経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

死者が語る コロナ肺炎の危険度 (93)

2021-12-25 08:21:15 | なし
◇ クリスマスが妨げる規制強化 = 世界の感染者は累計2億7717万人、この1週間で494万人増加した。死亡者は537万7435人で、増加数は4万7305人。感染者の増加数は前週より57万人増えて、5月中旬以来の多さとなっている。一方、死亡者の増加数は10月半ば以来の少なさとなった。オミクロン変異株の拡大によって感染者は増加したが、死亡者は縮小したと考えられる。感染者はアメリカとロシア、ヨーロッパで急増した。

アメリカでは新規感染者が1日12万人を超え、その7割がオミクロン株となっている。イギリスでもオミクロン株が驚異的なペースで拡大、感染者の6割がオミクロン株。またフランスでは1日9万人、ドイツでは5万人が感染している。ただ死亡者の増加数は、それほど拡大していない。このため各国政府は、クリスマスまでは規制の強化を手控えているようだ。新年になると、一斉に規制強化が始まる可能性が強い。

国別の死亡者数をみると、アメリカは累計81万2069人。この1週間で9558人増えた。ブラジルは61万人台、インドは47万人台、メキシコとロシアは29万人台。さらにイギリスとインドネシアが14万人台、イタリアとイランが13万人台、フランスが12万人台と続く。これら諸国のうち、ブラジル・インド・インドネシアなど、新興国では死亡者数が減少傾向にある。

日本の感染者は累計173万0571人、この1週間で1512人増加した。この増加数は10月末以来の多さとなっている。死亡者は1万8384人で、週間7人の増加にとどまった。しかしオミクロン株の市中感染も出始めており、専門家は今後の急増を警戒している。したがって対策を急ぐべき局面だが、日本政府も正月までは規制強化に乗り出さないようだ。

        ≪24日の日経平均 = 下げ -15.78円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】     


‟将来”を語らない 政治家たち

2021-12-24 07:54:24 | なし
◇ 日本をどんな国にしようとしているのか = 臨時国会が終わった。読売新聞の集計によると、衆参両院で開かれた予算委員会の審議時間は合計約33時間。そのうち「新しい資本主義」に関する質疑は約2時間だった。あとはコロナ対策や10万円の給付金、あるいは安全保障問題などに使われたという。その「新しい資本主義」も、大部分は介護師などの賃金引き上げに終始。要するに「日本経済の将来ビジョン」に関する発言は、全く聞かれなかった。

たとえば過去30年にわたって、賃金が上がらない。それを是正するために「賃上げをした企業の法人税を下げる」という。だが、それで3年後、5年後の賃金水準がどうなるかという議論はない。岸田首相の「令和所得倍増論」も、いつの間にか消えてしまった。中間層の所得が増えないのに、高所得者の収入は急増している。このため貧富の格差は広がったが、それを是正しようという議論も消え失せた。

臨時国会では、総額36兆円にのぼる過去最大の補正予算が成立した。しかし内容はコロナ対策、GO TO トラベル、10万円の給付金など、当面の対策に終始している。唯一、半導体の国内生産拠点確保に6170億円が計上されているが、これも現在の半導体不足への対応。将来を見据えた長期戦略の一環とは、とうてい考えられない。

世界は脱炭素の方向に、急速に動いている。だが日本は火力発電の比重を下げられない。そんな電力を使っていて、EV(電気自動車)の競争に勝てるのか。電機も半導体も自動車も競争に負けたら、日本は何で食って行くのか。日本の将来について、多くの国民が心配している。それなのに、いまの政治家は与野党ともに‟将来”を議論しない。当面の問題が山積みなのは判るが、だからと言って長期計画を考えられないということはないだろう。

        ≪23日の日経平均 = 上げ +236.16円≫
 
        ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

電気料金は まだ上がる!

2021-12-23 08:17:09 | 電気料金
◇ ロシア・中国も燃料高の陰の犯人 = 大手電力各社は「来年2月も電気料金を値上げする」と発表した。東京電力の場合、標準家庭で月額7961円、前月より330円高くなる。関西電力は215円の値上げで月額7418円に。これで値上げは6か月連続。ことし1月の料金と比べてみると、東京電力では1644円の値上がりとなった。電気料金は家計支出の約4%を占めており、家計はそれだけ圧迫される。

電気料金の値上げは、火力発電の燃料となる原油とLNG(液化天然ガス)の仕入れ価格が急騰したため。特にLNGの高騰ぶりは異常だ。ヨーロッパでの取引価格は、なんと前年比10倍となっている。これはウクライナ情勢が緊迫し、ロシア産LNGのヨーロッパ向け供給に支障が出始めたことが原因。この支障がロシア政府による意図的なものかどうか、警戒心も強まっているようだ。また中国が石炭不足を補うため、LNGの輸入を急増させたことも一因となっている。

