この日の予約は10日前には入れていたのですが、23日の噴火を知り直ぐにキャンセルしました。というのは噴火したのが私がよく滑る本白根のところだったことと噴石によりロープウェイの搬器がボロボロになったり本白根のレストランの屋根にも穴が開くなどこれは当分ロープウェイは営業を中止するだろうとの思いからです。そして予約は直ぐに気になっていた福島の星野リゾートに入れました。続々と入る白根山噴火の模様から最初被害が雪崩に巻き込まれたというものから噴石の直撃を受けたというものに変わり、純粋に噴火による死者ということでいつも滑っていたあの山が噴火するというまさかの出来事がもしかしたら自分の上に直接起きていたかもしれないというより身近なものに感じられてとても他人事に思えない事故になりました。そして、いろいろな学者の説やネットでの情報などで今回のパターンはあるものと同じであるという気になるものを見かけました。それは宝永年間に起きた富士山の噴火です。御嶽山が噴火し、白根山が噴火、会津磐梯山が噴火し、富士山が噴火したという歴史を今回も踏襲するのではというのです。つまり福島の星野リゾートが次の危険ゾーンなのかとこの予約も取り消すことにしました。その後、噴火の次の日にスキー場は天狗ゲレンデのみの営業を再開しました。27日からは青葉山の営業を再開し、町長のコメントとして現在のロープウェイと本白根ゲレンデの廃止を決めたといいます。つまり私が草津に通う根源的なものが失われたのです。そうなるとそれを確かめに行くかのようにぜひ一度その根源の元であるもう一つの物を味わいたくなったのです。それは草津の中でも最も愛する源泉の綿の湯です。この源泉を引く宿は少なく、中でも桜井の露天風呂が最高であるという思いをしていましたが、昨シーズンからこの宿は泊まっていなくて他の綿の湯に入るたびにやはり桜井の綿の湯じゃないとだめなんじゃないかという思いをしていました。というのも宿によりお風呂の形状とか雰囲気とか大きさとかそれにより受けるイメージが変わり、ああ綿の湯に入ったというあの感動がないように比べてしまうのです。確かに草津の温泉なら他の温泉地より温泉に入っているという満足感はあるもののどこかでもしこれがあの綿の湯ならさらに最高であるという気持ちがいつもあるのでした。というわけで、一度取り消した桜井に再度また予約し、ずっと入りたかった綿の湯への思いを果たし、本当に噴火したのかを確かめに行くということにしました。
さて、この予約をした時点で実はすでにこの結果は予測していました。つまり、失望です。大概こういう過去の良い思い出を反芻する行動というのは裏目に出るのです。期待が高い分、その思い出は段々強いものになり現実を追い越してしまいまた追想のためになどというと元の思い出までも壊してしまいかねないというのは何度も体験しています。桜井から足が遠のいたのは団体旅行用の宿のため団体客と泊まることになり静かなリゾート気分には浸りづらいことと料理などのサービスが低下して逆に値段が高くなるという現象がつづき、割高感があったりしてここしばらく足が遠のいていたのです。今年は平日なら1万円とリーズナブルなプランもありそれではと予約したら噴火が起きたのでした。
そんなもろもろの思いが交錯するなか到着した草津は風もなく良い天気で南岸低気圧の接近で積雪の予報が出ているとは思えない晴天です。通常ならこの時期一番のコンデションでさらさらでふかふかの新雪が楽しめるのが本白根の壁です。そこでの無重力感と宿での綿の湯での真綿で包まれるような無重力感と両方楽しんでこその草津の醍醐味だったわけです。それがもはや失われ、たぶん噴火の記憶が遠のくころまでは滑れることはなく、ゲレンデ廃止のコメントからもしかしたらもう私がスキーをしている間に再開はないのかもしれません。それでも草津に通うかの選択の分かれ目となる今回の確認の旅です。実は旅行前ふたつの出来事があり、スキーについて考える出来事となりました。ひとつはこの間みつけたskiTVで内容はゲレンデ紹介と丸山貴雄の滑りのインプレッションとデモとシュチエーションの滑りです。