蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

わが心のジェニファー  (bon)

2016-06-23 | 日々雑感、散策、旅行

 先ごろ友人のS君から手渡された小説「わが心のジェニファー」(浅田次郎、2015、小学館)です。 「舟を編む」(三浦しをん、2015、光文社文庫)に続いて第2弾です。
  S君は、蓼科浪漫倶楽部メンバーの一人でもあり、一緒しますが、思いがけずこのように小説を紹介してくれる
のです。 恐らく彼は、読書が好きで、多読された中から印象に残ったものを紹介してくれているのでしょう。

 読書レポートではありませんが、読書後の感想みたいなのをかいつまんで記してみました。

 浅田次郎は、「鉄道員」(ぽっぽや)で、'97に直木賞に輝いていますが、私は映画で観ました。 あの、
高倉健でしたね~。

 で、前置きが長くなりましたが、「わが心のジェニファー」については、一言で言えば、“日本の文化や習慣など、
何気なくやり過ごしている事柄をアメリカ人旅行者をして面白く言わしめている”のですね。

           (ネット画像より)


 ニューヨークに住む30歳代のビジネスマン“ラリー”は、美しい日本通の女性“ジェニファー”と恋仲にあるが、
結婚に際して価値観を共有するために、結婚前に是非、日本を見て来てほしい~との願いを受けて、敢えて
携帯電話やPCを持たずに 単身日本を旅行するとの構成で、新宿→京都→大阪→別府→東京→釧路を旅する。 
ストーリーとしては、早くに両親は離婚し、彼は厳格な祖父母に育てられ、父母の顔も知らない彼が、JFKから
鶴丸のJALに乗り、最後に釧路の丹頂ヅルのダンス“クレインダンス”を観に行き、そこで初めて父親と出会う・・
そんな、やや強引な流れに設定されていて それ自体あまり共感しませんでしたが、道中の日本文化、習慣に
戸惑う姿が妙に誇張されたりもするけれども、“あぁ、なるほど そうなんだ!”と思い当たることが随所に
描かれていて、皮肉っぽかったり、素晴らしかったりして面白かったです。

 日本に旅立つ前に、マンハッタンで彼女と“そば屋”で食事をするところから、すでに日本の習慣の違いが
矢継ぎ早に出て来て、これがスタートになっている。つまり、“おしぼり”、“お通し”、“シオカラ”から
始まって、“陶器のボトル”、“熱い酒”、“冗談みたいな小さな盃”、“そばを音を立てて食べる”など、
いちいち細かな描写から、日航機内の雰囲気や成田到着10分遅れで、お詫びをいう・・不思議さ、わずか
10分遅れなのに・・。ラリーは、「こうした国に生まれ育った彼らは無思慮で無防備な日常を 社会から保障
されているのだ」。シャワートイレの複雑巧妙な作りにも関心しきり。あれこれさわっているうちに、水が飛び
出してトイレの外に水が流れて、掃除のおばさんの世話になるが、チップは受け取らない。 新宿行きリムジン
バスは途中高速道の渋滞で、運転手は気を効かせて一般道を選択してわずか15分遅れ、運転手は最善を尽くした
にもかかわらずここでも詫びる。

 新宿では、ビジネスホテルに宿泊して、その小さなバス、ベッドなどに戸惑うが、案外便利だと気付く。
地下鉄路線図はなんと セントパトリック教会のステンドグラスのごとく鮮やかで複雑だ。新幹線にも目を丸くする。
時速170マイルで走る新幹線がおよそ3分間隔で出入りする。ホームに入ってくると、ピンク色の清掃員が
さっと中を清掃するその早業。 かと思うと、京都の静かな秋の景色、そして600ドルもする高級旅館での一部始終。
京極あたりの雑踏でのヨチヨチ歩きは 聖者の行進などといっている。コンビニの品ぞろえの豊富さは、コンビニ
エンスショップではなくジャパニーズ・インテリジェンスだなどと思う。清水寺、三十三間堂他を訪ねる。

 大阪では、ジャンクフード(お好み焼き)、クイダオーレ だの楽しいものばかり。この街は、デモクラシーと
リベラリズムが理想的に完成している・・などと感心したり、ミナミの裏通りでは、“オーイエ― クシアーゲ” 
食べ放題のキャベツが置かれていたが、気付かずにいると、気の良い店主が“プリーズどうぞ、キャベツはフリー
イートですねん。わかりまっか。サービスやさかいカモン、カモン、ドウ・テイク・イット・ワンや”。

「大阪は、フレンドリーなダウンタウンではない。幸福を追求し続ける人類がついに到達した夢の都だ」と感じる。

 別府では温泉におどろく。「オンセン」、日本旅館、露天風呂、「ジゴク」・・極め付きは、別府温泉保養ランドで
小高い丘の上にある「コンヤ・ジゴク」。ここで、泥湯や滝湯など珍しい風習に引き込まれる。

 東京に戻り、台風の中の銀座をわざわざ散歩するが、危なくなって、地下街にもぐる。迷った時は地下街へが
合言葉。 大都市は、地上と地下の二重構造になっている。翌日は、銀ブラを楽しみ、築地近くで食べた寿司の
ウニや魚の味に引かれて ついに北海道に行くことになる。出発前から、彼女から丹頂ツルを見るようにと
いわれていたこともあって、釧路へと向かう。

 釧路でも、ロバタに入り、ひと驚きするがすぐに気に入って、サムエの主人、そのおかみさん、横でビールを
飲みながら編み物をしている老婆など・・ミステリアスの中にも暖かい雰囲気が立ち込めて、ついに翌日、
釧路湿原のクレインダンスを見に行くことになる。

 横にいた老婆が、ボランティアの案内人だったが、果たして、丹頂鶴のダンス、「クレインダンス」をみるが、
その時、ログハウスから出て来た初老の 鶴を護る人、その人がラリーのまだ見ぬ父親だった。 このような
劇的な出会いで物語は終わりますが、やや唐突な感じは否めず、やはり道中の文化・習慣の違いをフィーチャー
されていたのだと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

コメント
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