先日、細見美術館で開催されている展覧会、「 世界を変える美しい本- インド・タラブックスの挑戦」へ行ってきた。
これが予想以上に素晴らしくって衝撃を受けた。
南インドにある小さな出版社「タラブックス」で出版されたハンドメイドの絵本の原画の数々を堪能。
インドの民俗画家によって絵が描かれた絵は、手すきの紙に手作業でのシルクスクリーン印刷、
そして職人が糸でかがって製本するという、全てハンドメイドによる本が製造されているのだそう。
今時、そんなに手の込んだ本が作られているなんて・・
展覧会は原画だけでなく、その製造行程のビデオも見ることができ、その手のかかりようがよく分かった。
タラブックスを代表する「夜の木」という絵本の原画。
インドでは様々な地域に民俗画家がいて、この本は三人のゴンド画家によって描かれたものだという。
原画はモノクロで、タラブックスの印刷工房で配色が決められ印刷される。
今まで世界八か国語で翻訳出版されているのだとか。
こちらも同じくゴンド画家による原画。
ロンドンのインド料理店に壁画を描くために渡英した画家による旅行記だそう。
それにしても絵がシュールでなんかぶっ飛んでる・・
これはロンドンの2階建てバスを表してるんだろうか~
なぜ犬と合体?!
中でも私的に最も衝撃を受けたのは、この「さるのしゃしんや」という絵本。
インド東部の西ベンガル州に暮らす、絵巻物師による作品で、
伝統的な色使いや描法が用いられてるそう。
色鮮やかで力強さがみなぎる。
旅行者からカメラを奪って、動物の写真を撮るようになったサルの楽しい物語で、
これらの絵はそれぞれ、サルの撮った写真を表してるようだけど、、
その発想も画風も何か突き抜けてる・・
モデルになった動物たちのカメラ目線が怖すぎ・・
目が完全にイっているぞ。
そうかと思えば、こんなに繊細な描き込まれた絵もある。
「水の生きもの」という絵本はインド東部ビヒール州の伝統芸術、ミティラー画で描かれたもの。
こちらはミュージアムショップで実際の本を手にすることもできたけど、なんとも言えず優美で美しい線と色彩の絵本だった。
絵本は定型の形にはこだわらず、こんなジャバラ折りになってるものもあってユニーク。
こちらは南インドで起きた津波を題材にした絵本で、絵巻物師によるこの絵本は、
開くと絵巻物のようになっていて、こちらもまたジャバラに折られている。
その絵も大迫力!
カラフルな絵本も目を惹くが、こんな渋めの絵本もあって、
原画は南インドの伝統的な布地カラムカリに描かれている。
絵本はその布地の質感や色合いが再現できるように配慮されてつくられたという。
作品はいくつかの展示室に分かれていて、全てが撮影OK。
インド東部のオリッサ州に伝わるバッタチトラ画でつくられた絵本。
美しい多色のシルクスクリーンで手間暇かけて刷られたもの。
こちらは宗教儀式に使われるマタニパチェディという伝統的な布に木版で刷られた本。
素材は紙だけでなく、布もありだという自由さ。
この絵本を作った画家のビデオも流れていて、インドの一地方都市の画家が、自分の絵が絵本になることによって
世界へ届けることができる喜びを誇らしげに目を輝かせ、語っていたのが印象的だった。
ミュージアムショップでは、シルクスクリーンで刷られた「夜の木」のポスターがとても美しくて、
思わず欲しくなったが、踏みとどまり、、
しかし、図録と「夜の木」の日本語版の絵本を購入。
シリアルナンバーが付された絵本は本当に世界に一冊しかないというプレミア感。
実際にその全て手作業で作られてという本を手に取ってみて、あたたかみのある厚めの紙の質感や、
インクの独特な匂い、上へ上へと色を重ねて刷られ、インクの厚みまで感じされられるような3D感・・
まさに「世界を変える美しい本」だなあと実感したのだった。