江戸時代前期の囲碁棋士であり天文歴学者である主人公 “渋川春海” が改暦を成し遂げるに至る苦労や、
様々な人物相関、時代背景、戦略など数理的な内容を題材にしながら面白く描かれた小説です。
天地明察(冲方丁著、角川文庫上下)。 一昨年、映画にもなったのでご存知の方も多いかもしれません。
映画(滝田洋二郎監督、出演岡田准一、宮崎あおい他)
先のブログ記事に、“伊能忠敬”を取り上げたおり、かなり以前に同じ職場にいた懐かしい友人から、
そのコメントとして、この小説が紹介され、伊能図(江戸後期)よりも前に改暦という大事業を成されたことを知りました。
旅行などがあったりして、なかなか読めませんでしたが、このほど、一気に読み終えました。
天元の局 (1670.11.29 安井算哲先番対本因坊道策、244手完 白9目勝ち)
(天元を北極星に見立てた)(ウイキペディアより)
将軍の前で囲碁打ちをする棋士が数学が得意で大変興味を抱き、和算を成した “関孝和” などとも問題を
やり合う場面などもありますが、この囲碁棋士 “安井纂哲(渋川春海)” が、数術を活かして天体測量
(北極星や他の惑星の観測、日食、月食の観測) を通じて、この時代に使用されていた暦 “宣明暦”
(唐から伝わり800年経過)がずれることを発見し、一旦は、中国で明察である “授時歴” を押すが、
月食をわずかに誤り敗北してしまい、この原因が、中国と日本での経度のわずかのずれによることを突き止め、
再度、新しい日本人の手による貞享暦(ここでは、大和歴)を作成し、改暦の成功に至る様々な要因の分析と
回避戦略など政治的側面を踏まえた、壮大な視点から面白く展開されていました。
伊能忠敬が50歳を過ぎてから弟子入りする高橋至時江戸天文方の初代天文方に任ぜられたのでした。
日本における暦は、渋川春海による“貞享暦”(1685年)から宝歴歴、寛政歴を経て天保歴(1844~1870年)
となり、1873年(明治6年)現在のグレゴリオ暦となるのです。
文中に、数学問題、囲碁の話、特に天元一着や、伊能図作成で測量に使用された、大象限儀や子午線儀、
一尺鎖など、が既に使用されていたことなども面白く拝見しました。
映画も見損ねていますので、久しぶりにツタヤにいってみようかな。