天風呂が2つ並んでいました。お風呂ゾーンの奥にアコーディオンカーテンで仕切るシャワールームがあり、宿の男性はそこで着替えて欲しいと私に言い伝えてから、屋上の方へ駆け足で去ってゆきました。シャワーからはぬるいお湯が弱々しく出てきたのですが、このお湯って温泉なのかな?


 
この霧鹿一帯は新武呂渓が山を深く刻む峻険な峡谷が延々と続いているのですが、碧山温泉があるこの場所では馬里蘭渓という支流が合流しており、2本の流れが激しくぶつかり合って山の岩盤を粉砕してしまうのか、木っ端微塵に砕かれた岩の破片を辺り一面にぶちまけたかのような、荒々しい礫の河原が広がっています。このため碧山温泉付近だけは妙に見晴らしが良く、半露天風呂があるテラスからの眺めはなかなかです。


 
2つのお風呂は大小に分かれているのですが、タイル貼りの大きな槽にはお湯が全く張られておらず、カラカラの空っぽ状態。おそらく週末のように複数のお客さんの利用が見込まれる時でないと、使われないのでしょうね。客がいない平日に開店休業状態となってしまう入浴施設は、台湾ではごく普通ですから、今回私が入浴できたのは寧ろラッキーだったのかも。
でも空っぽだったおかげで、面白いものを目にすることができました。というのも、大きな浴槽には、別の場所から運び込まれたのか、はたまた元々此処にあったのか、巨大な岩が奥の方にドンと鎮座しているのですが、その岩の湯面下にあたる面に、サンゴみたいなトゲトゲがビッシリとこびりついていたのです。六口温泉や栗松温泉でも確認できたように、この界隈の温泉は石灰華を生み出す重炭酸土類泉系(もしくは塩化土類)系の泉質が多いわけですが、岩の下一面を覆うトゲトゲはまさに石灰の存在を如実に示すものであり、言い換えればミニミニ鍾乳石みたいなものでしょう。


 
岩の下のみならず、浴槽にお湯が満たされていたならばオーバーフローが流れ出ているだろうと思しきステップの側面にも、スカートの裾の広げるような形で鱗状の石灰華が分厚くこびりついており、床にも石灰華の千枚田が広がっていました。


 
今回私が入浴できたのは小さな方のお風呂。キャパ的には大きなお風呂の半分ほどですが、タイル貼りの浴槽の奥に巨大な岩が据えられている点は同様です。タイルの表面を鱗状の石灰華が薄っすらと付着していたり、岩の下をトゲトゲが覆っていることも共通しています。
宿の男性が屋上の方へ駆け上がって、私が水着に着替えている時、この小さな浴槽では、左隅から下りているいる塩ビ管からボコボコと音が響き、その後お湯が吐出されはじめました。なるほど、男性はわざわざお湯の元栓を開けに行ってくれたのか。入浴前は半分くらいしか溜まっておらず、湯加減もぬるめだったのですが、お湯が投入され続けるうちに徐々に嵩が高くなり、温度も良い感じまで上がってきました。

お湯は無色透明で湯の華などは見られず、透明度が高くてとてもクリアです。口に含むと塩味や石膏感が微かに感じられましたが、いずれもかなり弱く、前回記事の栗松温泉で得られたようなイオウ感は皆無です。知覚的特徴は総じて薄くて掴みどころに乏しく、浴感もこれと言った特徴が無いのですが、強いて言えばサラスベの中に土類泉的な弱い引っ掛かりが混在するような感じです。岩の表面やステップ等に見られる土類泉的な特徴はどこへ消えてしまったのやら。どこに源泉があるのかわかりませんが、元々薄いお湯なのか、はたまた加水をして薄くなっちゃっているのか…。


 
お湯としては何と評価して良いのか難しいところですが、上述のように高くて見晴らしの良いロケーションにお風呂が設けられているため、峡谷から吹く涼しい風がよく入り込んできます。青い空と山の緑を眺めながら、風を感じて入る温泉はとても爽快でした。今回は入浴のみの利用でしたが、宿泊用客室は更に高い位置にありますから、そこからの眺めもさぞ良いことでしょう。


 
ちなみに宿の前を流れる新武呂渓は河川工事中。宿の目の前には崩れたままの橋が放置されていました。この数十メートル手前には台20線の赤い橋が架かっていますから、崩落した橋は赤い橋の旧道にあたるのでしょう。とにかく険しい地形ですから、大雨の度に水害が発生してしまうようです。自然の猛威に治水工事はどれだけ抵抗できるのか。賽の河原で石を積むような虚しさすら覚えます。


