例によって夏の読書のひと時として文芸春秋を常用し、
どこか夏の避暑地にと山の中の温泉か海辺のホテルに
出かけるのが毎年の恒例です。
しかし、今年はなかなか出かけられないばかりか、夏休みという
まとまった時間もありませんでした。
この本を読んだのも今月になってからです。
本の懸賞もすでに締め切りになっており、パズルを真剣に解いて
付属のはがきで出してみようかと葉書を見たら期限切れでした。
本は9月号ですが、これは8月中に読まれることを想定しているのです。
そんな当たり前のことに気が付きながら今更に読んだ『コンビニ人間』は
今までになく面白く感じました。
時代におもねり人気コメディアンの作品を受賞作にしたりこの芥川賞
事態に疑念と諦念に満ちてそもそもこの読書を続けるべきかとも感じて
いたのですが、この作品には作品の完成度よりも先にテーマといい
小説としての面白さを感じました。
何かとんでもないものを見てしまったような自身が何を見たがっていたのか
人間の根底にあるものとか人生とか色々なものをまざまざと知らしめるような
独特の世界があり、異様な人間の生きざまで自分とは違いそれでも現代とは
何かを知らしめてくれるそんな他人の生と社会の一コマから覗いているようで
いて実はもっと深い根底の部分を知ることになるのです。
それが解った時に人の世界という他の生命と違うものにふと感情という
ままぼろしに色々と思い至らせずにはおられずようになり、これぞ人間の
生だと感じるのでした。