スクールや検定に通った頃のことで、昔は
モーグルのオリンピック代表がいるスクールとか
コブにも力が入るスキー場で検定員も日本を代表する
面々による検定とかアルペン代表の佐々木明が滑っていたり
雑誌のインタビューを受けたりと色々と思い出もあり、
親しんだ地でもあるのにコースはよく知らず、特に
南エリアや北エリアなどよく知らないのです。
とは言え滑っているうちここは初めてでなく前に滑った
記憶がよみがえり、そのコースの印象は
不整地などもあまり滑りこまれていない
感じでコブにもならず完全な不整地は新雪ながら突っ込んでも
楽しくないものでした。
思えばコブのコースになっているようなラインもなく
一通りこなすと北エリアに向かいます。
ここは初めて足を踏み入れた時、自分以外スキーヤーは
いなくてみんなボーダーでものすごい疎外感を感じたのを
覚えています。
どんどん下の方にリフトを乗り継いで石打丸山に向かいます。
とにかく速足で回ったのはその日の天気予報が三時から
雨という予報だったというのもあり、滑れるうちに全ての
コースをと先を急ぎました。
やっと着いた石打丸山はやはり昔の記憶通り一枚の大きな
バーンがただまっすぐ下に同じ方向に向かう簡単な構造の
斜面でその斜面の中に民宿やら食堂やらがある昔のスキー場
です。
これだけ多くの店がいまだにあるというのもすごいことだと
思います。
スキー人口が減っているとはいえ上越は首都圏とのアクセス
のよさとその距離によりまだ存続可能なのです。
標高は低く、雪質はいいとは言えず、ガーラなどがゴールデンウィーク
までやるのにこちらは三月くらいでおわりです。
なんともレトロ感にあふれたゲレンデとモーグルコースと
ゲレンデマップにあってもコブのないコースとかコースを
みわしても繰り返し滑りたいようなコースはなく斜面にも
魅力がないのです。
それに一方向に流れる一枚バーンのゲレンデのくせにリフトの
アクセスはよいとは言えず、繰り返し滑るのにも入口が改札口
みたいになっていて一旦停止させられてまた漕いですすむという
アクセスの悪いリフトばかりです。
斜度変化と地形変化も少なくどこをどう滑ろうかという興味も
沸きづらいゲレンデで一通り巡るうちになんとなくもういいかと
諦めにも似た感じを抱いてしまうのでした。
結局三山巡りをしてもその楽しさというよりリフトに乗る義務
感ばかりでコースを楽しんだり、魅力を探るなんてところまで
行かないのです。
そんな諦め似た厭世感の漂う中見つけたのが、今ではもうみる
ことがない横掘れのコブラインです。
これは急斜面の不整地にできるいまだにこれだけはライン通りに
降りることのできない難攻不落のテーマなのです。
このラインができるのは他では草津と志賀高原くらいで私の
希望はこのラインを昔のモーグラーのように縦に板を横にしないで
空気椅子に座ってちょこちょことストックを動かす滑り方で
降りてみたいと常に思っているのです。
モーグルの世界でもターンはカービングなどといいだし今では
この滑り方をゲレンデで見ることはなくなり、できるコブの形も
昔と今では違います。
かつて通った八海山のコブスクールで縦の滑りというのも
やりかぐらで一時できるようになったと思った時期もありましたが
シーズン最初の凍ったコブに出会うともうあの滑りは幻であった
かのように昔のズルズルドンという滑りをしているのでした。
神立のようにモーグルコースに基礎コブから細かいこぶまで
あり、どのようなコブにも対応しているというようなスクールも
あるようですが、結局あの昔の滑りはもはや誰も知らず、教える
人もいないのかと思われました。
しかし、この横掘れのコブを見るとなんとも沸々と挑戦する
気持ちが沸き上がるのでした。
神立のコブを滑った時に基礎コブなら終日ライン通りに降りられ
別に満足感もなく達成感もなく滑れるということと、細かいと
昼過ぎの深くなった時に急にラインから飛び出してしまうことがあり、
結局制動と板を横にしてしまう時間が長くなり、そこから立ち上がる
筋力がスタミナを奪い切り替えのタイミングを逸しているというのが
今までのコブに対する感慨と対応で滑りを変えないとどんなコブでも
滑りきることができないという悩みに突き当たるのでした。
ただ、神立のようにリズムの長いものなら滑れるということなら
別に細かいこぶには入らないということでよいのではないかという
逃げの考えも出てくるのでした。
それでもゲレンデで見かける光景としてはこぶを攻めてるという
感じの人でなくても普通にゆっくりたどってくるような感じの人
でもラインを完走するのを見るとやはり自分の滑りは間違って
いるのかという疑問もわくのです。
というわけで、この横掘れコブを攻めてみるとやはりサイズ的に
無理な感じに思え板をこんなに横にしたら次のターンに間に合わないと
思えます。
それでも降りられないことはないなあとその脇のラインなどは
降りられるのです。
そんなことを思いつつリフトからコブを観察しているとなんと
往年のモーグラーの様に板をまっすぐにしてその横掘れを
滑った人がいました。
意図してやったのかたまたまだったのか三コブくらいで
合わせられずに飛び出して止まっていたのでよく解りませんが
なんかコブをもう少し滑って見るかと思わせるものでした。
ただ、ここではあまりリフトの配置が良くなく繰り返しあの
コースを滑るリフトもなく、時間的に雨の時間が迫りつつあり
いつかコブだけこのコースを滑りに来るかと心に留め
ガーラに戻ります。
三つのスキー場を巡ってきて思ったのは、このガーラが
一番リフト係が対応よく気持ちの良い接客をすると感心しました。
マニュアル通りにありがとうございますとかお辞儀をする
所はよくありますが、私のように繰り返し同じリフトに
毎回同じ言葉を繰り返してお辞儀されると逆に馬鹿にされて
いるのかのように思えますが、ガーラの人は毎回明るく
ああだこうだと話しかけそれが決まりきったことでなく
楽しそうに接客している結果に出る言葉の様で楽しいゲレンデを
自ら演出しているという自負を感じます。
決して押し付けでない対応にこの界隈一の雰囲気をだして
いると思いました。
特に感じたのは、コーチで最後のリフトだなと乗った時でした。
折から降り出した雪は風と真っ黒の雲とともにやってきて
見る見る辺りを暗くしてリフトに乗っているとウエアに降り
積もるように猛烈な降りでした。
そんな中でのコーチの営業の終了のアナウンスの中乗った時
これが最後ですねと言われたのが妙に新鮮で最後まで乗って
くれてありがとうということだったのかと肯定的に受け取れる
声かけでとても気持ちよく最期を迎えられたのです。
下山のためロープウエイ乗り場に着くとゲレンデには人が
いなかったのに降りる人は長蛇の列でこれは簡単には降りられない
と思っていたら一人の私は一人乗り場からあっさりと列を回避して
待ちなく降りられたのです。
降りたら下は猛烈な雨でした。
上越だと二月に雨が降ることはあっても一月のトップシーズンに
こんな雨が降るとは意外でした。
まあ天気予報通りだとホテルにより温泉に浸かり帰るのでした。
この後、郷愁の三山巡りの後私にとんでもないことが起こるのでした。