 
湯上がりに台20線を上流方面へ300メートルほど歩いてみました。ちょうど六口温泉の手前です。対岸の切り立った断崖のあちこちから温泉が噴出しており、岩の表面をベージュ色に染めています。


 
視線を川から山の方へと転じたところ、山の斜面でも温泉が湧いており、木々の間でいくつもの石灰ドームを形成していました。このあたりは温泉の宝庫なんですね。入浴できないのが残念ですけど…。


 
上画像の崖では、遠くからでも目指できるほど、温泉が勢い良く噴き出て白い噴霧を上げており、そのまわりは石灰で分厚くコーティングされていました。噴泉塔こそできていませんが、峡谷の断崖から勢い良く温泉が噴出する様は、プロレスラー永源遙のツバ攻撃…ではなく、石川県白山の岩間噴泉塔を連想させます(ちなみに永源遙は石川県出身ですよ)。


台東県海端郷霧鹿村一鄰1-8号  地図
089-931370

日帰り入浴時間不明
150元
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★+0.5
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台湾で最も美しい野湯 栗松温泉 その3(いざ入浴)

2015年09月14日 | 台湾
前回記事の続編です。


急坂を下りきり、渓流を遡って、岩をよじ登った先に、断崖絶壁が白と緑で覆われている、言葉では形容しがたい摩訶不思議で且つ美しい光景が目に入ってきました。駐車場から歩いて35分、目的地である「台湾で最も美しい野湯」栗松温泉に到着です。台東県の観光案内公式サイト(繁体中文)によればここは標高1075mなんだそうですから、高地の茶畑が広がっていた摩天地区(1546m)から500メートルも下ってきたことになります。



新武呂渓の右岸で垂直に落ち込む断崖の裂け目や孔から、温泉が噴き出て滴り落ち、その飛沫が広範囲に亘って飛び散って、断崖の表面を炭酸カルシウムで覆っているのです。美しいこともさることながら、その圧倒的な迫力に気圧されそうになります。


 
 
細かな鱗状の模様を形成しながらドーム状にこんもりと盛り上がる白い石灰華。その繊細な模様の表面をエメラルドグリーンの苔が覆い、なんとも神秘的な美しさを生み出していました。


 
更に上流の崖からも温泉が自噴して、岩の表面を白く染めていました。辺りには硫黄の匂いが漂っています。この源泉群も、これから長い年月を掛けて、白と緑の自然芸術を創りだしてゆくのでしょう。


 
見上げると崖の上のあちこちから温泉が噴き出ており、それらが集まって湯の滝をなしている他、落ちる過程で他の岩にぶつかって、飛沫が飛び散り湯霧となって、陽光をキラキラ煌めかせていました。


 
 
エメラルドグリーンの苔は、崖下の石灰華のみならず、垂直に落ちる崖の断面にも生えており、その様はアイボリーホワイトとエメラルドグリーンを織り交ぜた巨大なカーテンのようです。


 
滝壺にあたる崖の直下には土嚢が積まれ、広い湯だまりがつくられています(左or上画像)。ちょっと浅いのですが、寝そべれば肩まで湯浴みでき、川水が程よくブレンドされて40℃前後の入りやすい湯加減となっていました。またその下流側にも土嚢でお湯を堰き止めた小さな湯船があり、こちらは川面よりちょっと高い位置にあるため加水できずに43~4℃のやや熱い温度だったのですが、混じりけのない源泉100%ですから、お湯の濃さがはっきりと実感できました。


 
上から滴ってくるお湯はかなり熱く、霧状に降るお湯の熱さに耐えながら、岩肌を流れるお湯に温度計を伸ばしてみたところ、53.5℃と計測されました。湧出時点ではもっと熱いはずです。この時一緒にpH計でも計測したのですが、表示されたpH8.3という数値はあまり正しくないような気がします(実際にはpH7.5~8.0の間ではないかな)。
お湯からははっきりとしたタマゴ味&臭の他、石膏味も含まれていました。湯中では白い湯の華が舞っている他、川水が混ざる湯だまりではお湯が薄いグレーに濁っていたのですが、これは川上から流れてくる砂鉄と温泉の硫黄が反応して硫化鉄が発生しているものと推測されます。