短いのに実に盛りだくさんでためになりました。それに刺激になったのです。しばらくゲレンデであの滑りをしてみようなどという人を見かけなくなり滑りの模索もすでに何を目指したらよいのかと曖昧模糊としたところにあり、気になるのは前回滑落した天狗の壁の攻略でリベンジを果たすということくらいで逃げていたコブにも挑もうかという気持ちでみたskiTVの丸山貴雄の滑りはとてもうれしくなりました。そして、噴火の地に行くなら長年気になっていたヘルメットの購入を果たしておこうと思いました。そこでアルペンに行ったののですが、なんとシーズン真っただ中なのにスキー用品はなく、もはや日本人の需要にスキーというスポーツがなくなったかのようなとても寂しい気分にさせられたのです。そんなものを晴らすかのようなまぶしい晴天のゲレンデで下の様子は今までの草津と全く変化ありません。人の数はいつもの平日の人出で多くもなく少なくもない感じです。スクールと生徒も普通にいていつもならいる自衛隊の迷彩服の団体だけは見られませんでした。リフト料金は4200円から3000円となりクーポン券やセット券の利用はなくなりました。前売り券は払い戻しとなるようです。今期のスキー場のポスターのコピーがそりゃ雪質がいいわけだなのですが、それを実感できる地が本白根のわけでそれが廃止になった今、草津でのスキーに何を求めろというのか。そんな思いの中、前回の滑落現場に最初に立つとほぼ圧雪されてまた新雪パックがされてまだ誰も踏んでない状態の堅い斜面でした。前回のカリカリの斜面からまた難易度は落ちて、もう昼も近いのにシュプールは二三本しかついてません。そもそもこの堅い斜面にシュプールを残せるほどの技術を持った人が滑っていないというだけでそういう人たちが来るゲレンデではなくなっているということでしょう。以前なら平日のガラ空きの時でも高度の滑りをする人が何人かはいてコブラインを作ったり深く鋭いエッジ痕を残していたものでした。いつもできる天狗の壁の左側のコブラインもできていません。そんな観察をしながら滑り前回なぜ滑落したかも原因がわかりました。それは斜面をあまりにコブを意識して見続けていた視点です。斜面だけ見ていると速度感とか傾きとか真っ白で時にどちらが上か下かすらわからない感覚になるのです。時には静止しても斜面の上に流れていく風と雪で自分が滑っているような錯覚も起きて立っていられなくなったりもします。そんな斜面に対して対処として斜滑降に逃げずに積極的に板をたわませてその反動でコブの吸収とへそからゼロにする合わせなど斜面に対して加えるマイナス要素で瞬時にゼロにした瞬間を使うことです。普段おろそかになっているうち足の動きや深雪の時に使う細かいターンと前後の板の使い方など注意すべき点が顕になりました。そんな確認ができてさて、次の青葉山の様子を見に行くことにし、行ってみると警察車両や消防などが監視している緊迫の状況があり、噴火から8日目で献花台もそのままでした。青葉レストランには気象庁の詰め所のようなところも作られていて、まさに事件の現場の感じでした。青葉のリフトは3時50分終了であっという間に終わり、そのまま下山し宿に向かいました。宿には大型バスが8台ほどいてかなりにぎやかで風評被害を伝えるニュースのイメージより前来た時より混んでいる感じすら受けました。昼を食べたロッジでは中国人のグループが大声で食事していて久しぶりに他人の迷惑という気分と宿でもこんな喧騒の中また過ごすのかという予感めいたものを感じていましたが、お年寄りの団体というのはそれともまた違ったきぶんをあじ合わせてくれます。団体と食事場所が別れていて多少はストレスを感じずに過ごせました。肝心の綿の湯は予想した通りいつもより硫化水素臭が強く、色が青さが強くて白いいつものイメージではなかったのです。それでもやっと綿の湯に入ったという満足感はあり、あの独特の浮遊感と真綿の様な感触が得られなかったのがなんとも残念でこれも噴火の影響かと思いました。