電力各社は冬場の需給ひっ迫を警戒、対策を急いでいる。脱炭素の動きには逆行するが、老朽化し停止していた火力発電所を再稼働させたり、原発の定期検査を延期したり。それでも来年1-2月が厳冬になると、電力の供給不足が生じかねないという。こうした状況のなかで、新電力は6社が経営難に陥った。

電気料金の高騰は家計や企業の支出を増大させ、その分だけ消費や投資を抑制させる。したがって景気にとっても、大きなマイナス要因となる。言い換えれば、これまで燃料の輸入依存度をちっとも減らしてこなかったことの代償だ。この点では、再生可能エネルギーの育成に失敗し、原発政策を疎かにしてきた政府の責任でもあるわけだ。

        ≪22日の日経平均 = 上げ +44.62円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
        

利上げの副作用は 大きいか? (下)

2021-12-22 08:20:29 | 金融
◇ 信用度の低い債券が売り叩かれる = 金利の上昇は、借金をしている企業や個人の負担を重くする。IMF(国際通貨基金)の調査によると、世界中の政府・企業・個人が背負った債務の総額は、20年で226兆ドル(2京5700兆円)に及ぶ。仮に金利が0.1%上がっただけでも、負担は25兆円増える計算だ。特に低格付けの企業はすでに高い金利を付けた債券を発行しているから、追加の負担増はズシリと重く響く。

さらに優良債券の金利が上昇すると、投資家は信用度の低い債券を売って、優良債券に乗り換える。すると低格付けの債券は暴落する危険性が大きい。08年に起きたリーマン・ショックは、信用度の低い住宅ローン債券が暴落。これを大量に保有していた大手の投資会社リーマン・ブラザースが、倒産したことに端を発した金融恐慌だった。

この経験からも判るように、この種の金融不安に大金融機関が巻き込まれると、騒ぎは大きくなる。そこで各国は金融機関が低格付け債券を保有しないよう、監視を強めている。したがってリーマン・ショックの二の舞が起きる可能性は小さくなった。しかし現実に低格付け債券は無数に発行されており、その実態は必ずしも掴めていない。どこかで火を噴く危険性が、ないとは言えない。

利上げの副作用は、アメリカ発だけとは限らない。イングランド銀行は先週、政策金利を0.1%引き上げ0.25%とした。ECB(ヨーロッパ中央銀行)も、国債などの買い入れ規模を半分に縮小すると発表した。これらの利上げもアメリカと同様、新興国や低格付け債券に悪影響を及ぼす。そうしたなかで、日銀は超緩和政策を継続すると公言する。円安の進行だけではなく、欧米の利上げは日本経済にも思わぬ影響を与えると覚悟しておくべきだろう。

        ≪21日の日経平均 = 上げ +579.78円≫

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

利上げの副作用は 大きいか? (上)

2021-12-21 07:42:42 | 金融
◇ 新興国は通貨防衛に必死 = アメリカの中央銀行であるFRBは先週「量的金融緩和の縮小を来年3月で終了、その後は政策金利の引き上げを実施する」と発表した。この内容を織り込み済みだった株式市場は冷静に受け止めたが、利上げの副作用はこれから出てくる。1つは新興国経済への打撃、もう1つは低格付けの企業・債券に対する悪影響という形で、副作用が現われることは確実だ。

数多くの新興国が、金利の引き上げに踏み切った。12月に入ってからも、ブラジル・メキシコ・チリ・ハンガリーが利上げした。アメリカの金利が上昇すると、新興国へ投資されていた資金がどっとアメリカに還流する。すると新興国の通貨が売られて低落、それだけ輸入価格が上がりインフレになりやすい。しかもドル建ての債務は、自然に膨張してしまう。新興国はこれを防ぐために、続々と金利を引き上げているわけだ。

だが金利を上げれば、景気は悪くなる。だから新興国としては、インフレを防ぐために景気を犠牲にすることになりやすい。たとえばブラジルは政策金利を9.25%に引き上げた。消費者物価の上昇率が、10月で前年比11%にも達したからだ。ところが4-9月期の経済成長率はマイナス。10月以降も、成長率がプラスになる見込みは全くない。苦汁の選択である。

1997年、アメリカの利上げでタイの通貨バーツが急落。これが引き金となって、いわゆるアジア通貨危機が発生した。当時に比べれば、新興国の経済は抵抗力を増している。またIMF(国際通貨基金)などによる支援体制も強化された。したがってアジア通貨危機の二の舞は防げるかもしれない。しかし新興国の景気が悪化すれば、それが先進国の経済にも悪影響を及ぼすことは避けられない。

                          (続きは明日)

        ≪20日の日経平均 = 下げ -607.87円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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