 
私が訪れた時は、河原でキャンプをしていた親子連れ、そして台北からバイクでツーリングしてきたおじさん2人が既に湯浴みを楽しんでいらっしゃり、一人でここまでやってきた日本人の私に、皆さん興味津々のご様子。現地では一緒に湯浴みしつつ、片言の中国語や英語でお喋りし、ついでに果物やお菓子などたくさんご馳走になっちゃいました。台湾の方はみなさんフレンドリーです。お互いに写真を撮り合ったので、念願叶って栗松温泉で入浴できた記念の写真を、台北のおじさんに撮ってもらいました。



帰り際、岩によじ登って全景を撮影。おじさん二人がこちらへ向かって手を振って、別れを惜しんでくれました。温泉で鋭気を養えたからか、あるいは目的を無事達成できて心身が軽くなったのか、帰路は登り一辺倒ですが、下りより10分多いだけの45分で駐車場まで戻ってこられました。
「台湾最美麗的野渓温泉」の称号に文句なく納得。台湾の自然の美しさと迫力を存分に体感できる、素晴らしい野湯でした。


台東県海端郷  地図

入場料や入山許可など不要。いつでも行けますが、増水期は渡渉が困難になるため、11月~4月の渇水期がおすすめ。

私の好み:★★★

コメント (8)
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台湾で最も美しい野湯 栗松温泉 その2(峡谷の底へ急降下)

2015年09月13日 | 台湾
前回記事の続編です

 
駐車スペースの先に、栗松温泉が湧く峡谷の底へと向かうトレイルの入口があり、そこには「達道恩温泉 Da Dao-n Hot Spring」と手書きされたプレートが括りつけられていました。原住民ブヌン族の言葉では栗松温泉をこう呼ぶようです。またその下には中文と英語の併記で、ゴミを散らかさないようにしましょう、安全のため体調や天候の変化に気を配って・・・など注意書きも掲示されていました。こうした案内が用意されるほど、この野湯は人気があるんでしょうね。


 
さぁ、ここから標高差300~400メートルの本格的な山道を歩いて一気に下ります。ということは、その帰路は標高差を登らなければいけない…。従いまして、歩きやすい靴、十分な水分と塩分、非常食など事前にしっかりとした準備が必要です。しかもゴール間近では川の中にジャブジャブ入ってゆきますから、全身や荷物が濡れても差し支えない状態であると好ましい。
私の場合は、水着を兼ねた短パンを履き、足元は歩きやすいスニーカータイプのマリンシューズを、両手には登山用の手袋を装着。小型のデイパックにPETボトルの水2本と簡単な食料、応急処置用のグッズ、雨具を詰め込みました。そして是非持参をおすすめしたいのが防水袋として活躍するジップロックのビニール袋です。お財布やスマホ、そして車の鍵など、濡れては困るものはジップロックに入れて携行すれば安心です(念の為に私は袋を二重にしました)。


 
山を転がり落ちるように、急勾配をひたすら下ってゆきます。下り一辺倒ですから、登山に慣れていない方でしたら途中で膝が笑っちゃうかも。でも道の両側にはロープが張られていますから、道に迷う心配はありません。しかも支柱の上には怪我しないようにゴムキャップが被せられていました。道自体も、木の根や岩をうまい具合に活用してステップ代わりにしており、体力と気力さえあれば、技術を要さずとも登り降りできるように整備されていました。道を整備してくださっている関係者の皆さんの丁寧な仕事に感謝。


 
足を滑らせたら崖の下へ真っ逆さまという危ない箇所もありますが、ロープからはみ出ずに気をつけて歩けば問題ないはず。視界が開けたところで自分が来た方向を見上げると、先程車で通った摩天地区付近と思しき山の稜線が遥か上方に連なっていました。もうそれだけの標高差を下ってきたわけか。でも、下っても下っても谷底に近づいている実感が得られません。


 
歩き始めてから20分弱で、木々の間からようやく谷底の渓流が目に入ってきました。


 
山道の後半はフィックスロープの連続です。ロープをしっかり掴んで慎重に下ります。素手でロープを握りながら下ると、掌が擦れちゃいますから、もしこちらへいらっしゃる場合は手袋の装着をおすすめします(軍手でOK)。


