昨日(5/30)は、久しぶりに映画館に行きました。
映画は時々観ますが、ほとんどがテレビの再放送ですから、映画館で映画を見るのは
久し振りなんです。
『モリのいる場所』は、5月19日に全国一斉に封切られた映画で、熊谷守一の晩年の
暮らしを通じて、その人を描いたちょっとユニークな作品でした。
池袋に近い豊島区千早の自宅と そう広くもないが鬱蒼とした庭がその舞台で、30年も
この庭から外に出たことがないモリは、ひたすら自然観察にふけり、不自由な脚で杖を
突きながら小動物や石ころ、自分で掘ったという池のメダカなどを 日がな眺める姿と、
妻と囲碁なども打つありふれた日常を描きながら、財力や名声に興味がない生き方をする
モリ(熊谷守一)の人柄、厭世的なかかわり方、観察力の鋭さが浮き彫りにされていました。
(ネット画像より)
主役に山崎努、その女房役に樹木希林という まさにピッタリの個性派俳優の演技と
茶の間、鬱蒼とした庭を中心とした動きの少ない静かな画面に モリの意識の深みが描か
れていたようです。 必ずしも頑固者ではないが、本人は好まない「画壇の仙人」の異名
をとるモリの一風変わった、どちらかといえば不器用な、しかし、生に対する強いあこが
れと、身近な小動物に対する驚異的な観察力を通じて本質を極めようとする ひたむきな
性格を実に巧みに表現されていました。
自伝のエピソードで知られる、いくつかの言葉も画面の中に取り入れられていました。
昭和天皇がご覧になって、『この絵は、いくつくらいの子供が描いた絵ですか?』や
子どもが台風を抽象的な絵にかいたものを、親がモリに見せて評価を得る場面では、
『下手です。下手も絵のうちです。』 また、文化勲章の内示に際しては、『そんなもの
を受けると、人が大勢来るからいらない。』
熊谷守一については、当ブログ「熊谷守一」(2018.3.8)に記事アップしていますよう
に、熊谷守一美術館「特別企画展」(豊島区千早)および東京国立近代美術館「熊谷守一
生きるよろこび展」(千代田区北の丸公園)を訪問した時の作風の印象など、十分満足
した様子を報告しています。
この時、映画化のことは承知していましたが、とんと失念してしまい、先日友人から、
映画が始まっていることを告げられて、昨日の実現となりました。
池袋のシネ・リーブルに朝1番上演(9:00)に出かけましたら、少し早かったようで、
まだシャッターが下りていて、その前に10人ほどの列ができていました。
ガラガラですが、チケットは全席指定で、パソコンの画面を見ながら好きな座席を
指定するようになっていました。 館内にはまだお客は入っていませんでしたが、終了後
明るくなると5~60名くらい入っていたようでした。
久し振りに、最近の俗な世間から逃避したようで、さわやかな、しかし自然を直視する
真剣身にあふれた純な心に満たされた思いで帰りの電車に座りました。
朝1番のシネ・リーブル