 
延々と続くロープ場を下ってゆくうち、渓流が近づいてきました。


 
歩き始めてからちょうど30分で、谷底の渓流まで下りきりました。深く刻みこまれた峡谷に流れる水は実に清らかです。この川は新武呂渓と称し、台東県の米どころへ潤いと実りをもたらす卑南渓の上流部にあたります。山を下りきったら、ここからは川の上流へ向かって遡ります。まずは歩きやすい礫の河原が広がる対岸へと渡渉します。ネット上の情報によれば、川が深いためにロープを伝って渡渉するようなことが書かれていたのですが、私が訪れた頃は台湾各地で渇水が深刻化するほどの少雨が続いており、その影響なのか新武呂渓の水嵩も初夏のわりには低かったので、渡渉ポイントでは脛が浸かる程度で済みました。


 
岩の上をピョンピョン飛び跳ねたり、ロープを使いながら岩をよじ登ったりと、アスレチックのような感じで川を遡上してゆくうちに・・・

その3へつづく。

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台湾で最も美しい野湯 栗松温泉 その1(南横公路と六口温泉)

2015年09月12日 | 台湾

2015年初夏の台湾旅行における大きな目的の一つが、"台湾最美麗的野渓温泉"、つまり台湾で最も美しい野湯と言われている台東県の栗松温泉で入浴を果たすことです。現地まで険しい山道を徒歩で往復しなければならないらしいのですが、果たして単独行で目的を達し、無事に戻ってこられるでしょうか。まずは鹿野郷「盈家温泉民宿」を朝9時過ぎに出発して台9線を北上し、途中から台20線「南横公路」に入って、卑南渓という大きな川を遡る形で、中央山脈の南部を深く切り刻んでいる霧鹿峡谷を目指します。


 
卑南渓の沖積平野が広がる関山や池上は台湾屈指の米どころ。台20線沿道の高台から平野を眺めると、見渡す限りに麗しい水田が広がっており、風に乗って稲の青々とした匂いが香ってきました。台湾の稲作は一般的に二期作です。この画像の水田は6月頃、黄金色に染まるのでしょう。


 
 
「南横公路」は台湾の脊梁である中央山脈を東西に貫く横貫のひとつ。平野部から山間部へ入ると一気に景色が険しくなり、カーブと登り坂が続く中で、断崖がオーバーハングしている箇所や、トンネルを通過する箇所が連続して現れます。この「南横公路」は脊梁を越えて台南・高雄方面へと続いているのですが、2009年の八八水災以降、台東県と高雄市の境界付近が崩壊してしまい、復旧工事が行われているものの、いまだに通行止が続いています。沿道の標識にはその旨を知らせる赤い標識「往台南高雄封閉」が括りつけられていました。


 
標高713mの霧鹿地区には、「南横公路」の台東県側で最も大きなホテルである「天龍飯店」があり、温泉浴場も設けられていますが、こちらは後ほど伺うとして今は通過します。


 
霧鹿を過ぎてしばらく進むと、私の車の先を走っていたトラックが停車しており、その前方にはバリケードが張られていました。どうやら道路工事中のため通行規制が実施されているようです。



(上画像クリックで拡大)
日本で道路工事が行われる場合は、せいぜい数分間の通行規制(片側交互通行等)がかかるだけですが、この区間で実施されている規制はかなり大胆。お昼の1時間と夜間を除いて、50分間を工事のため通行止にし、10分だけ通行可能にするという1時間サイクルを繰り返しているのです。つまりタイミングが悪ければ、開通まで50分近く待たなきゃいけないわけです。現地には時間割が掲示されており、これに従い開通と閉鎖が行われています。なお標識によれば民国105年(2016年)1月20日までこの規制が続く予定ですが、台湾のことですから期日が伸びちゃうのは必至でしょう。


 
時間割に記されている規制解除(開通)の時間まで15分あったので、エンジンを止めて車から降りてみたところ、ちょうど目の前に渓谷を臨む小さな公園があり、一辺1メートルほどの正方形の水槽が計6つ並んでいました。6つのうち、川側の3つには蓋など無いのですが、山側(道路側)の3つにはグレーチングが被せてあります。


 
構内の説明プレートによれば、ここは「六口温泉」というれっきとした温泉で、南横公路の建設中に見つけられたんだとか。まさか、槽が6つあるから「六口温泉」というネーミングになったのかな。大きさから推測するに、入浴ではなく足湯を楽しむための施設のようです。


 
開放されているからといって、迂闊にお湯を触るとエライ目に遭います。グレーチングが被さっている槽の一つには、モスラの幼虫みたいな表面加工が施されている配管が突き出ているのですが、そこから注がれているお湯はなんと90℃以上の激熱なのです。火傷を防ぐために蓋が被せてあるのでしょうね。私が計測した時には93.3℃もありましたから、直に触るのは危険ですが、蓋の隙間から食材を浸してボイルしたり温泉卵をつくるには良いかもしれません。
この熱湯は隣の槽とチョロチョロと移り、更に川側の槽へと流れてゆくうちに温度も下がって、蓋の無い槽では足湯をしても差し支えない湯温となっていました。


 

この「六口温泉」の対岸に立ちはだかる絶壁でも温泉が自噴しており、滴り落ちる温泉の成分がその表面に付着することにより、上下に長いカーテン状の石灰華が形成されていました。これから目指す栗松温泉も、ここと同様に自噴した温泉に含まれる石灰が断崖を覆っていますから、この一帯の温泉はカルシウムや炭酸水素イオンを多く含んでいるのでしょうね。


 
画像を撮っているうちに開通時間となり、ガードマンさんがバリケードを取り払ってくれましたので、車に乗り込んで出発です。工事区間の路面はとんでもなく荒れており、しかもものすごい砂埃が立って、軽いホワイトアウト状態に。


 
工事区間を通過した後、車を止めてその区間を振り返ってみました。渓谷の対岸では大規模な土砂崩れが発生しています。また今通ってきたばかりの道も、天険の断崖を削って作られており、対岸のように斜面が崩壊したらひとたまりもありません。実は私がここを通過した2週間後、活発化した梅雨前線による豪雨のため、この工事区間で土砂崩れが発生し、全面的に通行止となってしまいました。復旧までにかなりの日数を要し、ここから更に奥にある集落は生活路が途絶されて孤立状態に陥りました。
参照:中央社フォーカス台湾(2015年6月4日)「台湾・台東の集落、土砂崩れでほぼ孤立 不便な生活すでに8日目」


 
悪路の工事区間を抜けて、ブヌン族が暮らす標高1250mの利稲集落の脇を通過。上述の「孤立状態に陥」った集落とはこの利稲です。テーブル状で真っ平な集落を見下ろすように、台20線は山腹を登ってゆきます。なおこの利稲には民宿が多いんだとか。


 
さらにグングン坂道を登って標高1546mの摩天地区を通過。その地名のように、天に手が届きそうなほどの高地です。台湾の脊梁をなす山稜の姿はとても美しく、岩肌がむき出しになっている山襞は雪渓を思わせ、アルプスを眺めているかのような清々しい絶景です。



 
摩天地区は人家はあまりありませんが、そのかわり茶畑が広がっており、綺麗に刈り込まれた茶の木と周囲の高山が織りなす清々しい景色に心を奪われ、おもわずその場で車を止めて深呼吸。


 
左(上)画像は、道が大きくカーブする見晴らしの良いところで、ここまで来たルートを振り返る感じで眺望したものです。深い谷底を流れる川に沿って台20線が走り、その彼方に関山や池上の水田地帯が広がり、そして太平洋の大海原へとつながっているわけですね。
この摩天地区で台20号から右へ逸れる小径を発見。この小径は谷の下へとつづいているようです。事前の調査では、たしかこのあたりに栗松温泉へアプローチするルートがあるはずなのですが…


 
小径の入口には「栗松温泉 3」の標識が立っていました。数字はキロ程を意味しているのでしょう。ここから谷底へ向かって標高差500mを一気に下るのです。


 
1台分の幅員しかない小径はほとんど舗装されておらず、しかも急勾配が連続する悪路です。にもかかわらず、私が運転しているレンタカーはYaris(日本名Vitz)のFF車。凸凹にハマってスタックしたらどうしよう…。パンクしたらどうしよう…。この日は晴れていたから良かったものの、雨降ってぬかるんだら、登れなくなっちゃうかもしれない…。車で帰れるか不安を抱きつつ、エンジンブレーキをかけながら「どうにでもなれ」という半ば自棄な心境で下へ下へと向かっていきます。


 
小径のどん詰まりに駐車スペースがあり、既に1台の車と2台のバイクが止まっていました。どうやら先客がいるようです。険しい道のりの先にある野湯とは言え、"最美麗的野渓温泉"という名声が人々を魅惑するのでしょう。
Yaris君はここでお留守番。私は登山に準じた装備を整え、徒歩で谷底へと向かいます。

その2へ続く
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